決着
段ボール箱のオーナメントにうんざりする。
もうこの時点で雑貨屋同然なのに、まだこんなにも残っているのか。
煉瓦の壁紙を指定の場所に貼り終えると、今度は紐が付いた星型と雪の結晶型のオーナメントを天井に吊るす様、命じられた。
靴を脱いでデスクに上がり、実行すると、早速駄目出しを喰らった。
距離が近い。
長さが同じのが隣だとダサい。
星と雪の結晶が交互になる様に。
何度も修正させられ、ようやくオッケーが出た。
それから下された指令は、木からできたサンタクロースとトナカイのオブジェを床に並べる。
どんどん足の踏み場が狭まれていく。
段ボール箱はまだ、子供のおもちゃ箱状態だ。
一体、この空間には何体のサンタクロースとトナカイが存在しているのだろう。
「音楽聴こうぜ」
「うん、聴こう」
「韓国は聴かねぇぞ」
「韓国いいじゃん。日韓の繋がりなめんな」
「レゲエ聴くぞ、レゲエ」
「嫌だよ、レゲエなんか」
「カッコいいだろ、レゲエ」
「もう致死量のレゲエ浴びたし」
「今レゲエがキテんだよ。もともとすごかったけど。時代はレゲエだぞ」
「聞いた事ないし。レゲエの時代なら一生時代遅れでいいわ」
「何で分かんねぇかな、レゲエの魅力が」
「レゲエなんてずっと低空飛行でしょ」
「低空飛行じゃねぇわ。むしろずっと大気圏だわ。レゲエ聴かねぇ人生なんて六割損してるぞ」
「レゲエでそんな人生左右されないし、好きじゃなくて聴いてないんだから損してないでしょ」
「レゲエ聴く様になったら人生変わるぞ、マジで」
「レゲエにそんなパワースポットみたいな効果ないでしょ。KーPOPこそ人生変わるし。聴くパワースポットだよ。人生七割損してるよ」
「そんな効果ねぇよ、韓国にぃ」
渡仲はスマホで音楽を流し始めた。
「やめてっ! レゲエはもう嫌だっ!」
釣井が音楽を止めた。
「あーあっ!」
「レゲエは何か、イライラするから嫌だっ!」
「何でだよっ! コーンロウでも食ってろよ」
「揚げ足取んないでよ」
「コーンロウ食い女め」
「人をそんな妖怪みたいに、って、ちょっとっ!」
釣井は渡仲が並べたサンタクロースを見て大声を出した。
「何でサンタさんだけなのっ!」
「トナカイ向こう」
渡仲はサンタクロースの列に向かい合うトナカイの列を指差した。
「サンタさんとトナカイは交互にしてっていっつも言ってるでしょ、ペアになるようにってぇ」
「こうやって分けた方がいいっていっつも言ってるだろ、サンタチーム、トナカイチームってぇ」
また始まったか。
「先生はどう思う?」
「え、私?」
壁に雪だるまのオーナメントを飾る参田は、釣井の方に振り向く。
「んー、私は、じゃあ、スーちゃんの方で」
「いぇーい!」
「先生、スズに甘過ぎるだろっ! 大して見ないで言っただろっ!」
「あはっ、バレた?」
「認めんのかよ」
「じゃあ、汰駆郎君は?」
僕にもパスが来た。
不毛な議論に決着をつける為、「ペアにした方がいいかと」と、釣井に投票した。
「おい、汰駆郎っ! 師匠だぞ、俺はっ!」
「偉い偉いっ! 偉いぞ、汰駆郎君っ!」
釣井に頭を撫でられる。
「畜生……」
渡仲はぶつくさと文句を言いながらも、サンタクロースとトナカイを交互に並べ直す。
これは多数決で済む案件らしい。
参田の一票が大きかったのだろうか。




