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何を間違ったかいまだに分からねぇ。
あんなガキいたっていい事ねぇじゃねーか。
「ビトこれからどうするつもりだ」
「知らねーよ、テメェで考えろ!」
「なんだとテメェ、元々はお前のせいじゃねーか!」
「反対しなかっただろ! 自分で考えねー癖に、いざとなったらオレに責任全て被せやがって!」
「ビトもアルもいい加減にしなよ」
「レイ、しかしなぁ!」
「三人とももう夜だし休まないかい? ここまでくれば、かの令嬢の追っ手も冒険者ギルドの罰則人も来ないだろう」
「ヴェドの言う通りだよ、疲れてるからそんなに苛立ってんだよ」
言う通りだと思い、今日はここで野宿する事にした。
なんでこんな事になったのか、順を追って思い出す。
エヴルーの街には二人の英雄がいる。
エヴルーの戦乙女、ゾフィー。
嗜虐令嬢、マティルデ。
俺たちの街でこの二人を知らない奴はいねぇ。
そして、この二人のオマケとして有名な奴がいた、無能のブリードだ。
三人の関係は幼馴染だという。
側から見たら、ゾフィーはブリードの庇護者。ブリードはマティルデの玩具だ。
まあ、関係性はどうあれ、街を二分する程の人気者に構われていた訳だ。
嫉妬されない訳がない。
これがまだ、面が良いとか、何か秀でた物があれば良かったが、無能のときたもんだ。
普通、基礎を覚えれば初期のスキルを覚える事は出来る。
だが奴はどんな分野の基礎を修得してもスキルは発生しなかった。
そりゃ、嫉妬以上の物が芽生えるのは当たり前ってもんよ。
特にゾフィーのブリードへの接し方は、女のそれだった。
有名な話にあのガキが風邪を引いた時に、大規模な討伐戦が重なったがゾフィーはすっぽかした。一応遅れて参戦したがそれはガキが回復したからだ。
その事でガキはかなりの鬱憤を買ったという。なんせゾフィーが参戦した途端終わったんだからな、最初から参戦していれば犠牲はほぼ無かっただろうよ。
当のガキはゾフィーに迷惑そうにしていたが、それが他の者の憎悪を燃やしていたのは気付いていたのかは分からん。
だが、理由は知らんが、ガキはマティルデの召使の一人だった。
そしてかの嗜虐令嬢は自分の傘下の冒険者パーティーに入れてコキ使わせて楽しんでいた。
今回その役がオレのパーティーに、周った。
だからオレ達はよ。
街の総意の代表として、あの無能を殺してやったんだ。
この森で逸れてしまったという事にしてな。
そしたら、あの二人は激怒して、その怒りに恐れをなした街の連中はオレ達を見捨てやがった。
あのガキがいなくなってスッキリしたって奴らがだ。
誰も彼もあの無能がいなくなって欲しかった癖に、それを叶えてやったオレ達を捨てやがって!
「それでこれからどうするの、もう冒険者としてはやっていけないよ」
レイがそう言う。
「何、路銀はある。東に行けば港街がある。別の大陸に逃げれば問題ねぇ」
「指名手配されてるんじゃないかな」
ヴェドがそう疑念を口にする
「なんだかんだであの無能が死んでくれて嬉しい奴は多いからな。道中で騒がなければわざわざオレ達を探す様な面倒な事はせんさ。それにあの港街は大きいからな、入り込める隙間はいくらでもある」
「俺たち影の功労者なのになぁ」
アルの奴はそう愚痴った。
「ちげいねぇ」
「それにしてもよくここから東とか分かるね」
「馬鹿か、この近くだろうがあの無能を殺したのは、来たのは三回目だぞ。冒険者ならその程度覚えろ」
「あら、本当だ。アタイも大分焦ってたわね」
——ぱきっ。
流石といえばさすがだと思う。
ほんの小さな音で臨戦態勢に移行した。
そして僕は間抜けだ、木の枝を踏んで密かに近付いている事がバレてしまった。
「ゴブリンか」
弓兵兼斥候のアルが僕を確認して言った。
「そういえば、しばらく前にこの森にゴブリンダンジョンが出来ているって噂があったね」
魔法使いのヴェドが言う。
「うっわ」
破戒女僧侶のレイが嫌悪感を出す。
