4
スキルは生まれた直後は下級モンスターだと一つか二つで、上級モンスターになると最大で五つになるという。魔法陣が描かれた時点で数は決まっているが、生み出さないとスキルを幾つ持っているか分からないそうだ。
だがスキル紋が確認出来た事で幾つ持ってどんなスキルを持っているか事前に分かる様になった。
この発見はダンジョンボスを生み出す時に結構大きい意味を持つ。
ダンジョンボスを生み出す魔法陣を出した時点でモンスターの種族は変更は効かないが、ダンジョンボスを生み出さない限り魔法陣を変える事は許されている。今までは勘でスキル多そうだなぁという感じで生み出してたそうだが、当然外れる事は多かったそうだ。
スキルを選べられることになったのは大きい。
特にスキルを最大何個持って生まれるのかが分かるのは有り難いそうだ。
上級モンスターでもスキルが一個とか普通にあり得る。進化でスキルは増やす事は出来るのだが、一個から始めるか五個から始めるかとなると掛かる手間が違ってくる。
スキルの六つ目だけは後天性だけでしか付く事がない、そしてダンジョン妖精内では六つスキル紋を揃えたモンスターを魔王と呼称している。まあ大体がダンジョンボスしか揃えた事はないので、ダンジョンボスの進化先という認識らしい。
ちなみに人間の場合は、国を滅ぼした事があるモンスターを魔王と呼んでいる。
とはいえ、普通のダンジョンモンスターでもスキルの種類と数が分かるという恩恵は大きい。
(それでこれ以上の調査はどうします?)
「そうだねー、スキル紋の種類の特定かなー。正直これは金になるよー」
(売るんですか!)
「比喩だよー。ダンジョン妖精は特殊な連絡手段があってねー。情報のやり取りをしてるんだー。まぁ全員競争相手だから出し抜く為に重要な情報は流れる事は全く無いけど。だけどたまーーーーに有益な情報が流れる時があるんだけど、理由は欲しい物があったり手助けしてもらいたい時なのさー」
(なるほど、売ると言うのはそういう事でしたか)
「即物的な結果は得られないかもだけど、大多数に貸しは作れると思うんだよねー。ちなみに欲しい物とかあるー?」
(そうですね……牝ゴブリンの魔法陣は手に入れたいですけど、そうそうないでしょうから、ゴブリンが乗れる動物もしくはモンスターですかねぇ)
「なるほどなるほどー。じゃあそれを手に入れる事を目標にドンドン描き出そー。魔法陣ドンドン出しちゃうよー」
(すいません、一つずつお願いします)
それから数週間は、午前は戦闘、午後はスキル紋の写し出しになった。
午前で生み出したゴブリンの魔法陣のスキル紋を午後で写すという作業工程とする。
最初にご主人様が完璧に写したものじゃないと意味が無い気がすると言って、僕が見ている囲っている範囲の模様だけを写し取る光の紙を作り出す魔法を作る。
僕は魔法で魔法紙を生み出し写す、そしてスキル紋が描かれている部位とスキル名を書いて、ご主人様に渡す。
渡されたご主人様は記録し、今までに記録した魔法陣の情報を参照して、どのスキル紋がどのスキルかを割り出す作業を行なっていた。
しばらくの間その繰り返しで過ごしていたが、ふと思った。
(ゴブリンと他のモンスターって同じスキル紋なんですかね?)
「やっぱりそう思う?」
どうも大分前からご主人様は気付いていた様だ。
(さすがご主人様。とっくに気付いていたんですね。確かめる方法とか思いつきました?)
「うん、まぁー。だけど使いたく無いんだよねー」
(えぇ……、それはどうしてですか?)
「借りってー、作るの嫌じゃない?」
その気持ちは分からないでもないけども。
「もしー、借りを作るならーどんな妖精がいいと思う?」
(誠実な方法が一番ですよ?)
「えー」
えー、じゃない。
(はぁ、分かりました……。まだダンジョンを作っていない—— 作っていない妖精と連絡取れますよね?)
「それは大丈夫ー」
(なら、その中で一番才能があって性格が一番気の弱い様に見える妖精と連絡を取ってください)
「様に見える子なの?」
(理由は分かっていますよね?)
