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へへっ。
予想が的中してつい興奮してやり過ぎてしまったぜぇい。
おかげで一回気絶してしまった。
さてこの驚異の発見をご主人様に報告しなくては。
ダンジョンコアがある深奥の部屋に行くと、気配があったので報告する。
(ご主人様、超強くなれるかもしれない本当に凄い発見をしたんですよ。本当に凄くて今の僕ならテストで戦ったイアールンヴィズの狼に単独で勝てるくらいには強くなりましたね)
声掛けの返答と聞かぬまま、興味をそそる様な事を言った。
言ってしまった。
『へぇ?』
メイズ様がいる前で。
いたの⁉︎
しかし気配無かったけど。
とにかくスムーズに土下座に移行。
「あー……、ははっ、ご主人様の話し合い中に割り込むのは良くないぞっ。すぐ出て行きなさい」
(すいません、会談中だったのですね、気配を感じられなかったので分かりませんでした、失礼をはたらいてすいませんでした。すぐにいなくなりますお邪魔しました)
『待ちなさい』
(は、はい。何か御用で御座いましょうか?)
『何かオモシロイ事を言ってたわね?』
「ゴブリンの戯言だよ、メイズちゃん」
僕は黙って頭を下げ続ける。
『確かにゴブリンは大した事でもない事を自身を大きく見せる為に大袈裟に言いそうではありますね。でも私は興味がありますね。凄い事、私にも教えて貰えるかしら』
静かに怒ってる。
内心でガクブルしながら、沈黙を保つ。
ご主人様相手でも本来はよくは無いが、お客様がいるなら主人の許可無く声を出すべきではない。
僕の様子を見て、メイズ様は溜息をついた。
『ゴブリンらしくありませんね』
「否定はしないかなぁ」
『まあいいです。ゴブリンの報告を私も一緒に聞いても?』
「流石にゴメンね。初めて聞く内容を外部の者とは一緒に聞けないかな」
『しょうがないですね』
ふう、不満はまだあるだろうが、とりあえず引いてくれる様だ。
『でも、この子達が許すかしら!』
は? と思うと同時に怒りの鳴き声が部屋に響き渡った。
あ、思い出したちょっと前にご主人様からメイズ様が狼の様子を見にくるって聞いてたんだった。
今日だったかぁ。
これ生き残れたらカレンダー設置しよう、ダンジョン内だと日付けと時間が狂ってこんな事が再び起こってしまう。
まあ、ともかく、嫌な汗が全身から出て止まらない。
「メ、メイズちゃん、なだめてほしいなぁー」
『何言ってるんですか先輩。魔法陣は私が提供とはいえ先輩のダンジョンの魔力で生まれているんですよ、支配権は先輩にあります。落ち着かせるのは先輩にしか出来ませんよ。まあ、先輩より懐かれているのは否定しませんが』
「そこをなんとか」
『そうは言われましても、部外者が他所様のモンスター関係に口を挟むのはどうかと思いますし、私のダンジョンで生まれたわけじゃありませんが連なる者達に嫌われたくはないので、私としてはデメリットしかない事に首を突っ込む気はありません』
逆にメリットがあるなら口添えぐらいはしてくれると。
ご主人様はどう返す。
「分かった、今私が知ってやれる最大限の処置をした魔法陣を提供するよ」
五重重ねの魔法陣を⁉︎
つい言葉を出しそうになる。
『そうですか、ですが先輩の希望通りの結果にならなければ……』
「どんな結果になっても提供はするよ、だけど一回だけにしてもらいたいなー」
『ゴブリンの反応を見るに悪い取引ではないみたいですね。少し待っていて下さい』
メイズ様は狼達をなだめ始めた様だ。
「これが終わったら報告聞くけど、内容によっては本気で怒るからね」
(はい)
『お待たせしました』
思ったより早く帰ってきた。
「どうだった?」
『一つ要求がありました』
「う、うん。それは?」
『同胞の中で一番強い者と一対一で戦えというものでした』
「死んじゃうよ!」
『殺しはしないとは言ってました。ですが、弱過ぎて不慮の事故が起こるかもしれないが、そこまでは面倒見切れないとも』
やる気だ、殺る気だ!
『幾らダンジョンボスでも形式的なボス程度にましてやゴブリンごときには軽んじられては沽券に関わると、ただもし勝てたなら正式にボスと認め服従すると言ってました』
勝った時の恩恵はかなり破格だ。
イアールンヴィズの狼は強いがゴブリンの為には絶対に動こうとはしないのは分かっていた。当然騎乗などしようものなら、絶対殺されていただろう。流石に常時には無理でも緊急時には騎狼として協力して貰える確約が貰えるのは本当に有り難い。
あと気になるのは。
「勝利条件はー」
『本来ならどちらかが降参か死ぬまでという事でしたけど、せめてもの情けで制限時間を設けて耐え切ったらそちらの勝利で良いそうです。ですがこれも条件次第と言ってました』
「それは?」
『我らの上に乗れる者は力が上の者だけ。つまり力で勝利すれば服従はするが、時間切れの場合は騎乗として協力はしないという事でした。まあ、その場合は個での挑戦は受け付けるそうです』
そうは上手くいかないか、まぁしょうがない。
ダンジョンの利益よりまず自分の命だ。
人間の時なら他人の為に絶対に勝ち目が有り得ない挑戦に無理したかもしれないが、種族として利己的なゴブリンになったんだからしょうがないよね。
正直、生き残るのは自信がある、今の狼達のリーダーの能力は把握済みだ。
時間をもらって準備さえすれば、いける!
