8 ありがた迷惑な精霊の加護
突然の白い精霊の登場から一週間が経ち、平穏なぼっち生活が続いていたルイ。今日は図書室で独り自習中。
やはり「元王妃候補」は敬遠されるのかな。
否、現在も王妃候補のまま、第3王子アルとの婚約は続行中である。ルイは、王妃教育免除イコール婚約解消と勘違いしている。
主人に忠実な万能メイドであるサラは間違いに気がついているが、主人が幸せそうなので勘違いを訂正しない。正しくは王妃教育延期で、今も未来の王妃街道まっしぐらである。
主人の邪魔にならない位置に立つ護衛を兼ねる万能メイドは、周囲に人がいないのを確認してから話す。
「そういえば、ルイ様。あの白猫さんはどこに行かれたのでしょう?」
こくこくと舟を漕いでいたルイは、眠気から引き戻される。あたかもずっと起きていたように、きりりと顔を作り直す。
「さあねえ、そのうちまた現れるんじゃない?まさか精霊との契約は成立してないよね」
あの適当な精霊は無害とは思えない。
精霊の加護、正直ありがた迷惑な気がする。お母様から寝かしつけの物語で聞いたことがある。物語の結末に良い印象はなかった。前世で読み漁った異世界物語やヨーロッパの精霊が絡む物語も、良いことと悪いことが半々だったような。むしろ精霊の悪さが多かった記憶がある。
悶々と考えていると、爽やか王子アルが現れた。
「ご機嫌よう、私のレディ」
『私の』の部分を訂正したいが不敬になるので、言葉をのみ込む。我慢。
席を立ち、静かにカーテシー。うん、角度ばっちり。完璧。
どうだと顔を上げると、意外と近い位置にアル王子の顔があり慌てた。
「何か御用でしょうか」
ルイは動じず、姿勢を正してからアルの目を真っ直ぐ見上げて確認する。
それにしても、2歳差なのに、背が高いな、この王子。ずっと見上げるのも首が痛い。
うん?今、視界に白い猫のようなものが見えた。きっと気のせいだ。うん。見なかったことのしよう。
ひいっ、王子の足にすりすりしてるううっ。
王子から目を外し、下をガン見していたルイにアルが不思議そうに声をかける。
「どうしたの?気分でも悪い?」
どうも白猫は王子には見えてないようだった。ほっと一安心。




