14、プラスワン?
それは、突然だった。ミオどころかレイすら反応出来なかった。
『それ』はこんな所にいるはずのない物だった。
街からほど近い森。ランクの低い冒険者にもさほど危険のない場所…そのはずだった。
まして、ミオやレイになにかが起こるような場所ではなかったはず……
ギルドランクを上げるのと、路銀を少しでも増やすためにゴブリンとワードッグの討伐依頼を受けて、薬草を取りに来ていた森に入っていた。
薬草採取の時は獣道のような所を進んだが、魔物相手なので道なき道を分け入ることになる。
探知で大体どこにいるかわかるので、闇雲に探すはめにならないだけましだけど、他にも冒険者が入っているのであまり無茶も出来ない。
獲物に気づかれないように近づき、ミオの魔術で足止めし、レイが剣で止めを挿す。いつものように………
ゴブリンが3匹×2、5匹×1。ワードッグが4匹。ゴブリンは放っておくとあっという間に数を増やすので見つけ次第殲滅して欲しいらしい。
「今日はこれくらいで帰るか?」
「そうだね。街道に出るまでも大変だし。」
「そういえば、今回でそろそろランク上がるんじゃないかってアルが言ってた。」
「ふ〜ん。じゃぁ皆とお別れかな?」
「淋しいか?」
「ちょっと…ね。レイもでしょ?」
「まぁ世話になったしな。縁があったらまた会うさ。」
「そうだね。」
魔物に警戒はしながらも、普段とあまりかわらない二人。王都ってどんな感じかな?いい宿聞いとかないとなどと話ながら歩いていた時…それは起こった……………
気配に気が付いた時には、既に回避は間に合わないと悟ったレイは、ミオを抱き寄せ体に力を入れた。レイの体はそれだけで鎧を纏ったようになる。そして来るべき衝撃に備えたのだが
「…………」
衝撃がくると思って目を瞑っていたミオが、来ない衝撃を不思議に思い恐る恐る目を開けると…
「……きゃ〜〜!かわいい〜〜〜!えっ?なにこれ?超可愛いんだけど!?」
レイの腕に噛み付いてぶら下がっている犬のようなもの。それも仔犬。
薄い青みがかった銀色毛並み。ただの犬でないことは魔力量からわかる…
しかも、レイとミオから隠蔽してみせたのだから……
※
怖い………ここには僕にとって怖いものは居なかった。上手く人間から逃げられたけど帰り方がわからなくて入った森。
魔物は僕を襲ってくることはないし、気配を隠すのは得意だから、姿を見られなければ人間から逃げるのも簡単だった。
だけど……お母さんが言ってた、近寄ってはいけないもの。あれと同じ気配がする。少しでも動いたら気づかれそうで、動けない。でも気配がどんどん近づいてくる。
怖い………どうしよう………怖い…どうしよう…
気がついたら噛み付いていた。
※
物凄く大きな魔力の固まりがぶつかってきた。
ミオに怪我をさせないように腕の中に囲った。
そうすれば、もし吹き飛ばされたとしてもミオが傷付くことはないだろうと……
ぶつかってきた魔力の正体に俺は固まった。
………なんだこいつ?
犬?いやいや、ワーウルフ?いや、魔力の量がおかしすぎる…この雰囲気……知ってる気がする…なんだ?
そこで俺の思考は中断される…ミオの叫びで…
「ウウゥゥ…」
現在進行形で唸りながら噛み付いている。いや、痛くないけど…
その噛み付いている物体を見て俺の心配をする前に「可愛い」って……
ハート飛んでるのが見えそうな……
気に入らない………
少し殺気が洩れると「ビクッ」として唸るのをやめ耳を伏せ、恐る恐る俺を見た。
「レイ!?虐めちゃだめだよ!!」
「はっ?噛み付いてるのはこいつで噛み付かれてるのは俺なんだけど?!」
「だって子供だよ?!それにレイ痛くないでしょ?」
そういう問題じゃない気がするんだけど、なんて言おうか考えてると、ミオが俺の腕から引き剥がし抱き上げた。
「迷子なの?」
「クーン」耳ぺターン。
「うーん。この森には居なそうだね、君のお父さんかお母さん。何処から来たのかな?」
「クーン」耳ぺターン。
「私達、旅するから一緒に来る?」
「ワフッ!」耳ピーン。尻尾パタパタ。
えっ?!ちょっ?!ミオさん?!
「おまっ、こいつ普通の犬じゃないぞ?!」
「だから?」
「えっ?だからって…」
「クーン」
わざとらしく耳をふせるチビ!
「子供だよ?!お母さんと離ればなれなんだよ?!」
「街に入れない魔物だったらどうすんだ?」
「野宿かなぁ?」
「何食うのかも分からんだろ?」
「ガイストさん達に聞けばわかるかも?」
期待の篭った少し上目遣いで「お願い」とミオに請われれば、俺には「駄目」とは言えなかった。
街には問題なく入れた。
ギルドへ行き依頼達成の手続きをしに行くと、アルの予想通りランクが上がってEランクになった。
宿に戻り犬モドキを部屋に入れていいか?と女将さんに聞くと「食堂には入れないこと。部屋で粗相させないってのが守れるならいいよ」と言われたので、真っ直ぐ部屋に戻った。
「ガイスト達が食堂にいないか見てくるから、誰かいたら部屋に連れてくるよ。ついでにお茶もらってくる」
「わかった〜。あっ!この子にもなにか貰って来てよ!」
「……とりあえず水貰ってきてやるよ」
え〜っと不服そうな声をあげるので「何食わせていいのかわからんだろ」って言うと「そうだったね」と納得してた。
……先が思いやられる。
下に行き食堂を覗いたら2、3組客はいたがアル達はいなかった。
部屋にもって行くのでお茶が欲しいというのと、犬モドキ用になにか器を貸して貰えないか聞くと、端の欠けた皿をもう店で使わないからあげるよとくれた。
ついでにガイスト達のことを聞くとアルだけは部屋にいるらしい。
お茶を3人分にしてもらい、アルに声をかけ一緒に部屋にきてもらった。
「食堂じゃなくて部屋にですか?」
「あー。ちょっと食堂は不味いんだ。」
「いいですよ。今行っていいんですか?」
「うん。ミオも待ってる」
そして部屋に入り、ミオが抱いてる物体を見てアルが固まった。
「……あなた達はほんとに」と………
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