装飾
今まで色が一切なかった空間が、華やかな装飾で彩られていた。
サンタクロースや雪だるまの人形があちこちにある。
クリスマス仕様の装飾らしい。
「ちょっと、そっちじゃないって言ってるでしょっ! あっ、おはよう」
大きなクリスマスツリーの前に置かれた小さな脚立の上で振り向いた釣井に挨拶を返す。
その両手はプレゼント型のオーナメントを摘まんでいる。
やはりこの会社はクリスマスの装飾に相当な気合を入れるらしい。
とは言え、今日から十月であるにも関わらず、ハロウィンをスルーしている事が引っ掛かる。
「クリスマスツリーの頂点は星に決まってんだろ、アホか」
「だぁからぁ、ここはサンタクロースの会社なんだからサンタさんをてっぺんにするって毎年言ってんじゃんっ!」
二人は論争を続行する。
「まぁまぁ」と、参田がなだめるが、微塵も効果がない様子だ。
「汰駆郎君、いい時に来たっ! 汰駆郎君はどっちがいいと思う? サンタクロースの会社なんだから、クリスマスツリーのてっぺんはサンタさんにすべきだよね? ね?」
釣井が突然、圧を掛けてきた。
「いや、まぁ、どっちでも……」
「ほらぁ、汰駆郎君だってサンタさんがてっぺんがいいって言ってんじゃん」
「いや、言ってねぇだろ。どっちでもいいって言い掛けてたろ」
「サンタさんでしょ。サンタさん一択でしょ」
「何で星が正解なのに選択肢にも入ってねぇんだよ。この星のやつ、上んとこに刺す形になってんだろ。むしろ星一択だろ」
「教科書通りのつまんない男だなぁ」
「つまんねぇのはそっちだわ。奇をてらうな。スベッてるぞ」
それから自分の案をプレゼンする二人に、一年周期で交互に変えてみてはと提案すると、長すぎて自分の番じゃない年がもやもやしているのがしんどいと、揃って却下された。
なら一週間周期はどうかという提案は一度は受け入れられたものの、カレンダーをめくった渡仲が、日数に差があるのを発見した。
それぐらいいいだろ。どこで協調性を発揮してんだよ。
そう思った時、参田が「じゃあ、じゃんけんしてみたら?」と提案した。
「じゃんけんするまでもねぇって。そこは普通に星だろ」
「いや、絶対サンタさんでしょ」
振り出しに戻ってしまった。
一日おきに変えるのはどうかと提案すると、面倒だと二人は再び口を揃えた。
それはこちらの台詞だ。
クリスマスツリーの頂点に刺した星のオーナメントにサンタクロースのそれを引っ掛けてはと、溜息を押し殺しながら提案した。
すると二人は目を丸くさせながら、「その手があったかっ!」と、 口を揃えた。
どちらを頂点にするかという点以外では意見が合うらしい。
「汰駆郎君、天才?」
「星ってその為にあの形だったじゃねぇか」
何故、二人はこんなにも単純な思い付かなかったのだろう。
例年はどうしていたのだろう。




