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パーティーの仲間に殺された僕はゴブリンに転生して、種付スキルでダンジョンを強くする。  作者: ぐまうす


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 ……なんだこの考えは?

 憎悪でもなく復讐でもなく、欲望を満たしたい?

 僕はこんな奴だったか? 自分が清廉潔白な存在だとは微塵にも思わない、だけど、こんな事が愉しいと思う程堕ちてもいない、いなかった筈だ。

 無意識無自覚の欲望があった?

 それがゴブリンになった事で顕在化された?

 いや、この欲望があったからこそゴブリンになったのかもしれない。

 ……ご主人様に悪い事をしてしまった。

 迷惑を掛けてしまった分、ゴブリンより役に立たないと、それに嗜虐趣味なんてマティルデみたいで虫唾が走る。

 ゴブリンの様な自分を認めよう、だが認めたからって受け入れなければいけない理由は無い。

 本能は理性に従わせる、理性も内包する黒い欲望をもって。

 支配欲。

 理性で自分というゴブリンを支配する——。

 覚悟を決めた瞬間、力が溢れた。

 視界が開けた様な気がする、耳の閉塞感が無くなった気がする、周囲の空気から感じられる種類が多く広くなった気がする、何より頭がスッキリした気がする。

 まさに解放感。

 身体中に付着させたスキル紋へこめる魔力の通しも抜群に良くなった気がする。

 だが今の絶好調な体なら、スキルなんて必要が無い。

 マティルデの視線呼吸体勢の隙とタイミングを全て見計らい、前足をマティルデの股下の地面に出す。

 人間とゴブリンの体格差を利用してマティルデの懐に入り込む。

 その時盾で守り、密着する程近付いたら盾をマティルデに押し付けて体の可動域を減らし、後ろ足を前足を追わせる様に動かしながら、前足を軸に回転させる。

 同時に剣を逆手に持ち直し横腹を突き刺す。

 更に刺した勢いと痛みで前のめりになった姿勢を利用して、密着させている盾を上げて体を押し上げ盾の縁を顎下に引っ掛けてから、僕は前に回転した。

 結果、マティルデは地面の叩き付けられ、背中への強打と回転した勢いが乗った僕が腹の上に落ちた衝撃をもろに受けた。

 大ダメージを受けて動けなくなったマティルデにトドメをさそうと、素早やく起きて刺さった剣を引き抜き、喉を斬り裂く為に振り抜こうとした。

 その時、何か飛んで来る気配がして横目で見ると、スヴェルドが背中から飛んできた。

 受け取らないとまずい!

 咄嗟に動いて背中から捕えて、衝撃吸収のスキルを使いスヴェルドへの負担を極力減らした。

 ゆっくりと地面に置くと、かろうじて意識はある様だ。

 相手をしていたゾフィーを見ると、あからさまに激怒していた。

(何やったの?)

(何をと言われても困るで御座るな、戦いは怒らせる様な事しかしないで御座るから、ただ主殿があの女を倒す一部始終を見ていた様で、それを見た瞬間見る見ると怒り出して某を吹き飛ばしたで御座る)

 あー、マティルデは戦いに入って来られると怒るからなぁ、だから一応もしもの為の様子見と明らかに強そうなスヴェルドを引き付けていたのか。

 それでスヴェルドの方が倒し甲斐はあるけどダンジョンボスは僕だからな、分かりやすい戦果を取ってから強敵と戦うつもりだったのかな。

 それで、様子見をしてたら負けたから、倒した僕に怒りが湧いた?

 正直そこまで仲良かったかな、あの二人。

 まぁ、ゾフィーの中ではマティルデと僕の幼馴染三人組で、その一人が死んだから過剰反応してるっぽい?

 ともかく相手はしなきゃいけない。

(なんかそのお嬢様を倒されたより、倒し方に怒ってるぽいよー)

 ご主人様から念話が入った。

(倒し方?)

(うん)

 倒し方って言われても、結構正攻法でいったと思うけど。

(なんかー知ってる事で確定してしまったみたいな事をぶつぶつと呟いてるー。もしかして人間の時に見せた事ある技だった?)

(あの動きの練習相手になってもらってましたね、そういえば)

(あー、だからかー)

(と言うと?)

(ダンジョンって魂を取り込んでその魔力によってモンスター生み出すから、記憶っぽいのが混ざる事があるんだよねー。人間だった記憶が混ざる事はほぼ無いけど、魔力は使わないでも体に有る物だから体の動きを記録する特性があって、出現するモンスターに技術が受け継がれる事が有るんだよー、取り込んだ魂が少ない程出易くなるんだよねー、逆に取り込んだ魂が多いと出難くなるんだー。だから、人間だった頃のブリードが使っていた技を使ったイコールブリードは死んでいるっていうのが確定した訳だねー)

(えー……、僕を殺したあの四人が追われてたのって、ギルドの懲罰人とマティルデの下部パーティーですよ、多分。その二つに追われてる時点で僕が死んだ事は確定だった筈ですけど)

(ほら、死体を見るまでは信じないとか考えてたんじゃないかなー)

(あの四人がどう白状したか知りませんけど、刺されて谷底に落とされた人間が生き残れるわけ無いだろうに、何考えてるんだか)

(まー、でも、英雄級になると人間の脆さを忘れてるっぽいって皆言ってたよー?)