「金になるんなら攻略に行くんだがな、こんな場所にあるゴブリンダンジョンじゃ大したもんはねーな」
そしてリーダーの魔法剣士のビトがそう言った。
今、僕は無理をして外に出ている。
現在、魔力操作で自然魔力を吸収する事でダンジョン内にいるのと同じ状況を作り出している事で、外で活動するのに支障はなくなっている。
ただ、この状態の維持に意識を割いている部分はあるので、ちょっと集中しきれていないか。
矢による不意の攻撃がきた。
(あ……)
矢を切り落とす為に振った剣に思った以上に力が入っていたようで斬撃を飛ばしてしまい、弓を持っていた腕を手から肩まで縦に斬り割いた。
夜の森に絶叫が響く。
魔法が飛んで来た。
森で炎系の魔法を使うのはやめてほしい、迷惑
魔法を斬り裂く。
「なんだこのゴブリン⁉︎」
ヴェドが驚いている、その傍からビトが飛び出して来る。
体を目掛けての刺突を横に避けての伸びきった腕を斬り落とす為に剣を振り落としたが、魔法障壁に止められる。
やはりなんだかんだで腕がいい。
少し感心していると、目に矢が迫った。
アルの腕が繋がっている。
無理矢理繋げたからか、まだ激痛がある様で脂汗が出ている。
射ったアルもだけど、レイも短時間でそこまで治すのは素直に凄いとおもう。
全員腕は良いんだよな、流石冒険者A級パーティー。
お嬢様は僕を虐めたいだけで死なせたいわけではない、なので僕を入れるパーティーは高ランクが常だ。
矢は魔法障壁で防ぐ。
上に高出力魔法の反応。
高位雷撃魔法か。
認識した瞬間、極太の雷が落ちたが、これも斬り裂いた。
「どうなっているんだ!」
ヴェドが叫ぶ。
「クソが!」
ビトが斬り掛かってきたので、剣で対応する。
レイの強化魔法で筋力も速度も速くなった剣を捌き続ける。
「嘘でしょ……」
はぁ。
やっと決心がついた。
本気で行く。
ビトの腕を肩から斬り落とす。
ヴェドを喉を斬り裂く。
アルの体を袈裟斬りにし。
レイを突き殺そうとした時、ビトに体当たりされそうに距離をとる。
やれたのは二人か。
これで終わらせられると思ったけど、ちょっとまずい。
黒い衝動が。
甚振たい。
嬲りたい。
弄びたい。
痛めつけたい。
嘲笑いたい。
犯したい。
壊した。
冒涜を、辱めを、絶望を。
滅茶苦茶に、ぐちゃぐちゃに——。
ぐっ!
暗い思考が止まらない。
人間を殺す衝動がここまでなんて……。
だけど僕は殺す事を遊びにする気は無い!
殺したい衝動を剣に乗せつつ、一瞬の苦痛で終わらせる。
二人の首を一瞬で断った。
黒い衝動が掻き消える。
荒れた呼吸を整えたかったが、近付く気配があったので、転移でその場を後にした。
「お疲れー」
(ただいま戻りました)
「感想は?」
(最悪ですよ。それより魂は回収出来ました?)
「思ったより質が良くてビックリだよー」
(それは何よりです。それより本当にすいません、僕のせいで早く見つかりそうです)
「気にしなくていいよ、ちゃんと入り口塞げば入れないからー」
前々考えていた構造をダンジョンに適用していく時だ。
(じゃあ、前々から考えていたダンジョンを作っていきましょう)
「なかなか極悪なの考えたから、楽しみにしたまえー」
(期限はどのくらいあると思いますか?)
「一ヶ月は最低あると思うよー。十階層は作れるんじゃないかなー」
まぁそんな感じか。
(それなら今からと言いたいんですが、ちょっと寝てきていいですか? 疲れちゃって)
「どーぞー。アタシは先に進めてるね」
(分かりましたー)
転移した。
ブリードを見送ってから、モンスター情報を呼び出す。
「ちょっと何か変わった様な気がしたけど、まさかこうなるなんてねー」
三つ目のスキル紋が薄らと描かれている。しかし、まだ使えないだろう。
そしてブリードの情報に書き加えられた一文。
其へ至る試練を受けし者。
これは想定外過ぎる。
なにがきっかけ?
そして、どんな内容の試練なのかしら、それをブリードは把握しているのか。
とりあえず、二つとも隠しておく事にしよう。
まだ、誰にも見られる訳にはいかない。




