過去からの依頼人(その11)
山口と名のる男は、興味深そうにミツオとエリーを見ていたが、ふいに何かおもしろい事を思いついた様に口を開いた。
「ちょっと俺の家に来るかい」
ミツオは目の前の男の真意は分かりかねた。しかし、当時、地面を這いつくばって捜査を行い、手がかりが得られなかった苦い思い出がよみがえった。ミツオは火中の栗を拾う覚悟で山口の提案に乗ろうと決めた。
「何か当時の事で思い出したことがあるのですね」
「あの夜も俺はここにいた。その列車の撮影もしていた」
エリーが目を輝かせて山口に声をかけた。
「何か映っていましたか」
山口は残念そうに首を横に振った。「何も。当時、話題になったからね。列車しか映っていなかったよ。でも今はあの時と状況が違う。よく考えたら、俺の作ったこのカメラを通してデータを解析すれば、フレーム外のなにかが映っているかもしれない」
エリーは自分の疑問を確認する問いを山口に言った。
「もしかしてそれは、物の過去を再生する機械ですか。私にも実装されています。もしかして山口さんとはあの山口さんですか」
山口は照れくさそうにはにかんでいる。
「どういうことだ」
ミツオはエリーに説明をもとめた。「ミツオさん。先ほどから訪れた現場をスキャンしていたでしょう」
「おう。取り込んだ現場の過去をさかのぼって見える。処理に10日間の時間がかかるっていうあれか」
「そうです。ソフト名がマウント・マウス。山・口なんです」
目の前の山口は笑っている。




