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(そうは言われても、走破加速と空足は確定だろうけど、それだけじゃアイディアも出せないですよ)
(三つ目は反射だそうだ)
反射? 確か一回試して以降使った事が無かった筈だけど。
(どういう使い方を想定してるんですか)
(普通に物理と魔法の攻撃の反射は当然だが、反射をしないという使い方が有ると言っておられた)
(反射しない?)
どういう事だ?
(物が見えるのは反射した光が目に入るからだと)
(いや、反射しなくしても黒くなるだけでしかないから。別に吸収する訳じゃないのは分かっているだろう。それなら透明のスキルの方が良い)
(某もそう思います。聞く限り運用方法は透明の方がしっくりくる内容でしたが、反射でいくのだと)
考え過ぎてバグったか?
おっと、一瞬スヴェルドの目が鋭くなった。
(基本的に遠距離攻撃は捨てるとのこと。全身を黒くする事で行動の入りを分からなくすると)
透明にしろよ、もう。
(何を想定しているか分からない。それならハリネズミみたいに尖らせた方がまだ意味がある)
スヴェルドは何か言いた気だったが、同意見の様で黙って何も言わなかった。
(まあ、もし主殿が反射を上手く使うとしたらどう活用なさいますかな?)
(あー……、そうですね。収納と魔力変換のスキルで運用しますかね)
(ほう)
(運用は簡単、撃たれた魔法を収納スキルで奪う、それを魔力に変換、自身で使う。黒い体は何かを飲み込むスキルと誤解させて反射スキルを隠蔽させる以上)
(大方分かるので御座るが、魔力を自身で使うとは)
(結局のところ、メイズ様の目指しているのは限られた選択肢でどれだけ万能に対応出来るか、ですからそれなら魔法使った方が早いんですよ)
(確かに、それは言われる通りですが。我々が魔法を?)
スヴェルド的には狼は魔法が使えないらしい。
(スヴェルド—— あえて呼び捨てにしますね。スヴェルド、固定観念に囚われすぎです)
(しかし……。魔力すら感じた事がありませぬ)
(貴方が神狼の系譜なのはその体を見ても分かる通りです。が、イアールンヴィズは巨人の魔女の住処です。その子供が魔法が使えないとでも?)
言われてみればといった感じでスヴェルドの動きが止まる。
本当に思ってもみなかったんだろう。
(いや、しかし、それならメイズ様はそれを念頭に入れてスキルを構築する筈では御座らんか?)
(見落としてるんじゃないですか)
(メイズ様に限ってそんな事は。もし知っていたなら今頃その事も含めて悩んでいる筈、つまり、魔法を使った我等をみた事がないからで御座る)
生まれて三日ぐらいの筈なんだけど、メイズ様の理解度が高い。
群れの連中に仕込まれたか。
(じゃあ、一から教えますから、一番最初の魔法使い狼になりますか?)
眉間に皺を寄せて凄く険しい顔で悩み始めたが。
(物は試しでお願い申す)
(じゃあやる前に前提を話します。魔女の子孫というだけでは、心許ないでしょう)
(はい)
(神狼の系譜やら巨人魔女の子孫やらは忘れて下さい)
(なぬ?)
(僕達は魔法生物です。体の半分以上が魔法なんです、自覚して下さい。魔法が魔力を感じられない? ありえません)
(そ、それは……)
(更に言うと、スキルを使える時点で魔力を扱えないなんて事はないんです)
火魔法のスキル紋が描かれた魔法紙を取り出す。
(聞いてると思いますが、これはスキル紋です。スキル紋は体内にないと使えないと言うことはないのは知ってますよね?)
スキル紋に魔力を込めると火が生まれた。
(体内でもスキルを使う時にはスキル紋に無意識で魔力を込めています)
ただ、スキル紋が体内でどの様な状態になっているのかは分かっていないけど。
調べてみたいけど解剖かぁ。
(さてこの前提を踏まえて、これを見て下さい)
魔法陣が描かれた魔法紙を取り出す。
(この魔法陣はスヴェルドの魔法陣です。つまりこれは貴方であり貴方はこれである。その事をちゃんと意識していて下さい)
魔法紙を地面置く。
(スヴェルドがよく使うスキル、走破加速にしておきましょうか。走破加速のスキル紋は右前足に付いていたので、スヴェルド該当の箇所を右前足で踏んで下さい)
言われるがままにスヴェルドは踏む。
(走破加速を発動、徐々に発動を強く)
右前足が光り始めた。
やがてスキル紋が浮かび上がるまでなると、魔法陣に描かれているスキル紋も光り始めた。
共鳴完了。
魔力の共有開始。
(今右前足から何かが出ている感覚がある筈だけだど、それを忘れない様に体に覚えさせて)
スヴェルドは頷く。
(覚えたと思ったら、その感覚を自分の方に伸ばす)
頑張って集中してやっている様だが、どうも手応えが無いらしい。
(じゃあその感覚を伸ばすのを……いやすでに全てのスキル紋に繋がっているとイメージした状態で、空足を発動、次腹話術、その次咆哮波、最後に斬撃付与。全部繋がっている状態をイメージして全部同時に全力で発動!)
