再開
注文して二十分程が経った。
釣井は椅子の背もたれに体を預け、渡仲はデスクに突っ伏した状態で、それぞれ液体の様にだらけている。
「はぁ~らへったぁ~」
「早く言ってよね、先生」
「ホントごめんねぇ。先にお弁当、食べててもいいよ」
「じゃあ、そんなに言うなら」
「そんなに言ってねぇよ。お言葉に甘えんの早過ぎだろ」
釣井は渡仲の声などお構いなしに、弁当箱の蓋を開ける。
「おい、ズルいぞ」
釣井の口には玉子焼きが運ばれていく。
「んー、美味しぇー」
「腹立つわぁー」
釣井は絵文字の様な笑顔で、おかずを頬張っていく。
その時、インターホンが鳴った。
元気良く返事をした渡仲は「先生いいから」と、立ち上がろうとする参田を止め、玄関に向かった。
「汰駆郎君、タコさんウィンナーあーげる」
釣井は、オレンジ色のピックに刺さったウィンナーを僕に近付ける。
ケンタッキーが到着してから空腹を抑える必要はない。
断ったが、半ば強引に渡された。
「畜生、男だった」
渡仲は両手にビニール袋を持って戻って来た。
「何、期待してんのさ」
自分が品物を受け取りに行ったのは、参田を敬っていた訳ではなかったらしい。
渡仲がそれぞれのデスクにチキンなどを置いていく。
「じゃあ、手を合わせて、頂きまぁーす」
釣井が号令を掛けると、渡仲は「早弁した奴が仕切んなよ」と吐き捨てながらビニール袋から箱を取り出す。
それから二人は、チキンに感激する。
「何だか久し振りだよね、こういうの」
そう言ってストローを口に運んだ参田は、「おっと」と、目を丸くさせた。
「ぴりっと来るねぇ」
「あれ、先生って炭酸苦手じゃなかったっけ?」
「マジで? 先生、炭酸飲めなかったのかよ」
「ううん、平気だよ」
参田は再びコーラを少し含んだ口を〝へ〟の字にさせた。
「もう、絶対苦手じゃん」
「大丈夫だよ」
「先生の、コーヒーにしてあげれば良かったじゃん」
「コーヒーもあったんだね。でも大丈夫だよ。似た様なもんだから」
「いや、全然違うから。共通点、黒いだけでしょ。コーヒー買ってこようか?」
「ううん、大丈夫だよ。ありがとね」
それから釣井と渡仲が、芸能人同士の熱愛報道や、女優の整形疑惑で盛り上がっていると、時刻は十三時を回った。
「よーし! 午後の部、気合い入れていくよー!」
号令が掛かった。
段ボール箱にはまだ、沢山のオーナメントが詰まっている。
溜め息を押し殺す。
窓際にサンタクロースのオブジェで列を作る釣井に、渡仲と二人で壁に複数のリースを並べる様に命じられた。
もう少し高い所に。
ここと高さが違う。
もう少し右に。
十数分、何度もやり直しが掛かり、ようやくオッケーが出た。
渡仲は舌打ちをし、溜め息をついた。
「あれ? 何か今、聞こえたよ? せっかく可愛い飾り付けなんだから、楽しくやんなきゃ! ね、先生!」
「ん? うん、そうだね」
「疲れたわ、俺」
「まだ午後の部、始まったばっかだよ。あっ、これ忘れてたっ!」
事務室の隅に置かれた筒状の物を見付けた釣井は、それを手に取って広げた。
煉瓦の壁紙らしい。
「おいっ!」
「ごめーんっ!」




