過剰
十四時を回って間もなく、最後の段ボール箱は底が見え始めた。
深い息を吐く。
釣井の指示で装飾を施していく。
すると段ボール箱の中身は、大きな星型のオブジェがいくつかあるのみとなった。
残り四つになったそれ等を釣井が一人一人に渡す。
段ボール箱の中身が、空になった。
あとは、それぞれが持つこのオブジェのみ。
深い息を吐く。
釣井はオブジェを置くと、三人が持つそれ等の置き場を指示した。
意外にも渡仲が真っ先に従う。
余計な事を言って長引かせないでくれよと念じた思いが叶い、安堵する。
彼も早く切り上げたかったのだろうか。
「ちょっとヤニ吸ってくるわ」
そういう事だったのか。
「駄目だよ、ちょっと待って。皆でフィナーレを迎えるんだから」
釣井が止める。
「無理」
「もうこれ置くだけだから」
「いや、もう無理無理」
「三秒で終わるから」
「ヤニ吸えない三秒は五時間だぞ」
「そんな訳ないでしょ」
「ヤニ吸えない辛さ知らねぇだろ、お前。吸ってくるわ」
「ちょっと待ってって」
更に事態が面倒になる前に、僕はオブジェを指定の場所に置き、参田もそれに倣った。
「はいっ! これにて、クリスマスの飾り付け、終了ー! 皆、お疲れぇー! いよーっ!」
「はい終わり終わりー」
「ちょっと」
渡仲は一本締めでも始めようとしていたらしい釣井に耳を傾けないまま、そそくさと事務室を後にした。
「ったく、あいつは」
ようやく、終わった。
椅子に体を落とし、行きを吐く。
心身共に疲労困憊だ。
クリスマス仕様に生まれ変わった事務室を、改めて見渡す。
どう見ても、やり過ぎだ。
どう考えても、やり過ぎだ。
この狭い空間に、尋常じゃない主張。
キリスト教徒が見ても、サンタクロースの本場であるフィンランドの国民が見ても、満場一致でやり過ぎだろと言うに決まってる。
上下。前後。左右。どこを見ても、クリスマスだ。
これから約三ヶ月もの間、こんなにも窮屈な空間で仕事をしなくてはならないのか。
疲れと呆れが混ざった深い息が出る。
サンタクロース。トナカイ。星型。雪だるま。
どこを見ても、クリスマスが溢れ返っている。
クリスマス。
クリスマス。
クリスマス。
こんなにも早くクリスマスの要素を取り入れているのは、ここぐらいだろう。
こんなにも濃いクリスマス色を出している職場は、この会社ぐらいだろう。
毎年、秋からの三ヶ月間はこうなのか。
恐らく、キリストがこの空間を見ても、やり過ぎだと言うだろう。
サンタクロースが実在するとすれば、彼も同様の感想を抱いていだだろう。
パソコンの画面にふと目をやると、それには引きつった表情の自分が映っていた。
我に返り、口角を戻す。