「分かったー、その条件をのもう」
『取引成立ですね。では勝負の審判は公平になる様に部外者の私が』
ん? あ、いや、まぁおかしくはない。
『では、すぐに始めましょう』
(ま、待って下さい。準備する時間を少し下さい)
『何を言っているの? 相手は生身一つよ、あなたも生身一つであるべきでしょう』
確かに公平ではあるけども!
「メイズちゃん、流石に実力差が有りすぎるから、ちょっとは準備させてあげて」
『今ならこの前の狼に勝てると言ってたのはこのゴブリンでしたけどね。五分だけ待ちます』
うちは常在戦陣じゃないんで。
とりあえず剣に全身を隠せるだけの盾、なんちゃってフルアーマーを着る。
『では先輩お願いします』
「勝負場だね、任せてー」
『それも有りますが、魔法陣のオーダー表を』
「はい? え、今居る狼のリーダーからじゃあ」
『いえ、わたしは同胞からだと言いましたけど。どの道先輩が生み出せば同胞ですよね』
「でも、彼らが最強と認めるかな?」
『あ、その心配でしたか。新しい魔法陣に先程彼らかのアドバイスをもらって、彼らからも最強だと太鼓判を貰いましたし、彼らもこれでいいと許可を貰っているので大丈夫ですよ』
これは話し合い中に狼達と話をつけていたな、どうりで早いわけだよ。
『檻で行われる鼠狩りなんて、の程度参考になるか分からけど、多少は役に立つでしょう』
上手く利用されたーっ。
「じゃあしょうがないかー」
諦めないでもうちょいいい条件を取りにいって欲しいが、僕にも内容は思い付かないし、しょーがないか……。
ご主人様が場と狼を用意する。
気持ちを切り替えるしかないか。
メイズ様の今までのオーダーだと走破加速と空足は確定、後三つの組み合わせに頭を悩ませていた。
走とはついているが、歩くだけでも効果が出る走破加速、走れば走るだけスピードが出る。
空足は言わずもなが空中を歩ける様になるスキルだ。
未知の三つを警戒する以前に、分かっている二つだけで致死スキルだよ、もう!
『しょーぶ——』
さて幾つ手札を——。
『始め!』
離れの階層の狼達の遠吠えが幾つも響き渡った。
狼が走り始める。
どう頑張っても向こうの方が速い。背中を向ければ対処が遅くなる。
その場で腰を落として盾を構える。
狼はジクザクで走ってくる、直線で走るより、左右に揺れて走った方が早くなるから当たり前だ。
でも何か違和感が……、土埃が上がっていない?
そうか、最初から空足を使っている、地面のから空中に変える場合の失速を嫌ったのか。
って学習している? いやあの時の狼とこの狼は別物となると入れ知恵してるのがいるな。
メイズ様と言いたいが、繋がりが無いから念話は使えないつまり他の狼達か!
審判に抗議したいが、声を出すだけの隙さえ作り出すのが怖い。
『離れで見ている子達も応援に力が入っていますね』
言葉が分からないからってアドバイスを声援って事にしやがった。
くそう、生まれたばかりが相手にある唯一の隙なのに。
いやまだ大丈夫、こっちは土魔法が使えるんだ。
速さが上がるほど直線行動になる。タイミングを見計らって、土柱を出せばカウンターを狙える。
まだ視認出来るだけの速さだ。
いつでも土柱を出せるように構えていると、消えた。
は? 消えるスキル?
いや、右!
振り下ろされる爪を剣で受け止める。
体格差からくる重い衝撃に抵抗せず素直に吹き飛ばされる事で逃げる。
だがこのままだと壁に打ち据えられる。
剣を地面に刺して止まろうとするが、なかなか止まらない。
腕が引き千切れそうだと思える程に痛みがはしる。
どうにか止まるが、痛みで蹲りそうなのを耐えながら狼を見る。
一呼吸整える距離はある、そう思っていると地面に影が出来る。
反射で横に転がると空ぶった狼の手が地面を砕いた事で起こった衝撃で余計に転がされる。
転がりながら追撃がきたらまずいのとストッパーになればと盾を構えると、咆哮が聞こえた。
同時に衝撃に突撃される。
強く壁にぶち当たり、全身に激痛がはしる。
咆吼波。
三つ目が分かったが、満身創痍に近い。
始まって五分も経ってはいない、勝負時間は三十分もあるのに。




