異星
「よし、じゃあ、質問コーナー! お二人に何か訊きたい事がある人っ!」
仕切り始めた宝井は勢い良く挙手するが、それに倣う子供はいない。
「何でもいいよ。お兄さん達に訊いてごらん」
石神がそう言うが、結果は同じだ。
何でもいいと勝手に判断された。
「じゃあ、私から」
結局、言い出しっぺの宝井が先陣を切る事にしたらしい。
「お二人の好きな授業は何でしたかっ!」
一つ目の質問がそれなのか。
「うーん、まぁ、体育っすね」
だろうな。
「えっと、国語が好きでした」
一応答えると、宝井と石神はオウム返しする
絶対に興味ないだろ。
「じゃあ、はい」
石神が挙手した。
「お二人の、好きな季節は何ですか」
本当に知りたいのだろうか
二人共、インタビュアーのセンスが皆無だ。
「夏っすね」
だろうな。
毎年、ナンパ目的で海に行っているに違いない。
「僕は秋ですかね」
仕方なく答える。
「じゃあ、春が一番好きな人っ!」
宝井と三人の子供が挙手する。
「じゃあ、夏が一番好きな人っ! はーい」
「はーい」
宝井と石神、そして残りの子供全員が挙手した。
「夏はいいよねぇー」
残る二つの季節について訊くまでもなくなり、宝井がアンケートを締め括った。
「俺さ、実は宇宙人なんだよね」
渡仲がまた何やら言い出した。
「目からビーム出せんだぞ」
「目からビームだってぇ」
職員二人と子供達は笑う。
「博士に改造してもらったかんな」
宇宙人特有の能力ではないのか。
「見たーい」
子供達がはしゃぐ。
「悪いけど、医者に止められてて出来ねぇんだよ。前にやり過ぎて胃潰瘍やっちゃって」
何で胃に来るんだよ。
あと、子供に胃潰瘍は伝わらないだろ。
案の定、職員二人しか笑っていない。
「あと、足すげぇ速いかんな。学校でさ、俺だけ宇宙人だったから陸上の大会で無双してたかんな」
〝足が速い〟より〝瞬間移動が出来る〟方が宇宙人感があると思うが、それを口外するのはご法度という掟を守る為、事実より現実的な設定にしているのだろうか。
「もうホント、アスリート並だぞ」
宇宙人の設定なら地球人の記録は超えろよ。
それから渡仲は、マグマに落ちても死なないやら、ヒグマとタイマンして瞬殺したやら、ホラを吹いていく。
宇宙人の設定として合っているのかよく分からないそれ等は、子供達からウケたりスベッたりしている。
「お二人の好きな食べ物は何ですか?」
石神は渡仲のホラ話に飽きたのか、空気を戻す。
「カレーっすね」
質問を大喜利のお題と捉えてボケるといった事はしないらしい。
このチャンスを生かさなくていいのだろうか。
「僕はラーメンですかね」
仕方なく答える。
「私はオムライスでーす」
宝井は手を挙げる。
「私はメロンが好きでーす」
同様に手を挙げて言った石神は、子供達に訊いていく。
「お二人は学生時代とか、何かスポーツはやられてたんですか?」
宝井が質問した。
「自分は中学の頃からサッカーやってたっすね」
恐らく、女子からモテそうなどという不純な動機で始めたのだろう。
「僕は……」
「あっ! そうだっ!」
宝井は質問しておいて突然の大声で話を折った。
「お二人に厨房の紹介するの忘れてたぁ!」
渡仲の口から〝中学〟という言葉が出たのがきっかけで中学生は〝中坊〟と呼ぶという連想が生まれ、そこから厨房を思い出したのだろうか。
「厨房は隣の部屋なんです。どうぞ、こちらに。皆も来る? 普段は入れないけど、せっかくだから一緒に見てみよっか」
それから、宝井の案内で子供達と一緒に移動した。
「ここで職員が交代で子供達の食事を作るんです」
宝井はそう言いながら開錠したドアを開けた。
どうって事のない古びた銀色の光景が広がる。
「ま、こんな感じです」
所詮ただの厨房である故、解説する事も特にないらしい。
もったいぶって見せられた側としてもリアクションに困る。
見た事のない場所に恐らく少しそわそわしていたであろう子供達も、期待外れだと言う様に退屈そうだ。
「もうこんな時間か」
渡仲は冷蔵庫のそばに掛かった時計を見て言った。
「じゃあ、もうそろ帰ろっかな」
それから、職員と子供達に玄関まで見送られた。
「お二人、今日はありがとうございました。皆も」
宝井に促された子供達も礼を言う。
「おう、じゃあな」
渡仲は子供達一人一人とグータッチを交わす。
渾名やホラ吹きにも何かしらの目的があるのかもしれないと少し過ったが、やはり無意味な時間だったらしい。
「あらっ! いけないっ! 私今日、夕食作る番だっ!」
宝井が突然大声を出す。
「あっ! そうでしたそうでしたっ! 夕食作る時間ですねっ!」
石神も同様に目を見開く。
何故、二人共厨房を見た際に思い出さなかったのだろう。




