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みにくい猫の子  作者: 西田月石
第2章 フレア共和国

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ミケ、冒険に出る!

 ――ニッカ鉱山での逗留も三日目になる。

 名もない集落だったが、ログ達はリラックスした日々を過ごしていた。

 小さな集落だが貴重な鉱石を採掘する鉱山があり、それを狙う盗賊から守るためドワーフの精鋭が警備をしているので、下手な街よりも厳重な防衛能力を有している。集落の住宅は長屋造りの集合住宅がほとんどだが、家族を伴った鉱山労働者も多く、ドワーフの家族が安心して暮らせる秩序があった。

 突然の来訪者であるログ達も、最初こそ警戒されたが――フィルドがドワーフの英雄であること、更には連日の酒場浸りが功を奏し、今では非番のドワーフ達が朝からフィルドを誘いに来ている。スミノフやズブロッカも酒場で「賭け腕相撲」やら「賭け飲み比べ」やらに興じ、毎晩遅くまで帰ってこない。

 ディアはと言うと、温泉を気持ちよく入るためと言って、カティやハーパーと訓練をして汗をかいては浴場へ向かう毎日だ。マッカランは鍛冶屋の矢が気に入らなかったらしく、鍛冶屋に通っては細かい注文を重ねている。みんな思い思いに休養しているようだった。


 ログは鍛冶屋で一緒になってからカミュと居ることが増えた。カミュの武人らしい所も相性が良いのだろう。長柄の棒で手合わせをしたり、過去のいくさ話で語りあったり、時には酒を酌み交わしたり。気がつけば妙に男臭いコンビが出来上がっていた。


 ――つまんないにゃ!

 ミケは飽きていた。ログはカミュとばかり居るし、ディアママはお風呂に連れていくから近づきたくないし、フィルドは呑んでばかりだし、宿に残ってるヘネシーは何言ってるかわかんないし・・・。他の人達も遊んでくれる感じしないし。ニーナはビクビクしてて・・・つまんないにゃ。

ミケは猛烈に飽きていたのだ。ゆえに・・・暴走した。


 ――冒険するにゃー!!

 迷子の時、ピートたいちょーとワクワクしたにゃ。お外はキラキラして、いろんな匂いがして、ムズムズするんにゃぁ。怖くない、怖くなんかないにゃ!

 ミケだって、ディアママみたいに強いはずにゃ!!

 ミケは部屋に置かれたログの短刀を腰に差し、ディアのマネをしてポーズを決める。「むふ〜ん」と満足気にニヤけると、ログのシャツをマントのように羽織り・・・「にゃは!」っと閃かせて、また決めポーズ。納得した顔でデミアがくれた帽子を被ると、とててっと小走りに宿を出ていった。


 ◇ ◇ ◇


 「ミケー、出ておいで〜!温泉行くよ〜。ミケ〜!!」


 夕方になりログとカミュが宿へ戻ると、ディアがミケを探していた。


 「どうした、ミケが逃げたの?」


 「訓練から帰って、温泉行きたいんだけどねぇ・・・居ないんさね。」


 宿屋を手分けして探すが、ミケの姿はない。ふと・・・ログは部屋に置いてあった短刀が無いことに気がついた。おかしい――。近くのものから調べ始めると、替えのシャツ、ミケの帽子も無くなっていた。


 「ディア、短刀やミケの帽子が無いんだ。外かもしれない。」


 「ちょいと、暗くなっちまうよ!探しに行かないと・・・。」


 治安も良く警備もされているが、決して安全な訳では無い。柵をちょっと越えれば荒野が広がり、鉱山のある岩山からは急流の川も流れている。空の魔獣だって居ないわけではない。しかも夜になれば魔獣も、それより恐ろしいかもしれない盗賊たちも跋扈するのだ。ログとディアの顔に緊張が走る。


 「あんたたち!手分けして探すよ。ログとカミュは東へ。カミュ、あんたの鼻を存分に使っとくれよ!ロンリコは上空から探すんだ。ハーパーとカティはここで待っといで。もしミケが帰ってきたら、合図の光球を打ち上げな。後から帰ってきた連中の指揮はハーパーに任せるさね。あたしは西へ行くよ!」


 素早くディアが指示を出す。ログ達が頷き行動しようとした時だった。


 「あ・・あのっ!私の鼻も使ってください!」


 ニーナが手を上げて進み出た。相変わらず尻尾は足の間に挟んでいるが、しっかりとした眼差しでディアを見つめている。ディアはニーナに目を向け頷いた。


 「良いさね!あんたは、あたしと西を探すよ!」


 「はいっ!頑張ります!!」


 宿を出て二手に分かれた捜索が始まった。

 ログ達が向かった東には、小売店や酒場があり、集落内では賑やかな方だ。長屋集落も東なので、子どもも遊んでいる。ミケが居る可能性は高いだろう。カミュは鼻を効かすが表情は渋いまま。ミケの匂いが感じられないのだろう。ログは商店や子どもたちに尋ねている。酒場も覗くが子どもはおらず、ベロベロに酔ったフィルド達が楽しんでいた。――酔っ払いを引き込むのもなぁ・・・と何も言わず立ち去り、そのまま捜索を続けていた。


 ◇ ◇ ◇


 西に向かったディアとニーナは、寂れていく集落の中を探していた。西には坑道の入口があり、道具置き場の小屋や、鉱石を運ぶ荷車が置かれている。既に採掘時間は終わっており、通行人も灯りもなく、薄暗くなっていた。鉱山の周囲は厳重に警備されており、もしミケが外に出ようとすれば警備のドワーフが見つけるはずだ。――きっとまだ中にいる――ディアは念入りに道具置き場の小屋や、荷車の中まで探していた。


 「あ・・あのぉ。」


 「なんだい、ミケの匂いがあったのかい?」


 「あったんですが、そのぉ・・間違いかもしれないですけどぉ・・・。」


 「はっきりおしっ!さっさと言う!」


 「ひゃい!ミケちゃんの匂い、鉱山に向かって続いていますっ!」


 ニーナはプルプルと鉱山を指さした。

 ディアは指の先にある鉱山を見上げ「ミケ――」と呟くと、そのまま走り出した。慌ててニーナも、その背中を追いかけていく。


 「ニーナ。あんたの鼻が頼りだ。抜かるんじゃないよっ!!」


 「ひゃいっ!」


 辺りは濃紺の闇が広がっていく。ディアの顔には憂色が滲み出ていた。

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