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過去からの依頼人(その22)
ミツオは愛車に乗り込み走り出した。空は飛ばない。地面を四本のタイヤで走る昭和の名車ブル。
ミツオは手をせわしなく回して窓ガラスを開けた。押し込んだシガーソケットが元に戻り、引き抜いたそれはミツオの顔を赤く照らす。ギヤを操作しながら器用にタバコに火をつける。
「教えてくれないか、誰なのか」
エリーの思考が一区切り着いたような視線をミツオは感じたので満を持して聞く。
「相手も私のハッキングの足跡をたぐっています。しかも今、コンタクトしてきています」
ミツオの口角が上がる。
「おもしろいじゃないか。話してみよう」
ミツオはブルを路肩に停車させる。薄暗い車内は霧雨の降り注ぐ静かな音と、ワイパーの気の抜けた音が支配する。
エリーが準備できましたとつぶやく。
相手がカメラの前に置いた物が立体映像として車内に浮かび上がる。それは写真だった。今よりも少し若いミツオと安藤刑事が映っている。ミツオは黙ってその写真を眺めている。
「安藤刑事はお前に恨みがあったそうだ」
野太い声でそう話し出した相手の声は、おそらくボイスチェンジされた合成の声だろう。
「お前はだれだ」
ミツオは会話を無視して話し出す。




