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「ダンジョンが魔王城級になると義体を外に出す事が出来る様になるんだよねー。で、その中には気に入らないダンジョンに英雄や勇者を誘導するダンジョン妖精がいるんだよね。魔王城級ダンジョンなんてそうそうないから、大体の導きの妖精は本物だと思うよ」
本当にそうであって欲しい。
「一番多いパターンは、自身のダンジョンにそれっぽい情報を仕込んでおく事かなー。何処ぞのダンジョンにこの先を進む為のアイテムがあるとか、凄い悪い計画を立てているモンスターがいるみたいな情報を仕込んで、倒せないでも成長を邪魔をする感じだねー」
(それは邪神様に歯向かっている事にはならないんですか?)
「楽しんでるよー。魔王とかなら世界征服をーとかなるんだろうけど、邪神様としては世界とかどーでもいーから。人間に倒されるのも、人間が倒されるのも、ダンジョン妖精の計画の成否もなにもかも、全部娯楽として楽しいんだって」
なんというか、究極の享楽的というか。
「アタシ達の目的は邪神様を愉しませる事とはいえ死にたくはないので、情報漏洩を防ぐ為に、期限無しで当分はその技術はブリードだけに使うことにしまーす」
(わかりました)
「それで、分かっている事は何?」
(はい。スキル紋は何処にでもという訳ではないみたいです)
「そーなの? 魔法陣には六箇所にしか描けなかったスキル紋がびっしりと所構わずと描かれてるけど。ていうか描き過ぎじゃない? 後で描いたスキル紋報告してね」
(それは勿論です。それでですが、分かっている描けない条件は、同じ部所に現れたスキル紋しか受け付けないというのがあります。簡単に説明しますと魔法陣の右腕部分のスキル紋は右腕にしか付着する事が出来ません)
「同じスキル紋でも?」
(はい。同じスキルでも左腕のスキル紋は右腕には付着しません。ただそこさえ守ればこういう風に色々と描く事が出来ます)
「他にはー?」
(単純にスキル紋同士が重なると発動しませんね)
「重ねは?」
(どうなるか分からなかったんで、現状分かっている枚数より多くは重ねていませんが、五重スキル紋を何個も付着しても問題は無いですね。ゴブリンでこうなんで、殆どのモンスターは大丈夫だと思いますよ)
「後付けだから大丈夫って事?」
(多分そうじゃないかと。魔力を通さない限りただの模様でしかないんで)
「取る事は可能?」
(可能ですが、めっちゃ痛いです。この手のひらに付着させた一重なら激痛で済みますが、五重だと気を失いました)
「え、大丈夫そんなに付けてるけど」
(一応選り好みして付けているんで、変える事は無いと信じたい。それに重ねる事に関しては上書き出来るので、そこは心配無いと思います)
「ちょっと破格過ぎない?」
(同意見ですけど、これの発見が偶然の連続じゃないと見つからないので、難易度的にはトントンっていったところじゃないでしょうか)
「トントンかなぁ……」
まぁ、言いたい事は分かる。
でも発見の為の始めの作業が、ダンジョンを造る時に人間の魂を取り込んでおく、というだけでもどんな偶然だと言わざるを得ない。
それからゴブリン含む異種交配出来る種族を当てて、モンスターが元人間だと信じ、魔法陣を見せてくれて—— 僕よりご主人様によるなこの発見。
(流石、ご主人様様です!)
「なに、突然!」
(気にしないでください。それよりも、これからどうします?)
「ダンジョンとして稼働するかどうかっていう事?」
(そうです。僕と狼で戦力は十分です。暫く雑魚を誘き寄せて狩ります? 僕としてはまだ暫くは植物愛でて、ちょっと気になる魔法陣劣化について調べたいんですが。ただ人が寄りつかない地なのも確かなので、同時進行でも支障は無いと思います)
「んー、ちなみに牝ゴブリンの魔法陣以外で欲しい物ある?」
(そうですねー。外への伝手ですね)
「何か欲しいのがあるんならー、魔力で作るけどー」
(植物の種とか欲しいですし、やはり外の状況を知りたいんです。人間を誘い込む役とかも欲しいですね)
それにご主人様が作る物は僕が持っていた物のコピーした物だ、僕が買える様な物なのでイマイチ質が悪い。
植物の種はともかく、それ以外は冒険者が来てくれれば事足りるのだが。
「あー……、ツテがない事はない」
(どういう繋がりです?)
「こう人間に恨みのある亜人って多いんだよねー。で、世界中にいるんだけどすぐ連絡取れる距離じゃないからぁ、魔界を介してコミュニティを作り上げてね。そこで協力者を探すことがあるんだよ」
そんな物が……!
「そこで人手探そうか?」
(いいんですか?)
「どうせ早かれ遅かれだったから、なら早くやるしかね。どんな人材欲しいのー」
(農業出来る人ですね)
「シンプルー」
(でも、こちらから給料的な物は何も出せませんよ?)
