過去からの依頼人(その14)
山口は空中に現れた本をめくる。ブックと呼ばれるデータの集まりだ。「あった、クリスマスのあの夜のデータです。展開します」
山口がそう告げた直後、部屋の中いっぱいに、地上から見上げた列車、ホーム、夜空、雨、停止した地上の雑踏が現れた。
「たしか、この列車に引っ張られる形で箱形のドローンがいたのですね」
ミツオは興味深くうなずいた。
山口が手を振った方向に画角がずれていく。指示に沿う機械側の表示は、表面に無いものを探るように、荒いドットから鮮明な画像に刻々と変化していく。
「これだ」
そこにはたしかに箱形のドローンが映っていた。
「うっすらと箱の底に文字列が見えませんか」
エリーのつぶやきに山口が即座に反応した。
「たしかに、なにか光っている。地上からは見えないぐらいの光り方だ。画像処理を施すと読めるかもしれない。当時警察はこの事実をつかんでいましたか」
山口の指先が動くと、室内も一斉に明るくなった。ミツオは前のめりになり、ドローンの底面を観察しながら答える。
「ドローンはこのあと、列車に衝突して地上に落下する。そして燃えた。底面が光っていたかもしれないとは
想像していたが、何が光っていたかは分からなかった」
山口は擁護するように言葉を発した。
「でも、この光り方では地上からはおろか、すぐそばまで寄っても読めはしなかったでしょう。さあ、これでどうでしょう」
山口が別画面に底面を写し出した。 一同は唖然とした。
日本語でもなく、何の言語でもない数字の羅列だった。




