紹介
自動ドアが開く。
前方の白い壁には、〝ウェルカム トゥ ピースマイリース〟という文字がかたどられた様々な色の画用紙がアーチ状に貼られている。
余程、気に入った名前らしい。
僕と渡仲は、宝井がロッカーの横にあるラックから外して床に置いたスリッパを履く。
「子供達はもう少しでお散歩から帰って来る筈ですから、施設の中をご案内しますね。まず、こちらが事務室です」
宝井はすぐ横にある、数台のデスクとパソコンが並んだ硝子張りの部屋を紹介する。
自分達の事務室よりこじんまりとしているそこには、誰もいないらしい。
「こちらが食堂です」
子供達の作品らしい、クレヨンで描かれた絵の数々が挟む廊下を歩くと、コルクボードが吊り下げられたドアがあった。
〝ピースマイリースしょくどう〟という文字がかたどられた様々な色のフェルトが貼られている。
余程、気に入った名前らしい。
宝井がドアを開くと、テーブルと椅子が並んでいた。
「ここで、皆が食事をします」
そりゃ、そうだ。
「皆はよく、食事時じゃなくてもここに集まってテレビを観てるんです」
宝井は壁から見下ろす様に設置されているテレビを指して言った。
「テレビはそれぞれのお部屋にもあるんですけど、アニメとかだと、皆一緒に大きい画面で観た方が楽しいみたいで。あと、ここで身長を測ったりもします」
宝井は壁に貼られた、首に目盛りが書かれているキリンのイラストと並びながら言った。
「じゃあ、次、行きましょうか。あっ、これが、献立表です。今日の夜ご飯は何だったかな。あっ、皆大好きカレーですね」
ドアに貼られた紙を見せられ、返答に困っていると、「カレーは人気っすもんねぇ」と、渡仲が合いの手を入れた。
「そうですよね。皆、カレーの時は大喜びなんです。こちらが、お風呂場です」
宝井は向かいにある擦り硝子のドアを紹介した。
それから彼女に倣って、折り紙で作られたものや、施設内での決まり事が書かれているらしい紙が貼られた廊下を歩く。
「ここが、皆で読書するスペースです」
絵本や図鑑が敷き詰められているらしい本棚と、三台のベンチ。
ブラインドの隙間から差し込む光が、桟に立つ小さな黒板にチョークで書かれた、〝ピースマイリースとしょかん〟という文字を照らしている。
余程、気に入った名前らしい。
「そして、ここから先が、子供達のお部屋です」
平仮名の名前が刻まれた木製のプレートが吊り下げられた引き戸の並びに挟まれた廊下を、きょろきょろしながら歩く渡仲が視界に入った。
女性職員を探しているのだろうか。
その時、自動ドアが開く音がした。
子供の声が聞こえる。
騒がしいそれ等が近付く。