本当に気が弱いと話に乗ってこない可能性が高い。角が立つので口にはしないが、おそらくご主人様は気が弱いタイプだ。こんな人気が無い所にダンジョンを作ったのも人が怖かったからだろう。
実際のご主人様の才能と実力は分からないが、自己評価は悪い筈で人間に入られればすぐに攻略されると考えただろうなのが分かる。更に安全にやろうとしてゴブリンを引くという運の悪さもある。
まぁ今までも色々上手くいかなかったんだろうなぁ……。
ともかく気弱の様に見せる様な奴は計算高いのは間違い無い、そして自尊心も高いだろう。となると簡単に話に乗ってくるに違いない。
「……」
(それでですね、このスキルゼロのゴブリンの魔法陣を使ってゴブリンを生み出して見せて、その後にその場で適当にスキルを付ける所を見せてスキル付きゴブリンを見せて下さい)
「そりゃー、そんなのを見せられたら飛び付くだろうけどー。でもブリードが欲しい物を手に入れられるかは分からないよー」
(大丈夫ですよ。気弱に見せかけてる様な奴は頭角を表したら気が強くなって調子乗って周りを支配下に置こうと派閥作ったりするので、欲しいのがあれば貢がせる様に言う筈です。まぁ集まる連中も甘い蜜を吸えるだけ吸う様な連中ばかりでしょうけど)
「ああー……。でもそれだとアタシ上手い様に使われるだけにならない?」
(まあ囲いこまれますね。ですが、悪い部分は全て向こう持ちですし、ダンジョン妖精である事で最大の難点、追い掛けられるという事が無いんです。つまり、こちらが一方的に連絡を断ちさえすれば他の妖精よりあったアドバンテージが一気に無くなる上に、他の妖精に渡るリスクが発生するというわけです)
「アタシの機嫌を損なえなくなる訳かー。でもある程度で割り切られたらー?」
(こちらも欲しい物が手に入ったから良いやと割り切ればいいだけですよ)
「それもそっか」
(ですがそうですね、どんな名前のスキルかは伏せて、今まで無かったこんな強力なスキルだからデメリットは当然あるかもとは言っておきましょうか)
「なんでー?」
(そう言っておけば切り捨てられる事は無いでしょうからね。強力なスキルにメリットだけしかないとかあり得ませんし対策する為に研究しようにもご主人様のダンジョンだけにしか確認されないとなると解決しようが無いですから。それできちんとデメリットは共有すると信用度も上がりますし、まだ他にデメリットがあるかもしれないとなる訳です)
「なるほどねー。しかし小局は見えるタイプか」
(ま、ともかくそういう感じで、見つけて来てくださいね)
「まー分かったけど、アタシが選んだ妖精のモンスターがゴブリンだった場合はー?」
(それはそれで良いんじゃないですか、一番欲しいのは牝ゴブリンの魔法陣ですし二人馬力なら、手に入れられる可能性も高まりますし。もう分かっていると思いますけど自分で解決出来ない時点で多人数に売るのは無理です、諦めましょう)
「グゥ……、分かったー……」
情報交換、魔法陣もその中の一つなんだろうな。おそらくこれが一番欲しかった情報に違いない、モンスターの種類が多いほど攻略難易度上がりますもんね。
とりあえず、ゴブリンのスキル紋と他のモンスターのスキル紋は同じなのか問題の方針は決まった。
さて、作業に戻りますか。
にしても、スキル紋が被る事の方が多くなってきて、正直、ちょっと飽きてきた。
そういえば、スキルゼロの魔法陣全て埋めてみたら、どうなるんだろう。六箇所全て埋まると魔王って言ってたけど。
ふと、魔が刺して当たり障りのスキル紋で埋めた魔法陣を作る。
(ご主人様、この魔法陣発動してもらってもいいですか?)
人間の頃とは違って魔法の扱い方は上手くなったのだが、それでもせいぜい初級が精一杯で魔法紙を生み出す程度ならともかく、モンスターを生み出せる程では無いので、試したい事があるとご主人様に頼る。
「えーっ! 何この魔力の使用量ー! スキルが六つー⁉︎」
魔法陣から噴き出すというよりは、射出されている様な勢いで魔力が出る。
そして、魔力は衝撃波を発しながら形を成そうとしていたが、割れる様な音がして音がした方を見ると魔法陣が砕けていた。
魔力は霧散する。
(おお、こうなるのか)
「おおこうなるのかー、じゃなーいー!」
あ、本気で怒ってる。
(すいませんでしたー!)
平伏す。
「はぁー。気になるのはわかるけどー、やるなら事前に言ってー」
(はい、分かりました。それでですね、せっかくなんで三つ、四つ、五つとやってみませんか)
「一回ぶっ叩いてもいーい?」
ひぃーっ。
自然と平伏したまま後退りしてしまう。
「器用なことをー」
ご主人様に呆れられる。
「まー、ちょっと休憩がてらやってみるかー」
(話が分かるご主人様ステキ!)
「はぁー……」
盛大に溜息をつかれた。
ご主人様は適当に魔法陣を三つ描いた。
その結果、全部失敗してしまう。
「上級のスキル最大数が五つなのは確認されているけどー中級は分からない。けどーおそらくー下級、中級、上級で一度で付くスキルの上限数は決まってるってことかなー?」
(たぶんそうですね。ただこれがダンジョンボスに適用されるかは分かりませんね)
「あー、魔法の失敗は魔力保有量か魔力耐久性が低かった、もしくは両方てことかなー?」
(今わかっている材料で考えるならですけどね。もしきちんと確かめたいならダンジョンが成長させないといけないですけどね)
何にしても成長出来ないのがネックになってしまうなー。
最大二つか。




