誰が来た?
おれとコウの視線が、ドアに集まる。
そして、誰かが入ってくる。
セーラー服? 女の子か?
「関くん、仲村くん、遅れてごめんなさい」
ドアの向こうから現われたのは、黒髪の綺麗な小柄女の子だった。
――この子は、記憶にあるぞ。確か、アカリ……『平沢朱里』だ。
「えっ、どうして椅子が全部壊れてるの?」
アカリは、部屋の中にないって来るやいなや、この部屋の荒れように驚きを隠せないようだった。
おれはそんなアカリに背を向け、コウの首に腕をひっかけて、コウの頭をたぐり寄せた。
「なあ、コウ。つまりあれか、アカリが何か心配したら、心臓発作が起こるってわけなのか?」
「うーん、どうだろうね、その可能性は高いと思うよ。そうなると、このままではまずいよユウキ。この部屋の状況といい、君自身の状況といい、不審に思われる点が多すぎるよ」
そうだよな、とおれの危機的状況を確認したところで、アカリが度重なる不自然な状況に、口を開く。
「ねえ、二人でなにをこそこそ話してるの? 私なにか変なことしたかな?おかしいかな? まさか、背中に半額シールが……」
「ない」
「それはないよ」
同時に振りむいて、おれとコウは同じような事を発した。
(おれとネタがかぶってやがる……)
おれたちはアカリに背を向けている、これも不審に思われる要因のひとつではないのか。とにかくこの場をやり過ごすということを、おれとコウは確認した。
よし、という合図とともに、おれはコウの首にかけていた腕を解き、さっと振りかえってアカリに言った。
「まっ、まあ、とりあえず座りなよ。って椅子がひとつもない! おいコウ、どういうことだ!」
どうだ! おれのハイテンションノリツッコミは!?
「どういうこともなにも、君が全部壊したんだよ、ユウキ……」
やれやれといった表情で答える。が、これは最悪の返しだ……。
「え……。これ、関くんがやったの?」
―― 「まずい!」 コウとおれの目があった。
「ねえ、ちょっと、ちゃんと説明して? これは関くんがやったの?」
アカリがずんずんと近づいてくる。おれよりも頭ひとつ分くらい背の低いアカリが、おれの顔を見上げて聞いた。これはバッドエンドフラグだろうか。
この展開、どうしてくれる! おれは目でコウに訴える。
「そ、そんなことある訳がないじゃない! このユウキがだよ!」
コウが飛び出すような勢いで間に入ってきた。
「そ、そうだぞ。こんなおれがだな、椅子をこんなめちゃくちゃに……って、おいコウ!どういう意味だ!」
この話からアカリの気を逸らすためにも、ハイテンションをつき通した。
しかし、このハイテンションはアカリに通用しなかった。
「ねえ、本当の事を教えて。関くんはなにかいやなことでもあったの? これでこんなことしたの?」
(ア、アカリ……おれの事、心配……した?)
次の瞬間だった、胸が強く締め付けられるような痛みがおれを襲った。
コウに言われた通りだった。『心配されたら心臓麻痺で死亡』
おれは、生死の境目で、死の領域へ堕ちるんだな……。
―― ドクン
「う……あ……」
「おい、ユウキ、ユウキー!」




