29/34
過去からの依頼人(その29)
エリーの真剣な表情を制するようにミツオは口をはさむ。
「その前に一つ確認したいことがある」
エリーはミツオの肩をつかんで佳央里に背をむける。内緒の話をするようにミツオの耳元でにささやく。
「大事なことなんです」
顔をのぞき込むエリーに、ミツオは何度か静かに頷いた。
「君の言おうとしていることはなんとなく分かっている。でもこの場で言う前に調べたい事がある」
エリーの肩に静かに手を添えてミツオは佳央里に向き直る。
「お父さんの書斎でその日記を見つけたとさっき言っていたが、俺たちにも書斎を見せてもらってもいいか」
「どうぞ」
佳央里はミツオには心を許してはいない。父の言葉に支配されていた。だが、そんなことよりも父を殺した犯人をみつけるために共闘することが大事だと思った。
一度廊下に出た後、書斎の扉を開ける。おそらく、手つかずのままの状態なのだろう。カビの匂いとホコリの匂いが空間を支配している。だが、几帳面な性格を体現している室内だった。やはり極端に物はなかった。テーブル、イス、数冊の本と本棚があるだけだった。




