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「ま、正解を言うと、出現地の設定が出来るかどうかなんだよー」
(つまりダンジョン内ならどこに出すか指定出来るけど、ダンジョン外だと出来ないって事ですか?)
「そういう事ー。これに一番魔力を使うんだよ」
(空間を開けるとかじゃなくてですか?)
「それにも使うんだけど、近くならそんなに難しくはないんだよねー。遠距離の指定した場所の空間を弄るんだよ、見えない状態で出来ると思う?」
出来ない、出来るわけが無い。
「それにね。行きたい場所を特定するにしても、例えば目印を付けたとしてもこの広い世界あから探し出せる? 例えば森の端に目印を付けたとしよう。そこに転移したいとなったらまずそこを探す魔法を使わなきゃいけない遠ければ遠い程魔力が必要になるのはわかるよね? 見つけたとしてもその場所の空間とここの空間を繋げる作業なんて精密作業だよ」
想像しただけで気が遠くなる。
「その作業を魔法として組み込んだとしても、作業する為の魔力の量は変わらない」
(それ出来る人間がいる事がほんの少しでもいるのが、おかしいですね)
「だよねー、まあそれが人間式の転移術。で、魔界式なんだけど簡単に言うと魔界を経由させてるんだよー」
ご主人様が二つの透明な玉を魔法で出した。
右の玉に魔法陣を描き、左の玉に同じ魔法陣を描く、また右の玉に魔法陣を描くがそれは違う場所にだ。
「人間界と魔界は繋がっているけど場所が対応してるわけじゃないんだよ。例えば印がなく人間界から魔界に飛んだ場合、裏側に出る事もあり得るんだけど、こうして印を付けておけば同じ印に飛ぶ様になっているんだよ、だから同様に魔界から人間界に飛んだ時はこの印に飛ぶ様になっているんだけど、間違って逆走しない様に一方通行に設定しているのが魔界式」
(これはもしかして転移と言うより召喚ですか?)
「お、冴えてるー」
(でも、今から来るエルフはご主人様が招き寄せるわけじゃないんですよね)
「出来ないわけじゃないんだけどね。エルフとアタシとじゃ魔力の総量が違うから、この場合、アタシが小さい魔力を探して繋げるより大きな魔力に向かって繋げた方が楽なんだよ。魔法陣はある程度自分で探して繋がる様にはしてるけど、流石に明後日の方向だと探すのに魔力を消費しちゃうから」
で、帰らせる時は一方方向を逆にすると。
(じゃあ一旦繋げてしまえばずっと使えますね)
「流石に無理かなー。転移って一瞬しか使わないから魔力が少なくて済んでるけど、維持をしようと思ったら、途方もない魔力が必要だから」
(あー、そうですね。それでも大荷物になっても転移で来れるのは便利ですね)
「それも難しくってねー。結局のところ出発地点の魔法陣を発動させるのは飛ぶ本人だから。エルフの魔力でも人が一人で限界かなぁ。発動してもらえればこっちで維持の補助はするんだけどねー」
(え、じゃあ買って来た物はどうするんです?)
「現実的なやり方は、近くの街で買い込んで、アタシの力がギリギリ届く範囲まで来てもらって、事前に転移の魔法陣を描いておいて、一気に転移させるってやり方になるねー」
まあ、そうするしかないか。
しかし、今日は勉強になったなー。
ふと。
(今更気になったんですが、信用出来るんですか、その人達)
「正直分からないんだけどねー、だから受け入れ地まで来てもらうんじゃなくて、力の及ぶギリギリの範囲で転移させて、正確な位置が分からない様にするの」
(早かれ遅かれじゃないですか、それだと)
「それこそ早かれ遅かれ人間に来てもらわなきゃいけないんだし」
どこまでリスクを取るか、か……。
しかしこうなると、モンスターに子供を産ませることはデメリットが大きいな。
そういうもんかなと準備してたが、路線変更した方がいいかな。
僕が悩んでも仕方がないので、ご主人様に尋ねた。
「まぁ、そういうダンジョン妖精もいるよねー」
あれ、思ったより少数派なんだろうか。
「ゴブリンダンジョンだから、魔法生物だけっていうのも有りなんだけどー。なんていうかプライドがね?」
プライド?
