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同じ部位に違う二つのスキル紋重ね描き出来ないかな、もしくは決まった箇所ではなくて別の場所に描くとか。
ご主人様に質問してみる。
「んーそうだねー。重ね描きは試してみないと分からないけどー、描く場所を変えるのは出来ないんじゃ無いかなー。魔法を生物の様にするにはとても複雑な構築が必要だしー、たぶんだけどー、出来るだけの単純化もされているんだと思うんだよねー」
(これで……?)
雑に扱ってはいたが、ゴブリンの魔法陣でさえ人間世界では秘奥と呼ばれても遜色の無いほど絶技で作られている。
「理解出来ない魔法陣は使えないからさー、使うには理解出来る程に簡略化もしくは理解しなくても使えるように単純化するしかないからねー」
なるほど。
「とりあえず重ね描きだけしてみよーかー」
同じ場所に違うスキル紋を描い発動させる。
生まれたゴブリンはスキルが一つも付いていないゴブリンだった。
「やっぱり駄目だねー」
(なら魔法紙を二枚用意して同じ部位に違うスキル紋を入れて重ねた状態で発動させたらどうなりますかね)
二枚を貼り付けた状態で発動してもらうと、バチッと反発してモンスターすら生まれなかった。
「こうなる結果は意外だったけど、こう二体のゴブリンが融合して生まれたらどうしようかと思ってたよー」
想像してかなりグロいのが浮かんで、実際に見たら言えない程のグロさであっただろうから、発動しなくてよかった。
(とりあえず最後に一応同じ場所に同じスキル紋で二枚重ねてみますか)
「まー、そーだねー一応しておくかー」
そして予想外の事が起こった。
二枚の魔法紙に描かれた魔法陣は反発せず融合して一体のゴブリンを生み出した。
「マジかー……」
(ご主人様、情報はどうなってますか?)
「えっ……、う、うん」
そうだ、これは僕のスキルが切っ掛けで起こった事態だ。何か分からないだろうか?
が、何も変化は無い。
魔法陣を見ないと駄目か?
ご主人様にこのゴブリンの魔法陣を見せて貰おうとすると驚き過ぎたのか、引き攣った笑みで硬直していた。
(どうしたんですか⁉︎)
「……うん、これ見て」
確かこのゴブリンに付けたスキルは腕力上昇だった。
スキル効果は一・二倍だったのが、重ね合わせたことで一・四倍になっていた。
「ブリードから見てどんな風に見えてる?」
このゴブリンの魔法陣を渡されて、見てみると相変わらず丸で印を付けられていたので触ると、光の紙が出てきた。
(一割が二割に書き変わっています)
そして魔法紙でスキル紋を写すして交互に見ると、少し変化しているのがわかった。
「これ凄い発見じゃない?」
(はい、これ広めたら魔界側は世界取れますよ、多分)
「冗談じゃなく、本気で取れちゃいそうだねー」
自意識がほぼ人間としては、これを広めたくない。
「これはスキルが有るから出来る事だと思う? それとも気付けば誰でも出来る?」
目を閉じて深呼吸する。
(そうですね、気付けば誰でも出来るんじゃないですかね。とは言え、現状この場に僕がいる以上スキルが無くともとは断言出来ません)
「ならー、ゴブリンの魔法陣と魔法紙の魔法をセットで広めたらどうー?」
おそらく爆発的に広がるであろう。
気付けるまでの難易度が高すぎたから今まで誰もこの方法を使っていなかっただけで、これだけ簡単なら誰でも使う。
そう答えた。
「じゃあー、問題はあると思うー?」
(そのゴブリン、腕力だけなら僕より強いんですよね)
「あ、本当だー」
(同じ強さの個体なら絶対にスキル紋を重ねた方の個体の方が強くなります。一つだけならまだしも、複数のスキルを持てるモンスター同士ならその差は顕著に出るでしょう)
つまりは、昔勃発したというボス争いが再び起こる可能性がある。
「なかなか上手くいかないものだねー」
何やら考え始めたご主人様を横目に、このゴブリンを別の部屋に誘導しておこうと近付くと、ゴブリンは棍棒を構えて先制で攻撃してきた。
剣と盾を構えて、盾で受け止める。
(重い……!)
