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と、思ってたんだけどなぁ。
来た瞬間、背後から首を絞められた。
しばらく農作業で頑張って欲しかったんだけどなぁ。
とりあえず、バタバタと力無く暴れてみたが、まあ離さないよね。
はあ、一人は殺めないといけないかな……。
恐怖での支配は好きではないんだけど。
色々思案しながら、相手の出方を伺っているとアセトさんが目の前に来た。
「言葉が分かるんだろ」
無視してジタバトとする。
ぶん殴られた。
「なんか言えよ」
馬鹿だったかー。
思いっきり叫んでやった。
普通に声を出しても不快感を催すのに、不快にさせる為に叫び声を上げれば精神をきたしかねない。
大分苦しめた後に先程よりも力強く殴られた。
「テメェ!」
「アセト駄目だよ。ゴブリンに僕達の様な声は出せない」
「チッ」
「精神干渉、念話」
拒否する。
弾いてやった。
「ゴブリンさん、僕達は建設的な話がしたいだけだよ」
あ、そうですか。
まあ、しょうがない。
精神防御などを施して念話を許可する。
(それで?)
「ダンジョン妖精を裏切らない?」
(あり得ない)
「そうでもないよ。結構いるよ、ダンジョン妖精がダンジョンボスを裏切る所は」
(何が目的か知らないけど、こんな事をやめて、ここでゆっくり暮らそうとは思わないのか? 今なら水に流してもいいですよ)
「その状態でよくそんなこと言えるね」
(そりゃね。僕を殺したらどの道一生此処に住む事になる。それを考えたら殺される事はないし)
忌々しいといった目で見てきた。
エルフの割には短絡的だな。
(ああ、簡単に出られると思ったのに、出られないから焦ったという事ですか。それもここはメインのダンジョンですらない。おかしいですね)
おっふ。
腹にアセトの強烈な一撃が……。
まあ、そんなにダメージは受けないけど。
今度は少年エルフは嗜めもしない。
……そろそろかな。
強力な威圧が現れた。
(主殿、ご無事で御座るか?)
(捕まってるけど大丈夫)
周りの黒エルフ達が息をのむ。
「なんでこんなのがいるんだよ」
(これでも同盟を組んでくれているダンジョンはあるんですよ)
「馬鹿な……」
(それでですね。昨日森に来る人間の目撃例が増えたんで念の為に、僕が一定で連絡を受け取らなければ見に来てくださいと頼んでいたんですよ)
「人質が——」
アセトさんが言い終える前に、僕のを拘束していた者がスヴェルドの咆哮波で崩れた。
後ろを見ると、陶器の様な質感の人形が砕かれていた。
なんか凶悪になってない?
(ともかく、誘いも警告も拒否したんで、強制退場で)
「殺さないのか」
(運が良かったですね、昨日有益な話を聞けたので、そのお礼ですよ)
「臆しただけだろ」
死にたいのかな?
僕は出来なくてもスヴェルドは躊躇いなくやるのが分からないんだろうか。
(ま、もし働き先が無くなったらうちに来ていいですよ。隷属の首輪を持ってきたら雇ってあげますよ)
怒気を感じるが、スヴェルドの殺気で萎んだ。
(送りましょうか?)
「いらん」
見た事が無い魔法陣が展開した。
そして逃げる様に、掻き消えた。
(なかなか良い啖呵で御座ったよ)
(負け惜しみだよー)
(それで、あ奴らはどうするで御座るか?)
(ご主人様に報告して、あと魔界に情報を拡散する)
魔界から帰ってきたご主人様に事の顛末を伝えて、記憶の書を元に魔法紙に全員分の顔を写して魔界に流してもらった。
その時に、ゴブリンに出し抜かれて情けを掛けられた連中と一言添えて貰う。
「上手くいかないねー」
(ですねぇ)
「それはそれとして、ちょっと聞いておきたい事があります」
(……はい)
「人間殺せる?」
即答出来なかった。
「時間はあるから、決めてねー。スキル的には前線に立つタイプじゃないから、いざという時も引き篭もっていいからねー。命運は他に託す事にはなるけどー」
スヴェルドが来なくても自力で助かっていた。
ただ、殺し合いになる事も分かっていた。
そう思った瞬間、手が震えた。
人型のゴブリンは沢山殺した、同類を沢山殺した。
だから人間も殺せると思った、だけど黒エルフを殺す事になると意識したん途端、躊躇ってしまった。
だからの負け惜しみ。
「はぁ……」
あれから何も無かった。
しばらくは人間が探索していた様だが、いなくなった。
僕は彼らが残した種やら何やらをスキル任せで育てている。
スキルを習熟させていくと、そんな気がするから勘、直感へと明確に正解に近付ける様になる。
お陰でよく育ち始めた。
来年からはまともに収穫できるかもしれない、なにせ天候も気候も思いのままに出来るんだから。
ご主人様に頼んでいたゴブリンについてだが、牝は数が少ないが今の様にほぼいないという事はなかった様だ。
どこかの時点で何かがあってもしくはつもり積もって、牝が減滅した。
その時に、一時凌ぎとして異種交配に踏み切ったのだろうと推測される。
だがそれが間違いだった。
余計牝が産まれなくなった。
スキルの発生条件は分からないが、その極まった時に種付スキルが生まれたんだと思う。
そして、理性と知性の崩壊が始まって、今に至る。
今のところ推測出来るのは、こんなところだ。
混血じゃなく純血に戻そうとすると、最短で六世代、ゴブリンでいうと六年で済む。
それで牝が産まれやすく、理性も知性も戻るかというと、戻らないよりの分からないといったところだ。
だが一番の障害は、結局のところ牝の確保となる。
普通のモンスターでは、雌雄もランダムらしい。
結構な数のゴブリン魔法陣を生成しているが、いまだに牝ゴブリンの魔法陣は出ない。
いつまでもダンジョンを閉めておくわけにもいかない、何かペナルティーがある訳ではないそうだけど、流石にご主人様の名誉が地に埋めり込んでしまう。
何かきっかけがあれば、一気にダンジョンとして運営していく事になるだろう。
(主殿)
(どうしました?)
(四人の人間が森の中を彷徨って御座る)
(何かいつもと違うんですか?)
(どうも何者かから追われている様で御座る)
(犯罪者かもしてませんね。まあ、外に誘導してもいいし、そのまま放置でもいいですよ。どこかで餓死すると思います。暇なら追い込みの練習でもしたらどうです?)
(出来れば交戦の許可が欲しいで御座る)
(なんでですか?)
(武装してるからで御座るな)
(武装しているのに逃亡している。こんな奥まで来れる時点で冒険犯罪者、まあ殺しても騒ぎにはならないか)
一応僕の知っている連中なら、情報を与えればイアールンヴィズの狼が遅れをとることも無いか。
(見た目の情報をもらえる?)
スヴェルドから齎された情報を聞いて、今までどこにあったのかという程に、黒い炎が感情を埋め尽くした。
ああ、今日が転換点かもしれない。




