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「な、なんの事ですか!」
「あー、グループに入れなかったんだね」
「先輩はそんなんだから!」
「ゴメンネ。ダンジョンボスを生み出した後のメイズちゃんはアタシも興味が無いんだー」
「私はまだダンジョンボスを生み出していません!」
「えっ、えっ? なんで?」
「そ、それは……」
言いづらそうにしているから、幾つか聞いたことがある話を思い出してみる。
「あ、強いモンスター引き当てたけど、それで満足出来なくてー良いスキルも欲しくて出しては消したりしてるんだねー。でもスキルの数も内容も運だから悩むだけ無駄だよ」
「分かっています! でも諦めきれないんです、ただコミュ力があるだけの奴らを逆に見下ろしてやりたいんです!」
「流石に人間に毒されすぎだぞー」
「……っ……! すいません」
「そういう事ならしょうがないなー。ダンジョンボスがいないなら、アタシが望んでる人材だからねー」
「先輩に何が出来るっていうんですか」
「他言しないならー話すけど」
「しませんよ、というか話せる相手今居ませんし」
「拗らせ過ぎちゃってたもんね」
「う、うるさいです! 若さゆえの過ちって誰でもあるじゃないですか!」
「そうだねぇ。とりあえず他言しないって事ならこの魔法陣を地面に描いて発動してみて欲しいなー」
魔法紙を渡す。
「もしかしてゴブリンの魔法陣ですか?」
「そーだよー」
「先輩が発動させればいいじゃないですか」
「それだとアタシが何か小細工したかもしれないって疑いが残るでしょー?」
「まあ……確かに」
メイズちゃんは納得しながらゴブリンを生み出した。
「なんの変哲も無い……」
「生み出したならモンスター情報見なきゃだよー?」
「はあ……?」
言われるがままモンスター情報を見たメイズちゃんは言葉を失う。
「スキルがゼロのゴブリン?」
「ビックリしてるー」
「先輩これは……⁉︎」
「驚くのはこれからだよ? 渡した魔法陣をアタシに向けてみて」
魔法陣の上にスキル紋だけが描かれた魔法紙を重ねた。
「もう、一回ね」
少し緊張した面持ちでメイズちゃんが魔法陣を発動させて生み出したゴブリンの情報を確認して絶句する。
「魔法陣のスキルに関係している部分を把握したんだよー。アタシはその部分をスキル紋と呼んでいるだよ。どう?」
「こ、これはどこまで……?」
「スキル紋を加える事とスキル紋の把握くらい等々かなー?」
「これを私に教えて先輩はどうしたいんですか?」
「これを生み出せる力が他のモンスターに有効化なのかと、スキル紋は共通なのかだねー」
「見返りはそれだけですか?」
「幾つか手に入れて欲しいものはあるかなー」
「それは?」
「牝ゴブリンの魔法陣とゴブリンが騎乗出来るモンスターかな」
「牝ゴブリンは自身でどうにか出来るんじゃ」
「いつくるか分からないからねぇ。出来るだけ早く手に入れたいなら一人でやるよりもって感じかな」
「それでも人間の女さえいれば牝はいらないんじゃ」
「ダンジョンが人が踏み込まない場所じゃなければねー」
「……ああ」
すっごい憐れみの目で見られた!
「もしスキルの付け替えはゴブリンだけしか出来ないのなら?」
「スキル紋集を渡してご要望のゴブリンを渡すだけだねー」
「そうですか……」
考え込み始める。
「スキルが五つとかも出来ます?」
「それは今は無理。下級中級上級でそれぞれ付けれるスキルは決まってるみたい、下級だと二つまで。ダンジョンが成長して中級を生み出せる様になったらプラス二つになるけどね」
「そうですか」
手応えはちょっと厳しいかなぁ。
「ゴブリンでなければ、五つ付けれるんですよね」
「アタシは出来ると思っているけど、結局は試してみないと分からないなー」
「……分かりました。テストをしましょう」
「どんな?」
「私のモンスターは狼種、イアールンヴィズの狼です」
「上級モンスター、狼の姿をした巨人……!」
「個体として最強のフェンリルには及びませんが、太陽と月を狩る事が出来るほど成長の伸び代のあるモンスターです」
「これは確かにスキルを厳選したくなるね。ただ最強なだけならスキルはなんでもいいけど、育て方次第では強くも弱くもなるもんね。で、テストっていうのはー?」
「魔法陣を一枚渡します。それで先輩が検証したい事をすればいいでしょう、ただ……」
「スキルは生み出してからじゃないと分からない。そして、他所から貰った魔法陣のモンスターは強い物程、ダンジョン妖精に牙を向く、よねー」
「はい。スキルを自由に付与出来るスキルに大いに興味は有りますし、なんなら私も研究に参加したいですが、それは私達の本来の役目ではありません。私達の役目は人間を殺し魂と感情の収集です。なので」
「手を組むだけの力と有用性を見せろという事だね。様子は光魔法で光景を連続絵で残せばいいのかなー?」
「いえ、直で見たいです」
「接続しろってことー」
「問題が?」
まぁ、見られた所で困る物は無いけどー。
「戦い方はなんでも有りでいいんだよね?」
「はい、じゃないと私の狼にゴブリンが勝てる訳ないですから。ただのゴブリンが何百何千としたとしても相手になりませんよ」
「流石に何千なら勝てる気がするけどなぁ。ま、いーや。一日貰える?」
「はい、勿論です」
「と、いう事があってね」
(ある程度条件指定をしても不特定に対応出来るための条件じゃこちらに都合が良く話は進みませんね)
「まぁそうだねー。それでどこまで見せようか?」
(全力でいいんじゃないですか。イアールンヴィズの狼っていうのは聞いた事が無いんで対策打ち用が無いんで、というかご主人様は知ってるんですよね? どういうモンスターですか?)