「要望は色々だから。地道に探せばいいと思うよ」
(そうですね)
「希望の亜人種とかある? 例えばエルフ、とかー」
エルフ!
「……人間ってエルフ好きだよね」
バカな、ゴブリンの表情が読めるだと……!
「まあいいけど、募集内容はどうするー」
(農業等出来る方希望、報酬は衣食住の提供、ゴブリンダンジョン、で)
「直球過ぎない?」
(下手に隠してもしょうがないですし)
「まぁ、ブリードがそれで良いなら、いいけどー。とりあえずこれで募集掛けてみるねー」
すぐ応募は来ないだろうけど、時間はあるんだ気長に待つ事にしよう。
翌る日、ご主人様は魔界に行ったが、その時にある者を置いて行った。
先日戦ったイアールンヴィズの狼である。
えーと、どうしたら。
(念話が通じるそうで……。えっとどういうご用件で?)
(そんな気はしておりましたが、聞いていませぬか)
狼の事を言えないが、結構流暢な言葉で返って来た。
(長の命令で貴殿の騎狼になりに申した)
(本当に聞いてないっすね。そもそも、時間内に勝てたらという話じゃなかったでしたっけ?)
(その事でござるが、あの時、長からゴブリンの四肢の一本取れぬような未熟者は罰としてゴブリンの騎狼をしていろと仰せつかったので御座います)
あーまぁなんて言うか……。
(なんか、ごめんなさい)
(いや、長の言う事は当然でござる。あの後某も妖精様に回復魔法をかけて頂いたので御座るが、そんな事よりも戦闘に特化した普通のゴブリンを出して貰ったので御座る)
(元気っすね)
(実際、大した怪我は負って御座らんからな)
そういえば僕が出来た事は、腹部浅く斬って鼻先ぶっ叩いただけか。
(とにもかくにも、長が怒った理由が早う知りたくてな、妖精様に頼んで出して貰ったので御座るが、瞬きの内に終わった)
(生まれたばかりだったからじゃないですかね)
(言いたい事は分かりますがな、あれが千倍強くなっても某と引き分けにはなりもうさんよ)
流石に千体いたらって、そういえば殲滅されかけていたか。
雑魚千体と千体分の力が備わった一体では話は異なってくるとはいえ、まあ結果は変わらなかっただろう。
(計り知れぬ力を隠し持っているとはいえ、客観的に見たらゴブリンと引き分け、神狼の系譜としては恥でしか御座らんからな)
まあ、バレてますよねー。
(と言う訳で、一人前になる迄、貴殿の脚になりにまいった。基本的に午前中は稽古を行なっているから、午前に用事がある時は前日に言って貰いたい、午後は自由時間だから念話で呼びかけられたらすぐにまいろう)
(そういう事ならよろしくお願いします。まあ、今はダンジョンの準備期間の更に下準備期間みたいな状態なんで基本自由にして貰って大丈夫です)
(わかった。それでな)
(はい?)
(名前をくれんだろうか)
(何故に?)
(貴殿の直属の部下になったという形式的な証で御座るよ)
(そんなの必要ですか)
(親の名付けでない限り、名前を付けるというのは上から下に行われるもの、つまり言われた通り下に付きましたよという証拠になる)
(あーなるほど、そういう……)
ご主人様との契約の時を思い出す。
真名を付けるというのは魔法的に縛り支配する事というのは分かっていたが、そういう意味合いがあったのか、実際の所はそれだけではないんだろうが、なるほどなぁ。
(まー、そういう事なら、そうですねー。スヴェルドとかどうです?)
(某のスキルからか、分かりやすくて良いな。では某は今からスヴェルドと名乗ろう)
安直過ぎたかと思ったが、気に入ってもらえて良かった。決して社交辞令じゃないと思いたいな。
(で、主殿)
(あ、はい)
(早速相談したい事があるので御座る)
(なんです?)
(メイズ様の事なんだが)
そこはかとない不安があるんだが。
(ドウシタンデス?)
(スキルについて悩んで御座ってな?)
多分ご主人様しかいないのなら悪態ついてた。
スヴェルドの前だからな、必死に堪える、多分殺されるからな!
(まあ、悩むのは選択肢が無数に有るからとは思いますが、ぶっちゃけ、どう熟考を重ねて選んでも後悔は絶対ありますよ?)
(言いたい事は分かるで御座る。だがもうご自身でも何もかも分からなくなってしまったそうだ。だから、第三者の意見を聞きたいと)
(僕じゃなく、ご主人様に聞けば良いのでは?)
(妖精様にこれ以上の貸を作りたくないそうで御座る。それに主殿に聞く事は妖精様に聞く事と実質同じだからと)
ダンジョン妖精とダンジョンボスの関係性的にはそうだけど。
(とにかく期待されて御座ったよ。あの先輩が全幅の信頼を置いているんだから小癪だけど思いもよらぬ発想をしそうだと)
反応に困る評価だ。




