過去からの依頼人(その13)
佳央里が通信を許可すると、ライブ配信が一方的に流れてきた。どうやら山口がカメラをオンにして佳央里に映像をリアルタイムで送っているらしい。
「この人たちは誰なの」
画面には、話しながらどこかに移動する男性とアンドロイドが映っている。ミツオとエリーだ。
「探偵さん。どうして事件を調査しているのですか」
探偵?調査?もしかして父の事件を調べている?佳央里は動揺した。山口には、たしかに父の話をした記憶があった。
佳央里と山口との出会いは論文だ。
「タスカル」に搭載するカメラ機能をどうするかで悩んでい佳央里は一つの論文を見つけた。その場の状況をすべて記録できると記されていた。佳央里はすぐに山口に連絡をとりタスカルに山口のカメラが搭載されることとなった。
「ここが私の住まいです」
山口は飲み屋が軒をつらねる雑居ビルの最上階に住んでいた。
「おもしろい所にお住まいですね」
室内に誘われたミツオが思わず感想を口にする。おそらく居抜き物件なのだろう。部屋の中央にカウンターが存在していたからだ。
「このビルのオーナーが以前経営していたお店らしいですけれど、ただでいいからビルの様子をみてくれということで住むようになりました」
山口はカウンター裏のひきだしを探っている。ミツオは山口のユニークな人柄を想像していた。正確な年齢は分からないが、意外と若いように思える。エンジニアとしては優秀なはずなのに、お金に執着が無いのは天才肌の証なのだろう。
「あった」
きらきらと光るアクリル樹脂で封入された記録媒体を取り出しながら山口は嬉しそうにいった。
「よく考えると、当時開発中のカメラで撮影したこの画像データには画角を大きく超える360度すべての映像が記録してありました。データとして見えているのは切り取られた一部の画像なのです。ということは見えないかもしれませんが、何か記録されているかもしれません」
山口は記録媒体を機械に差し込んだ。