これでどうだ!
スヴェルドが雄叫びを上げた。
(ど、どう?)
(なるほど、これが魔力で御座るか)
良かったー、これで駄目だったら大口叩いた手前どうしようかと。
(これ程身近だったのに何故気付かなかったので御座ろう?)
(意思で魔力は動かせる筈だけど、動く?)
(問題無いで御座る)
僕の方でも感じ取れた。
(スヴェルドがどの形式の魔法を覚えるかは自身で決めるとして、メイズ様のダンジョンボスなら、それこそ魔法陣で発動する魔法が良いと思う。見えない様に出来るからね)
(かたじけないで御座る)
(いえどーもー)
(メイズ様が採用するかどうかは別として、群れに教えてみたいと思うで御座る)
(悪くないと思う。魔力を感じ取れるって事は、周りの魔力も感じ取れる様になるから、多少の消耗なら周囲からきゅーしゅう……)
あれ、もしかしてこれは以前話をした——。
(主殿?)
(ん? あーなんでも無いです。もし聞きたいことがあったらいつでも聞いて良いから)
頭に浮かびかけた事を打ち消して棚上げする。
(それにしてもこれは強く成れる気がしますな! 長に勝てる日が来るのが短くなったかもしれんでござるな)
(それはどうだろう?)
間髪入れずに否定した。
いや僕だって否定したくはないんだ。
(あの狼、本当に強いから。なんであんなに強いの?)
(それは某が知りたいで御座るよ)
イアールンヴィズの狼の長、別名赤狼。
どこで学んだっていうくらい高い戦闘技術と能力を持った、今の僕でも全力の短期決戦以外では絶対に勝てないウチのダンジョン最強の狼。
ダンジョンの仕組み上いつかは勝てる様になるが、本当にいつになるだろうか?
まあ、何はともあれ顔合わせは無事に終わって、スヴェルドは帰って行った。
(疲れた……)
数日後、葛藤の末に僕の案が通ったようで、やっとメイズ様のダンジョンボスが誕生した。
報告に来た時メイズ様に盛大に舌打ちをされる。
ちなみに冒険者に発見はされていたが入り口が閉ざされていたメイズ様のダンジョンは、入り口が出来た途端、大量に冒険者が押し寄せたそうだ。
スキル紋十五重ね更に魔法を習得したダンジョンボスと試行錯誤で生まれた数多くの私が考えた最強のスキルの組み合わせの狼達に蹂躙され全滅したそうだ。
成長スピードが半端無く、S級認定されるのもそう遠くはないだろう。
「ブリード」
(なんですか、ご主人様)
「移住してくれる黒エルフ達が見つかったよー」
おかしい亜人から黒エルフまで範囲が狭くなっている。
(いつ頃来る予定なんですか?)
「とりあえず代表が今からだねー」
(今からですか)
「下見にねー。現地を直接見て育てる作物の種を買ってくるんだってさー。他にも生活用品や農具なんかは一度アタシがみれば魔力で幾つでも作り出せるけどー、彼等の食料とかも必要だからね、家とか農地含めて生活環境の希望を聞くためにね」
なるほど、この場所から街までは遠いから、必要な物を買うために往復するのは大変だ。
(じゃあ、その方はどうやってここに?)
「転移魔法を使ってだねー」
人間でも使える人間はいない事はないけど、ほぼ魔界の存在の専売特許なんだよな。
(やっぱりエルフは魔力多いんですね)
「確かに人間よりは多いけど、魔界の者程でないかなー」
(そうかもしれないですけど、転移魔法使える程の魔力は人間でも一人握りでから)
「いや、エルフでも転移魔法使える人は少ないよ、人間に比べて多少多い位? 今からくるエルフも転移出来る魔力は少ないんじゃないかなー」
(大丈夫なんですかその人)
「大丈夫だいじょう。そもそも人間の使う転移魔法と魔界の転移魔法は仕組みが違うからー。実のところ人間式の転移魔法はアタシでも使えないし」
転移魔法って幾つもあったんだ。
「まだ時間はあるし、出迎えの場所で解説してあげよーか?」
(ぜひ)
お願いすると、広大な空間に転移した。
「この転移はブリードも出来るやつだね。ダンジョン内でしか出来ない転移、この転移を使ってダンジョンから外には転移は出来ない、どうしてだか分かるー?」
(僕が転移魔法を使っていると言うより、僕が申請してご主人様が行使して状態ですよね。つまり外はご主人様の影響内にないから出来ないんだと思います)
「そのとーり。やり用はあるんだけど事前準備が必要だね。ただし外に転移させるだけなら出来るんだなー実は」
どういう事だ?
実際は出来ないというよりしない。
この差は……。