戦闘強化の為に何体ものゴブリンと戦って、当然腕力強化のスキルのゴブリンもいたので対処は慣れている筈だったのだが、少し倍率が変わっただけでこれ程変わるのか。
ゴブリンが再び振り上げる素振りを見せたので、上げるタイミングに合わせて盾で体当たりして顎を強打する。
そして怯んだゴブリンの脇腹を刺してトドメを刺した。
距離を取って魔力になって霧散するのを確認してから深く息を吐いた。
最近戦いに慣れて無意識に気が抜けていたか、相手を甘く見ていたつもりはなかったんだけど。
(あっ……)
「どうしたのー?」
(経験値が多くなってます)
誤差と言われれば否定出来ない程度の増加量に見えるが、確実に増えている。数週間戦っていたのだから間違いない。
「これもー、デメリットかなー」
そう経験値のいい狩り場として利用にされる。
「あと確かめるのは、何枚まで重ねられるかだねー」
それから数日掛けて得た検証結果は一箇所につき五枚で同じ重複数同士でしか重ねる事が出来ないという事だった。
(なんというか——)
「メンドクサイヨネー。結局使用枚数は変わらないし、手間も使用魔力も変わらないけどー」
(邪神様が作ったんじゃ……)
「いーんだよ。アタシ達が四苦八苦している姿を見るの好きな方だからー、愚痴を聞くとか愉しいらしいよ」
(そうですかぁ……)
「ところで傷はダイジョーブ?」
五枚重ねのゴブリンと戦って重傷したのを、ご主人様に魔法で回復してもらったところだ。
(お陰様でどうにか死なずにすみました)
「気をつけてねー。育種を覚えてるゴブリンは一杯いるけど、使えるのは今のところブリードだけなんだからね?」
(はははは……、気をつけます)
「今日はこのまま休んでいーよ?」
(いや、心配は結構です)
「そういうんじゃなくて、今から出掛けるから」
(あ、はい。いってらっしゃいませ)
「じゃ、行ってくるねー」
本体であるダンジョンコアはここにあるのに、ご主人様の気配が消えたのが分かる。
(んー不思議だ。こうなると反応がなるんだよなぁ)
当然魔法を使ってくれなくなるのでゴブリンと戦闘訓練は行えない。
(ダンジョンの構図でも考えるか)
迷路を作るようでウキウキしながら魔法紙に描き始める。
実はブリードから人選基準を聞いた時から声を掛けるダンジョン妖精は決まっていた。
ここは魔界にあるダンジョンコア製造工場。
その一部は知識だけでは人間界で苦労するからと生活を学ぶ為の学校になっている。
まぁ学ぶ学ばないは自由で明確な卒業基準は無い、だからずっとここで暮らすダンジョン妖精もいる。
ここに来たのはダンジョンコアになって体を失ってしまったダンジョン妖精に義体を貸してくれるからだ。
個室も借りたし、あとはあの子が来るのを待つだけ。
「し、失礼します」
オドオドしたダンジョン妖精が入ってくる。
「メイズちゃん」
アタシの声にビクッと体を振るわせる。
そんな様子を見て気付く、義体だと。
あー、遅かったかー。
「えっと、どういった御用でしょうか、ドミニ先輩」
「あーんー、用事無くなちゃった。ダンジョンを作り出して無いなら、話たい事があったんだけど、ごめんねー」
んー、これはちょっと困ったかなー、流石に今いる子達は世代が違うもんね。
「あ、ここ使いたいなら、使ちゃって良いからねー。じゃあねー」
「先輩」
「なぁに、メイズちゃん」
「先輩のダンジョンモンスターはなんですか?」
「えーゴブリンだよー」
答えると、ビクついていた体の震えが止まっている。
分かりやすいなー、もう。
「まさか魔法陣をたかりに?」
「そんな訳ないよー。ちゃんとーお互いに有益な交換をするつもりだったんだよー?」
「ゴブリンダンジョンごときがですか? 有益な人間を殺せたとでも?」
「ダンジョンは人気の無い場所だからまだ一人も殺した事は無いよー。でも今は雌伏の時だからー、力を貯めてる途中なの」
「ぷっ、笑わせないで下さい」
「とにかくー、メイズちゃんにはもう用は無いんだよね。だからー帰るね、じゃねー」
「落ちぶれましたね。いえ元々落ちぶれてはいましたが、ダンジョンを作り出していない後輩に助言と言って自分の言う事を聞く手駒にしようとしてるんですよね。多少あった価値すら無くなったんですね」
「ギブアンドテイクの関係と言って欲しいなー。それにむしろこっちの方が損をしているんだよー?」
「ゴブリンダンジョンでなければその言葉を信じれましたが」
「だから、信じなくていーし、アタシもメイズちゃんにはもーキョーミはないんだよ」
「そんな事言っていいんですか? 一応お世話になりましたから、魔法陣を一枚くらいあげてもいいんですよ? その代わり私の下についてくれたらですけど、ゴブリンがなんの役に立つかは分かりませんけど」
調子乗っちゃってるねー。
まぁおそらく、魔法陣はゴブリンじゃないんだろうけど、アタシの目的にも合致してるんだけどー。
「いらないかなー」
「私が何を引き当てたか知ったから呼び出したんじゃないんですか⁉︎」
アタシが余りにも気にしないから、メイズちゃんの機嫌が悪くなっちゃってる。
「色々やる事があってずっとダンジョンにいたからー、最近の事は知らないんだー」
「じゃあなんで」
「メイズちゃんがー、煽てたら木に登りそうな子だったからだよ?」
アタシは誠実だから、正直に答えてあげる。
「そこまで強気なのは興味出てきました。いいでしょう。そこまで言うなら話を聞いてあげましょう」
「んー、無理しなくていーよう?」
んー、ゴブリンを引き当てたアタシを下に見るのは予想通りだけどーちょっと焦りが見えるかな?
「何か焦ってるー?」




