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死んだのか?

「で、どういうことなんだ」

「心配されたから心臓発作で死んだんだよ」

「それはさっき身を持って体験した! 確かに胸が急に締め付けられるような痛みが走ったと思ったら、気が遠くなって、呼吸が止まった。死んだよ。死んだんだよ。なのになんでおれは今こうやって喋ってる? 死んだんじゃあないのか!?」

 そうだ、さっき、おれは確かに死んだ。でも目が覚めると、再び文化研究部の部室にいた。パイプ椅子も壊されていない。死ぬ前と違うことと言えば、今回は窓から外を見ている状態で眼が覚めたのではなく、椅子に腰かけ、コウと向き合っている状態で眼が覚めた。

「まあまあ、大きい声出さないでよ。死ぬ前に言ったけど、この世界ではこうなんだ。理由はわからないけど、そうなっているものなのさ」

 コウは、おれをなだめながら言った。

 どうしようもできないのか。この世界のルールに、秩序にあがなうことはできないのか。

 いくら考えようとも使えそうな案が浮かぶ事はなく、ただ溜息がもれた。

「ま、きっとだけど、アカリの君に対する心的動きが、君自身の心臓発作につながっていることは間違いがなさそうだね」

 そんなことはありえるか、とおれは席を立つ。

 整理すると、だ。この現象はおれがアカリに心配されると心臓麻痺で死ぬ。でも、しばらくすると死ぬ前の世界にもどってくる。その時には、部室の状況はリセットされ、死ぬ前の行動の跡はすべて消し去られる。こんなこと科学的に証明できるのか。非科学なら、宗教的でもなんでもいい。説明できる根拠がほしい。

 壁にもたれ、腕組みして考える。

「なあ、コウ、生きていたころの世界でみた物語を思い出したんだがな」

 ほう、とコウ。

「真っ黒なノートに名前を書くんだ。その名前の人間の顔が書いたヤツがわかっていればな、自由に人を殺せるってお話なんだがな、きっとアカリのどこかにカメラが仕掛けられていて、誰か黒幕がおれを見るんだよ。そしたら、死神と同じ力をもつ目でな、おれの名前と顔を確認して、ノートにおれの名前を書くんだ。その時死因に、『平沢朱里に心配されたら心臓麻痺』って書く。それでおれは死ぬ……」

 真剣な顔をして言ったおれの理論に、少なからずコウも真面目な顔を作る。

「どうだろう、それなないんじゃないかな。いまこの世界に確認できる人間は、関祐輝と多井中光と平沢朱里しかいない。それにそんなノートの存在は聞いたことないよ」

 ふう、と息を吐いて、コウは椅子の背もたれに大げさにもたれた。

「そうだね、当面の対応として、アカリがこの部屋に入ってきても、喋らないでおこうか。下手に心配されるきっかけも作らないで済むからね」

 わかった、と短く返事をして、椅子に座った。

 きっと大丈夫だよ、とコウが言うも気休めにもならなかった。


 しばらくして、ドアが開いた。アカリが来た。


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