「まぁ、北の果てのモンスターだから知らないかー。イアールンヴィズ—— こっちの言葉に直すとー鉄の森って意味でね。そこに住んでる女巨人とフェンリルの間の子供達の総称だよ」
(数千で足りますかね?)
「流石に生まれたてで一匹なら大丈夫だよ」
(だといいんですけど。とりあえずスキルの選別作業に入って、魔法陣は一枚で—— あっ駄目だ、重ねる事を考えたら一体につき五枚だから五千枚は必要になるのか、武器は今回は全て魔力で造るとして、どうせまだ先の話だと思って準備してなかったのになぁ!)
「は、は、は、は、は。がんばっ!」
(まぁいいですけど、分かってます? 全部準備するのご主人様ですよ)
「ホントだ! これアタシが大変なやつだった!」
(なんで一日しか準備期間貰わなかったんですか……)
今から準備を始めて、明日丸一日とテストを始める直前まで作業をすれば実質としては二日近くの時間があるけど、ギリ間に合えうかなぁ。
(とりあえずスキルの選別中にこれだけの大きさの魔法紙を百枚と同じ大きさの五十丁付の判子を作ってください)
地面に必要な面積を書いて示す。
「その大きさを造るのは結構時間がかかるよー」
(ええと、じゃあ……)
ふと思いついた事を試してみる。
(これを発動してください)
ご主人様に一匹のゴブリンを生み出させて、その情報を見る。
予想通りだったので。
(じゃあ六十枚で、その代わり判子は二つ作って貰います。あ、でもスキル紋後付けと最初から付けているのはどちらが楽ですか? 四から五種類を各二組の判子がいるんですけど)
「一種類ずつ作った方がいいと思うかなー」
(じゃあそれで。じゃあ僕は選別に入りますね)
昔読んだ本を思い出して……なんだったかな?
人間だった頃の記憶を呼び出す。
光の紙に書かれている内容を参考にして、近接二百体、中距離三百体、長距離を五百体とする。
さらに盾役百三十四体、近接攻撃役六十六体。中距離を槍とショートボウと魔法とに各百体ずつ、遠距離はロングボウと魔法に半々とする。
メイン攻撃は遠距離組、近距離組は盾であり壁であり牽制である、中距離組は跳躍による離脱を防ぐ事を主にして牽制もやってもらう。
とにかく動かせるながコンセプトの編成である。
問題は僕の言う事聞くかと言うことと残存兵が何体になるかという事だった。
他にも狼側につかれたらどうしよう。狼が成長して強くなったらどうしよう。どれか一つでも殺される未来しか見えない。
うーん、やるしかないか、気は進まないけど。
考えられる限りで必要な物とその理由を書いてご主人様に渡す。
「あー……うん」
若干引いているご主人様を無視して、魔法紙の準備が済んでいるか確認する。
(作戦としては動き回られないことに全力を注いで物量で押し潰すです)
「まぁ、そーだろうねー」
(近距離は盾術と踏ん張りと剣術と体力増強スキルを、中距離は槍術と岩魔法、弓術と速射、火魔法と連射のスキルを、遠距離は弓術と命中、火と溜めのスキルにしておきましょう。全部五重です)
「ふむふむ、でもそんにの間に合うの?」
(完全にご主人様の頑張り次第ですね。とりあえず魔法陣の用意の仕方を説明しますね。まあやり方は簡単ですよ。魔法紙の両面から寸分違わずに魔法陣を挟むように判子を押すだけです。通常五枚必要な枚数を両面二枚片面一枚計三枚に減らせます)
「なーるほどー!」
(じゃあ、写しの方はお願いしますね。僕は地形を有利に弄ってきます)
「頑張ってねー」
さて、事前にご主人様に頼んで円柱状にくり抜いて貰った場所に来る。
遠距離組の持ち場である高台を作って武器の搬入をしてと、終わるかなー。




