戦士
「ちょっと、質問してもいいかな」
名前を教えてくれるという事は、彼はきっと、警戒心が強いのではなく、コミュニケーション能力が著しく乏しいのだろう。
病気など、何かしらの事情で声を出すのが難しいのかもしれないと思ったが、少年のデータを見ると、その様な情報はなかった。
ただの人見知りなのだろうか。
だとすると、相当なレベルなのではないだろうか。
この少年はクリア出来るのだろうか。
「あのさ」
一つ目の質問しようとすると、少年はランドセルを抱えて半歩下がった。
その右手が握り締めているのは、防犯ブザー。
警戒しているらしい。
ただコミュニケーション能力が乏しいだけではなかったのか。
そのダブルパンチとなると、今回の相手はなかなか手強そうだ。
「サンタクロースって」と発したと同時に、少年はまた半歩離れた。
子供が即座に食い付きそうな単語をもってしても警戒されるらしい。
「どんな人だと思う?」
スマホのタイマーを作動させた。
引きつった表情を浮かべた少年は「あっ……、えっ……」と、声にならない声を出す。
それからしばらく沈黙が続いた。
「ほら、サンタさんだよ、サンタさん。クリスマスにさ、プレゼントくれる人。知ってるだろ? サンタさんって、どんな人だと思う?」
少年は句読点の度に半歩下がる。
「あっ、えっと……」
その目は潤んでいる。
少年は更に二、三歩下がった。
確かに見ず知らずの大人が突然、サンタクロースのイメージ像を訊くのは余りにもトリッキーだが、それにしても警戒心が強過ぎるのではないだろうか。
画面上の制限時間が削られていく。
防犯ブザーの反対側に、フィギュアがぶら下がっている。
頭についた、〝日〟の文字。
〝日替わり戦士 シフトマン〟の、〝サンデーレッド〟だ。
これだ。これしかない。
「それ、〝サンデーレッド〟だよね?」
「えっ!」
少年は、目を見開いた。
「おじさん、〝シフトマン〟好きなの?」
「うん、好きだよ」
〝おじさん〟が頭の中で引っ掛かりながらも、そう返す。
「おじさんも〝サンデーレッド〟が一番好きなの?」
「そうだよ、一緒だね」
「〝サンデーレッド〟が風邪引いて〝サタデーブルー〟が代わりに怪人を倒した回は神回だよね!」
「〝サタデーブルー〟が来てくれて良かったよね」
「〝困った時はお互い様。いつでも休日出勤してやっから。俺が風邪引いた時は、お前が二連勤しろよな〟って言ってたの痺れたよね」
「カッコ良かったね」
「おじさん、好きな怪人っている?」
作戦が上手くいったらしいが、想定を上回る反応だ。
好きな怪人……。




