宝石
「あっ、子供達、帰って来たみたいですね」
玄関へ向かう宝井に倣う。
「あっ、こんにちはぁ」
数えると八人いた小学校低学年程の子供達を引率していたらしい、小太りの女性職員が頭を下げ、僕と渡仲は挨拶を返す。
「あっ、サングラスの人だぁ」
「でも、スーちゃんじゃないね」
釣井は子供達から渾名で呼ばれる関係性を築いているらしい。
「〝子供達をボランティアし隊〟の皆さんですか?」
「そうっす。職員って他にもいるんすか?」
渡仲は返答のついでの様に質問した。
今、ここにいる職員がタイプではなかったらしい。
「えっと、あと三人います。今日は私達二人ですけど」
職員は少し訝しげな表情で言った。
「小さい施設なんでね」
宝井が微笑む。
「あと三人ってどんな」
「あの、来間と申します」
渡仲が何やら余計な事を言おうとしているのを、自己紹介でかき消した。
「イシガミと申します」
女の職員は言った。
自己紹介の流れを作る事が出来た。
「イシガミさんって、あれっすか。〝石〟に神様の〝神〟っすか」
「はい、そうです」
流れを変える事に成功したらしいが、その確認は必要なのだろうか。
お前も名乗れよ。
「じゃあ、〝ジュエリーコンビ〟っすね」
「えっ……?」
「ジュエ……、はい?」
二人の職員も、ぽかんとしている。
一体この男は何を言っているんだ。
「宝井さんの〝宝〟と、石神さんの〝石〟で、〝宝石〟になるでしょ? だから、〝ジュエリーコンビ〟っすよ」
ずっと何を言っているんだ、この男は。
初対面にこんな事を言うなんて、どうかしている。
同類と思われたくない。
「あっ、ホントだぁ。〝ジュエリーコンビ〟ですねぇ」
「確かにぃ! 気付かなかったっ!」
二人の職員は感激する。
「ねぇねぇ! スーちゃんはいないのー?」
「おう、いねぇよ」
渡仲が応えると子供達は、「えー!」と、口を揃えた。
釣井はなかなかの人気者らしい。
「まあ、そう言わないの。せっかく来てくれたんだからね」
子供達にそう言った宝井は、「ごめんなさいね」と僕と渡仲に詫びた。
その一言が余計に辛い。
「スーちゃんは、ウルトラマンを倒しに行ったから、今日はいねぇよ」
渡仲の言葉に子供達は大笑いする。
何でウルトラマンの敵なんだよ。
「あの、今日は何をして頂けるんですか?」
石神と名乗った職員が尋ねてきたが、それは絶対に僕の方が知りたいと思っているに違いない。
一体、自分はこれから、何をやらされるのだろうか。
どんなボランティアをさせられるのだろうか。
渡仲が何と答えるのか、少し緊張が走る。




