◇閑話、二人の出逢い
ウニゃー!ここで閑話ってどういう事よ?!って感じですが、どうして書いておきたかったので…………
俺と澪の出逢いは… まだ辺りの薄暗い冬の朝、いつものランニングコースで、いつもの時間すれ違う…………
その瞬間に視界を眩い光りに奪われた。
きつく瞑った目を恐る恐る開ける。まだ少しチカチカする目をしばたかせ、俺は馬鹿みたいに口を開けて固まった。
目に入ったのはギリシャ神話に出てくるアフロディーテのような彫像。
大きさは自分の身長の5倍はありそうな巨大な女神と思われる彫像。
突然現れたそれに唖然としていると
「何これ?……どこ?……」
ハッとして横を見ると、いつも朝ランニング中にすれ違う女の子が自分と同じように呆然として立っていた。
目をごしごしこすり、目の前にあるものが信じられないといった風に…
少しくたびれた感のある黒っぽいジャージの上下で、俺よりいくつか年下だと思われる少女は、ここ一月程前から俺がランニングしているコースで見かけるようになった。
真っ黒な髪を後ろで1つに括っているため正確な長さはわからないが、背中には届いていないだろうことはわかる。
少しふっくらした健康的な頬は、驚愕のためか青ざめて見える。
かく言う俺も多分同じように青ざめているのだろう。
「ようこそ勇者様。」
背後からいきなり聞こえたその声に二人同時に振り向く。
そこには膝まで届く長い白髪に藍色の瞳のいかにも「姫」といった豪奢なドレスを着た女がいた。
となりの少女の事はわからないが、自分が今まで背後に人がいるのに気が付かなかった事に驚く。
俺はあまり環境の良い場所で育ったとはいえなかった。
両親は離婚し父親に引き取られたが、父親が直ぐ再婚した継母による虐待にあった。
父親は資産家で順当にいけば将来長男である俺が父親の跡を継ぐことになる。継母には連れ子がおり、俺が跡取りとされているのが気に入らないようだった。
それまで住み込みでいたお手伝いさんを、自分が見るからと辞めさせ通いの人を雇い、夜父親の帰宅が遅いのをいい事に、食事を抜かれたり、折檻を受けたりした。
当時小学生だった俺はされるがままだったが、中学生になったある日、力で負けなくなったある日を境に、無視されるようになった。父親は忙しい人で顔を会わせる事も殆どなく、俺がどんな目に合ってたのか知ってるのかどうかも知らない。
そんな事情もあり、人の気配には敏感になってたはずなのだが、あまりの事に驚き過ぎたためか、それともこいつが気配を殺すのが特別上手いのかは判らないが、気が付かなかったことに内心で舌打ちした。
「勇者って……私達のこと?」
少女が聞くと
「はい。そうでございます。私はこの国アイゼンスリの第二王女でサユミリス・ナユ・アイゼンスリと申します。事情説明など致します故にまずはゆっくりと話が出来るお部屋へご案内させて頂きます。どうぞこちらへ」
案内された部屋で改めて自己紹介をする。
なにせ、俺と少女はランニング中にすれ違うだけで名前も知らない。
「俺は「志藤 零」(しどう れい)だ。」
「私は「岩元 澪」(いわもと みお)です。よろしく。」
そして移動した部屋で聞いたのは、ありきたりなライトノベルのような話しだった。
要するに
「魔王を退治してほしい」
である。
俺は嫌な予感がした
通常「勇者」とは一人である。ということは、どちらかが巻き込まれたということだ。
俺はべつにかまわない。元の世界に未練などないし、他の世界で生きるのもいいかもしれないから。だが…ちらりと横に座る少女を見る。
どう見ても中学生くらいの少女だ。俺のためにこの娘が巻き込まれたとしたら…………
結果から言うと、俺の心配は杞憂だった。
どちらが勇者か調べることになり、勇者というのは魔力量が多いはずなので、魔力量を量ってみると、明らかに少女の方が多かったのである。
通常この世界の一般人が1とすると、そこそこ多い人で50。一流の魔術師で100。宮廷魔術師で150〜200。現在一番魔力の多い魔術師で250で宮廷魔術師の長だそうだ。
そんな中、俺の魔力量は200。少女の魔力量は5000。
………文句なしに少女「澪」が「勇者」であった。
魔術には火、土、風、水の4大属性と、光、闇、時、空の特殊属性がある。火から順に使える人が少ないそうである。
通常魔術師は1つの属性しか使えず、自分に合った属性を訓練する。
しかし、使える属性は魔力量に左右されるため、宮廷魔術師は二種使える。澪の場合多分全属性が使えるだろうとのことだった。
では、必要ない俺は帰れるのか?と聞くと、召喚にかなりの魔力を使ったため、召喚陣に魔力を貯めるのに時間が必要なため直ぐには無理だという。
隣で不安そうにしている少女に
「そういう訳だ。しばらくよろしくな。俺の事は『零』でいい。」
「はい。よろしくお願いします。私も『澪』って呼んで下さい。」
少し肩から力が抜けたようで、柔らかく微笑んだ。
それから4ヶ月程、城での訓練と勉強の日が続き、俺は基本的な剣の扱いと魔術(火にしか適正がなく、火と身体強化中心)。澪はやはり全属性に適正があり、使える人のいない属性の訓練はなかなか大変なようだった。
それから一月程は近場を回り戦いに慣れる。
その一月が一番きつかった。俺にとっても澪にとっても……
平和で人どころか、自分達の食べる物ですら『殺す』という行為に携わることのない生活をしていた俺達にとって、生き物を自分の手で殺すという行為は精神をガリガリ削られる事だった。
結局最後まで『慣れる』事はなかったが、自分が生きるために他者の命を奪う事に折り合いをつけられるようにはなった。
俺は勇者ではなかったが勇者の同郷であり、勇者である澪が頼っていること、この世界の人の中では魔力量もそこそこあり剣の腕も上がっていたことも手伝い、勇者と一緒に魔王討伐に着いていくことになっていた。
城で半年程過ごし、魔王討伐の旅に出発した。
それから魔王討伐までの旅では色々あった。
有りすぎた。
魔王討伐の為の勇者パーティーは澪、俺、その他にヒーラー、タンク、スカウトの5人。
俺達以外の3人は仲間であり監視でもあったが、ヒーラー以外の二人とは背中を預けられる位にはなった。
その旅の途中で俺が竜になる事件があったりするのだけれど……
そんなこんなで一年程かかったが、無事に魔王討伐し、その後半年程して魔方陣の魔力が回復したので、元の時間、元の場所に戻された。
読んで頂きありがとうございましたm(__)m
前の世界のことはこれからも閑話として挟んでいきたいと思います。




