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「ミオ。お前作戦と違う行動をする時は教えてくれ」
「ん?わかった」
「ほんとか?」
「ん。ほんと」
なんか凄く疑わしい…
「でも、あの方が早く済みそうじゃない?」
確かにミオの言う通り、魔物達は弱肉強食の世界にいるから力を示すのが一番てっとり早い。
「でもな、俺達は山を制圧に来たわけじゃないんだぞ?」
「ん?わかってるよ?」
はぁ…まぁ、チビ(フェンリル)を連れて親を探しながら暴れてたら、向こう(親)から来るかもしれない…か?
「取りあえず次行こう!」とミオはやたら元気だし。
次に向かった先にいたのはキラーベアのようだが色が違う所を見ると亜種か?
ギルドで見た図鑑では普通のキラーベアは深緑だったはず。だが下にいる奴は琥珀色。
鋭い短剣のような爪を持ち、その切れ味は両手で抱えきれない程の木の幹を一閃で切り倒す。
体長は立ち上がれば3メートル程。ずんぐりした巨体に似合わずかなり俊敏な動きをする。
魔術は使えない。
普通は…
だが下にいる奴は土の魔術を使えるようだ。
何故俺がそんなに詳しいのかと言うと、現在進行形で攻撃を受けてるからなんだが……
ミオの結界に弾き返されていく石の礫。
一つ一つの大きさはたいした事はないのだが、いかんせん数が多い。
「魔力切れを待ってもいいけど…時間掛かりそうだな。」
「ん。撤退?」
「いや。ロックオンされてるから付いて来そうだし、関係ない所にも被害出そうだしなぁ。」
「でも、話しも通じないんでしょ?」
そうなんだよな。声かけたらいきなり攻撃開始され「ウガウガ」言ってるが(本当は猛獣?らしく普通の人間ならそれだけで腰が引ける唸り声なのだがレイとミオには「ウガウガ」と多少文句を言ってる位にしか聞こえない…)俺には何を言ってるのかさっぱりわからん。
と、チビ(フェンリル)が
『降りてこい!って言ってる』
「ん?お前解るのか?」
『うん。』
「じゃぁ、お前話し掛けてみろ。親を探してるって」
『…やってみる…。』
そこからフェンリルが子供の少し高い声音で『グルグル』『ガウガウ』言ったかと思えば、キラーベアが『ガオガオ』『ウガウガ』吼えたりと会話に成ってるのか成ってないのかわからないやり取りがあり(その間もキラーベアからの攻撃は継続してた)チビが少し落ち込んだ声でレイに言うには
『お父さんとお母さんの事はは知らないって。取りあえず下りてこいって』
耳を伏せ、尾も力なく垂れるフェンリルを、ミオが優しく撫でてやる。
知らないなら用はない。
レイはどう離脱するか考え、一発殴って気絶させる(…)事にした。
「ミオ?風でちょっと浮いてて。後結界も継続な」
「レイは?」
「一発殴ってくる。」
それで全て察したミオは「気を付けてね」とだけ言って風を纏った。
浮いているだけならミオも出来る。
移動する事も可能だが、風の魔術を使って移動するのは制御が難しく、余程の緊急事態でなければやらないし、やりたくない。何度か練習もしたのだが、不安定で船酔いみたいになるのだ…
ミオが風を纏って腕から離れたのを確認し、レイはキラーベアへと向かう。
相変わらず石の礫は飛んできているが、数が多いだけで避けられない速さではないため、ある程度はヒョイヒョイ避け、たまに弾き返し、あっと言うまにキラーベアに肉迫する。
キラーベアも目では追えないが近付く脅威を感じたのか、鋭い爪を持った腕を振り回す。
そんなキラーベアをものともせず、懐に入り込んだレイはキラーベアが振り回している右腕を掴むと、背負い投げの要領で投げる。
投げられ、腕を堅められているキラーベアは、自分に何が起こったのかわからないうちに、腹に一撃をもらい意識が途切れた。
意識が途切れる前に見たのは、自分を見下ろす人間の姿だった……
「ここも不発だったね」
「ああ。でもフェンリルの事だし生活圏はもっと上だろうからな。そうがっかりする事もないさ。」
「そうだね、探しだした所だし。元々何日も掛かる予定だもんね。」
そう。この山脈は上に行けば行くほど魔物のランクが上がる。
レイ達がいる辺りはまだBランク位の魔物達の生活圏だ。
フェンリルはSランクなので普通に考えても頂上に近い所にいるのだろうが、チビ(フェンリル)が人間に捕まった事を考えて、一応下の方から探しているだけだ。
キラーベアも普通はCランク。亜種なのでBになるのかもしれない。