「強いダンジョン程、生物としてのモンスターを配置してるって言ったら分かる?」
そういう事かぁ。
(まあ、そういうの大事ですよね)
「プライドなんて物じゃなくてただの見栄だよね、ごめんね」
(ここはご主人様のダンジョンなんですからご随意に。勿論本当にまずいことがありましたら、ちゃんと止めます)
ただ、ゴブリンにダンジョンだから、子供を得るには人間の女性を連れて来なければいけない。人型なら大抵いけるらしいけど、捕縛のし易さを考えるとどうしてもね。
けれど、なんかしたくないんだよ、どうしてか分かんないけど、人間だったからという理由以外の拒否感が頭を占める。
そうなるとやっぱり他所のゴブリンの魔法陣を使った繁殖がいいんだけど、それはそれで魔法陣劣化が起こるらしいからなぁ。
とりあえず大きな仕事も無いし、ちょっと資料を集めてみるのがいいのかもしれない、お使い行ってくれるのご主人様だけど。
昔のダンジョンの資料は魔界にしかないから、しょうがないんです。
さて、自己弁論をしていると転移の魔法陣が輝いて人影が現れた。
人間的な感覚言えば見た目は三十代半ばの男性黒エルフだ。
褐色肌、オールバック、色気、そして渋みが出始めているが熟し始めだからか逆にそれが若さを引き出している。
うん、カッコいい。
僕では過去と現在どちらにしても辿り着けないだろう。
「ようこそー、呼びかけにー応えてくれて嬉しいよー」
ご主人様が歓迎の言葉を言った。
「こちらこそ、採用して貰いありがとうございます」
礼儀正しい。
「こっちがアタシのダンジョンボス……リドだよー」
一応念の為か、ここから一番近い街は僕が住んでいた街しかないからな関連を疑われる可能性が無いわけではない、とはいえ名前が被った程度だとしか思われないと思うけど。
さて、高い知性が有る様に見せるか馬鹿か、どっちがいいか。
ま、ゴブリンらしくいくか。
ちょっと偉そうに胸を張る。
一瞬だが冷笑された。
「俺の名前はアセトと申します」
アセドはお辞儀をする。
流石に本名では無いだろうな。
「それじゃ、移動しよっか」
ご主人様が魔法を使うと何も無い広い場所に出た。
「どの位必要か分からなかったから、とりあえず近くの街一つ分ぐらいにしてみたけど、どうかなー?」
「どの程度必要か分からないから、なんとも。後から広くは出来るんですよね」
「そうだねー。広くは無理だけど、専用の階層は増やせるかなー」
「水源地はどこにあります?」
「まだ無いよー。水脈自体はあるからご希望の場所に池を作ろうと思ってるのー」
「土壌と土性は?」
「ちょっとそれは分からないけど森の下だからー」
「褐色森林土なら大抵の農作物は大丈夫です。保水力や水捌けやら粘土は要望すればその通りに出来ますよね?」
「やった事はないけど、どうにかなると思うよ」
「将来的には?」
「酪農と、森かなー」
「どうして森を?」
(野生動物放って、ゴブリンの狩りの練習とかしたいんですよ。まあ死ぬのも込みで)
ご主人様にそう言うと、アセトさんに自分が考えたように伝えた。
「はぁ、なるほど。ゴブリンの主になると色々考えないといけないのは、どこも同じですね」
「大変なんだよー」
「確か、食べ物が必要なゴブリンはいないんでしたっけ?」
「そうだよー、まだ先の話だけどいざ欲しくなってからじゃ遅いからー」
「確かにゴブリンは一気に増えますからね」
嫌な目で見てくるなぁ。
まあ、気持ちが分からなくはないのが、また……。
「出入りは自由では出来ないんですよね」
「それはごめんねー。最弱ダンジョンだから、まだ見つかるリスクは冒せないんだー。この場所もダンジョンとは切り離した場所にあるぐらいだから。外に出たい場合は書き留めするかこのリドに言ってねー、定期的に来るから」
「まぁしょうがない」
「で、最終確認だけど、うちに来てくれるー?」
「俺、含めて二十人受け入れてくれるんですよね。とりあえず規模も丁度いいので受けさせて貰います」
良かった、決まったか。
ま、僕とは相容れないのは確かだけど、ご主人様とはとりあえず友好的ならいいか。
何か仕掛けようにもダンジョンからは離れてるし出入り口も無い、池の水源も地中深くからの水脈からだから辿りようも無い、とりあえず大丈夫だろう。
人の増減に関しては気をつけないといけないけど、その都度で対策していくしかないだろう。
たしか、個人の魔力波長で受け入れの判別が出来るんだったっけ。
狼達に頼んで、森の警戒をお願いするか。
そうこう考えている内にアセトは帰って行った。
「一ヶ月後に来るってー」
(来た時の合図はどうやるんです?)
「アタシだけが感知出来る魔力玉持たせたから、転移の魔法陣に来たら分かるようになってる大丈夫だよー」
(じゃあゆっくり待ちましょうか)
「あー……それがねー。メイズちゃんが牝狼増やすからスキル紋の調査よろしくってー」
(それはちょっと待って欲しいと伝えて貰った筈じゃあ)
「いつまでまでか教えてくれたら、その期間待つけどー、それが無いなら待てないって。メイズちゃんも、予想してなかった成長スピードで無期限の余裕は無理っぽい」
(はぁ、しょうがないですね)
「まぁ、ちょくちょく魔界に行く事にはなるからー、その時に資料は探しておくね」
それに気が進まないけど、繁殖の生の情報が手に入るか。
でも、孫が産まれるまで二、三年は掛かるんだったか、取れる情報は少ないなぁ。
それでもしないといけないから、長に頼み込まないとなぁ、許してくれたらいいけど。




