『同じ色の傘』 内集団バイアス
『同じ色の傘』
雨の日、学校の傘立てには、赤と青の傘が並んでいた。
この学校では、赤組と青組に分かれて、毎月さまざまな競争をしていた。
僕は赤組だった。
赤組の仲間がテストで百点を取れば、自分のことのように嬉しかった。反対に、青組の誰かが百点を取っても、たいして興味はなかった。
ある日、廊下で花瓶が割れた。
近くにいたのは、赤組の健太と青組の翔太だった。
「翔太がやったんじゃない?」
僕はそう言った。
理由はなかった。ただ、健太がそんなことをするとは思えなかった。
先生が二人に尋ねると、健太は黙り込み、翔太は「僕じゃありません」と答えた。
僕はその言葉を聞いて、ますます翔太が怪しいと思った。
翌日、健太が僕に打ち明けた。
「花瓶、割ったの、俺なんだ」
僕は驚いた。
「でも、わざとじゃないんだろ?」
「うん」
「だったら仕方ないよ」
そう答えた瞬間、僕は気づいた。
もし翔太が同じことを言ったら、僕は「わざとじゃなくても謝るべきだ」と言っただろう。
健太は僕の顔を見て言った。
「お前、俺が赤組だから信じてくれたんだろ?」
僕は何も答えられなかった。
放課後、雨が降っていた。
傘立てを見ると、赤い傘も青い傘も、同じように濡れていた。
僕は初めて思った。
色が違うだけで、どうして人まで違って見えてしまうのだろう。
翌朝、僕は翔太に謝った。
翔太は少し驚いた顔をして、それから笑った。
「別にいいよ。でも、次はちゃんと見てから決めてね」
その言葉は、思っていたよりも胸に刺さった。
僕は赤組が好きだ。
きっと、これからも好きだろう。
でも、赤組が好きなことと、青組を疑うことは、同じではない。
その違いを、僕はようやく知った。
### この小説に表れている「内集団バイアス」
内集団バイアスとは、自分が所属する集団の人を、ほかの集団の人よりも好意的に評価したり、優遇したりする心理的傾向のことです。
この物語では、主人公が同じ赤組の健太を根拠なく信じ、青組の翔太を疑う場面に表れています。また、健太の失敗だけを寛大に許そうとする点にも表れています。