 いやまぁ確かに頑丈にならないと上級のダンジョンには入れないか、入って行ける様な人間の周りも同じ様な頑丈さだろうし、分からなくも? ない様な。

 まあ、なんと言うか、全てにおいて引く。


 ブリードは大分引いている様だけど、依存と言うよりは執着だねー。

 大した事は無かったとは言ってたけど、幼馴染を好きになるっていうのはありふれた話ではあるよね。

 ブリードとしては好き嫌いになる切っ掛けが絶対ある筈って考えだろうけど、一目惚れっていう要素もあるからねぇ?

 そんな事考えても仕方がないか、あの二人の関係はゾフィーちゃんの悲恋って形で終わったのだから。

 それよりも重要なのはブリードの変化だ。

 何が切っ掛けか分からないけど、中級に進化した。

 成れる要素はあったから不思議では無い、数多のゴブリンと特殊な方法で強化されたスキルとの戦い、数が少ないが上級との戦闘による経験値とダンジョンの成長があったのだ、早かれ遅かれではあった。

 だが、その進化の内容がおかしい。

 不確かだった三つ目のスキルが確定した、が使用は出来ない。

 理由は器が未熟だからと説明されている。

 器が成長したのだから、中級になり三つ目のスキルは確立されたのではないのか。

 その理由は、ブリードの説明文の変化でされていた。

 ブリード、種族名 ゴブリン・エア トゥ ザ スローン。

 最も醜悪なゴブリンを征し者、全てのゴブリンの支配者、魔の王座につく資格を持ちし者。その覚悟を変化させない限り捨てない限りその資格を持ち続ける事が出来る。座につけないのは知力体力魔力等が足りない為。

 そう書いてある。

 本来六つ目のスキルが三つ目として出てきているのだ。

 本来の六つ目でも進化出来たのは中級に至るには三つのスキルの取得が条件だから、それを満たしたという判断なのだろう。

 何がどうしてそうなった。

 ダンジョン妖精としては嬉しい事なのだが、これは本当に本人に教えていい事なんだろうか。

 本人に教えたらやる気が出るのは容易に分かる、だから教えるべきであろう事も。

 だけど、アタシの覚悟が足らない。

 だって実感が無さ過ぎる、いきなり一番信頼している部下が王になれると言われても、戸惑うしかないじゃないか。

 まだ三つもスキルを取得しなければいけない、時間はたっぷりあるという事だ、中級になった事以外秘匿しようそうしよう。

 そう思っていると、マティルデちゃんは鑑定スキルを持っていた様で、ゾフィーちゃんにブリードが最重要討伐モンスターである事を教えた。


 マティルデが何やら叫ぶ。聞いた事が単語だった。

 さてと、ゾフィーが怒っているのは置いとくにしても、調子が良い今の僕でも勝てるかどうかは怪しい。

 戦闘スタイルは、風魔法を駆使した魔法戦士、武器は長い柄の両端から出ている向きが違う片刃の長物。大剣なのか槍なのか僕には判断がつかない。

 さて縦横無尽に飛行出来る奴とどう戦ったら良いんだろう。

 僕も飛べるか飛べないかでいえば飛べる。ただ、相手は縦横無尽に駆ける馬に乗ってる様なもので、僕はチョコマカと走り回る子供だ。

 機動力が違い過ぎる。

 縮地は小回りが効かず直線しか移動出来ない。でもいまの僕なら複数のスキルを合わせれば大丈夫か?

 とりあえずやってみるしかない。

 空足で浮いて、縮地で間合いを詰めた。

 当然、上に逃げられる。

 それを追って跳ぶと、予測停止地点で背後を取られる位置に移動された。

 負担が掛かるが急停止して炎魔法を連発する。

 全て風魔法でかき消された。

 ゾフィーは僕の死角に入る動きをして縦横無尽に飛び回る。

 その場に浮遊して向きだけで追いかけるが、全然追いつけない。

 水魔法で幾つもの僕の周りを回転する水の矢を撃ち出し、その中に土魔法で硬い石の粒を無数に入れ込む。更にその矢を次々と無秩序に飛び回る雷を発現させる。

 だが直ぐにゾフィーは対応した。

 僕の周りの空気が一切無くなったのだ。

 すると雷は霧散し水は凍って石に纏わり付いて落ちていった。

 く、空気が……。

 意識が飛びそうになる寸前で、縮地で空気が有る場所に逃げる。

 何だあの即応力は⁉︎

 正直ゾフィーの実戦を見るのは初めてだ。

 戦い方は頼まれて一緒に考えた事があったから手の内はある程度把握してるつもりだったけど、この対応力は思ってもみなかった。

(話聞いてた限りだと英雄の器って思ってたけどー、これは勇者の器だったぽいねー。なんでまだこんな田舎にいるんだろう)

 僕が聞きたい。

 その事で、街の人達に恨みや憎しみに近い程の感情を向けられていた。

 ゾフィーは僕が弱いから守る為なんて言っていたが、本当に有難迷惑だった。

 ゾフィーが出て行けば、マティルデも追い掛けて行っただろうし街の人達にも目の敵にされていない。

 それに劣等感も惨めさも感じる量は少なかっただろう。

 僕の事を考えてくれるなら、さっさと何処かへ行って欲しいとずっと願っていた。

 その上新しい居場所であるこのダンジョンを無くす?

 知らない事だとはいえ、僕の居場所を無くそうとするのが本当に上手いな!




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