ちなみにピンクカバだが正式には「アテラノ」というBランクの魔物で、魔術も生半可な物は通さず、オーガより堅い皮は防具の素材として高値で取り引きされる。
「さて、次行くか」
「そうだね。少し上に行ってもいいんじゃない?」
「そうするか…」
山の少し上の方へ目を向ける。山脈と言うだけあり、広大な山林。
ヘギークリア国内で出会ったのでリオーネ経由だと思ったが、違う可能性もある。
何せ、チビ(フェンリル)は捕まってすぐ檻に入れられ外が分からないようにされていたらしい。
まあ急ぐこともない。
長引くようなら食糧は調達しに行かなければならないだろうが、肉は山でも手に入る。
次の目標を見定め、フェンリルを抱いているミオを抱いて飛び上がる。
次に向かった所でレイ達が出会ったのは「グレイミルト」と呼ばれる魔物だった。
見た目は、アレだ…そう。しいて言うなら亀。
何故、山に亀?と思わなくもないが、辺りは沼地っぽい。
マングローブのような背丈の低い木が生えていて、この辺りは一体どういう気候なのか疑問も浮かんだが、異世界だし考えてもしょうがないと流すことにする。
そして、下に見える魔物に意識を戻す。
亀と違うのは、甲羅にあたる部分は泥で出来ているようで、硬くは見えない。
手足も亀にしては長いが、首は亀よりも短いようだ。
そして、一番の違いは尻尾である。
大蛇のような尻尾がうねうね動いている。
蛇が苦手なミオの体に自然と力が入るのを感じて、抱いている腕に少し力を入れてやると
「だ、大丈夫。…多分…」
頼りない返事を聞いたレイは小さくため息を尽き
「こんな事で無理してもしょうがないだろ?向こうで降ろしてやるから待ってろ」
この辺りの気配ならミオの結界で問題ないだろう。
「えっ?!やだよ?!離れてる時に出てきたら(蛇が)どうするの!!!」
ちょっと必死そうなミオに怪訝な顔になるレイ。
虫はたしかに苦手だったが、蛇はそこまで苦手じゃなかったはず。
っていうか、爬虫類系は平気だったはずだが…
「ミオ?」
ビクッと肩を震わせ、俺から目を逸らすミオに、もう一度
「ミオ?」
そう呼び掛けると、恐る恐るといった体で俺を見るミオ。
しばらく見つめ合っていたが、渋々ミオが口を開いた……
「どこから捕ってきたのかわかんないけど、一度部屋の中にね…」
「蛇を入れたのか?」
「うん。……タンスの引き出しに入ってて……着替えを出そうと思って引き出しを開けたら…」
「蛇がいたと?」
ミオはその時のことを思い出したのか、一度ブルッと体を震わせ続けた…
「一匹ならね、まだ大丈夫だったんだけど…10匹くらいいて…それがこう、おとぎ話の悪いお婆さんの葛籠から出てくるみたいに、こうぶわ〜っと…」
言いながら涙目になるミオをぎゅっと抱き締める。
何故その時に言わなかったのか?とか、あいつらやっぱり一度ぶちのめしておけばよかったとか、色々考えが廻るけど、気が付かなかった自分に腹がたつ。
何か様子がおかしかったはずなのに…
「悪かった。」
「なんでレイが謝るの?」
「気付いてやれなくて」
「なんで?!レイが悪い訳じゃないよ!私が言わなかったんだし!」
「それでも…だ。お前をちゃんと見てれば何かあったとわかったはずだ。」
「違うよ!私も隠したし、それにレイは一緒に居てくれたよ。地区の決勝の前で大変だったのに…」
そう言われてレイは思い出した……あの時か…
2日後に地区の決勝を控えたある日。練習で遅くなったレイをミオは待っていた。
二人共に携帯電話など持っていなかったので、大体は次の約束をして会っていたが、急に会いたい時や話がある時はどちらかが、どちらかの学校まで行き待つしかなかった。
もう日も落ちて暗い中で立っているミオを見てレイは驚いたが、キャプテンとして初めての大会で、地区とはいえ決勝前で幾ばくか緊張していたレイは会えて嬉しかった。
「どうした?」と聞けば、「ちょっと顔見に来ただけ。」といつものように笑うミオに練習の疲れやプレッシャーなど吹き飛び、時間の許す限り一緒にいた。
……もう一度、ぎゅっと抱き締め「ごめん」と言うと、首をユルユルと横にふり「私こそ黙っててごめん」と言う。
それから二人で目を合わせて笑った。
何時までも、お互い謝り合ってもしょうがない。
ミオは抱いたままで、亀もとい「グレイミルト」に意識を向ける。
あの亀とは話が出来るといいんだけどな…
読んで頂きありがとうございましたm(__)m
ちょっとだけシリアス混じり……
ミオも只の能天気娘じゃないってことで…




