目撃
小学校の玄関から現れた、赤色の光を放つ少年を追う。
二年連続のギフター候補らしい彼には、親からDVを受けているというデータがある。
過去にプレゼントした子供には質問せず、サングラスが合格判定した時点でギフター確定だと、釣井が言っていた。
偵察を始めて数ヶ月になるが、このケースは初めてだ。
ギフターとはそれ程、狭き門らしい。
少年の纏う赤い光が、ぱっと消えた。
これは不合格のサイン。
初めて見る光景だ。
何故AIは、この少年がギフターに相応しくないと判断したのだろう。
サングラスを外した自分は気付くと、尾行を再開していた。
石を蹴りながら歩いているらしい。
現時点で、特に変わった様子はない。
去年は合格だった彼が、今年はギフターに相応しくないとはどういう事なのだろう。
この胡散臭いサングラスの誤作動である可能性はある。
もしそうだとしても、そうじゃないとしても、どうすれば良いのかは分からないが、とりあえず尾行してみる。
十分程歩いた頃、少年は古びた小さな本屋の前で止まった。
そして、ふと看板を見上げたそれに入った。
急いで後を追う。
少し店内を見渡すと、図鑑のコーナーをうろつく少年の姿を見付けた。
棚越しに後ろ姿を見張る。
数ページ捲った図鑑を棚に戻した少年はその場を離れた。
平積みされた漫画を見下ろしながら、店内を流れる様にうろつく。
すると、文房具のコーナーに落ち着いた。
下から上へと陳列棚を眺めていった少年は、ケースに数本入った鉛筆を手に取った。
きょろきょろと、周りを見渡している。
鉛筆を持つ手は、ズボンのポケットに向かう。
僕の足は動き出した。
手に隠した鉛筆のケースが、ズボンの入り口に引っ掛かる。
気付くと自分の手は、少年の腕を掴んでいた。
少年は目を見開く。
万引きを目の当たりにするとこんな行動を取るらしい自分に、驚いた。
どうしよう。
どうすればいいのだろう。
自分は説教でもするのだろうか。
少年はひどく怯えた表情だ。
そして、その目は次第に潤んでいく。
左手に移した鉛筆のケースを棚に放り投げた少年は、今にも泣き出しそうなまま首を振る。
自らの罪を否定する様に。
親には言わないでくれと、懇願する様に。
どうすれば良いか分からないまま、思わず手が少年の腕から離れた。
彼は素早く背中を向け、その場を離れた。
「あっ、ちょっ」
思わず声が出た。
だが、少年は一瞥もくれないまま、店を出た。
その姿を、追う。
引き止めらたところでどうすれば良いか分からないが、足を走らせる。




