5 一難去って、また一難
ル・リゼ校は全寮制の名門校である。マリン国内外から、各国の王族、貴族、富裕層が集まる最高峰の教育機関。白い森の湖畔に位置し、自然豊かな環境にひっそりと低層の校舎と寮がある。校舎を中心に放射状に寮が配置されている。
白い森の本校以外にもう一つ校舎がある。1月から3月はマリン国北側のブラックウッド領内の山あいの冬専用の校舎へ移動する。未来の紳士淑女は冬のスポーツを嗜みながら、自然教育を受ける。
ホワイトウッド侯爵家の家紋入りの馬車から少女が1人降りる。白い息を吐く少女は、もふもふの純白のコートを着ている。ツインテールはおろし、ストレートの金髪の髪が腰まで緩くうねっている。単に首が寒いから、髪を防寒対策に役立てる。
「うおっ、寒いっ。ふうううう」
白い息を吐きまくる。雪だ。雪。
「お嬢様、ふうううううっは、幼く見ます。お淑やかに。誰が見ているか分かりません」
背後から万能メイド兼護衛のサラが、無機質な声でルイを指導。
「はあああい」
サラを見上げてゆるく返事をする。
サラは無表情のまま前方から目を離さない。
ん?とルイは首を前に戻す。
んんんん!?
爽やかな笑顔で、我が元婚約者様が雪の中を歩いてくる。
正しくは、今も婚約中の第一王位継承者の第3王子アル。
ルイのみが、王妃教育脱出と同時に婚約を解消したと勘違いしている。父はそこまで娘に甘くなかった。
咄嗟にカーテシー。ここは王妃教育の成果の見せ所。
「ルイ嬢、そんなに畏まらないで。とても会いたかった」
「殿下におきましては、ご機嫌麗しゅうー!」
言い切らないうちに体がふわっと浮いた。アル王子が私の腰を抱き上げて、冬空に掲げる。
な、何!お父様でもお兄様でも、もうしないこの高い高いは…。
助けてとサラを見るが、目を逸らされる。
しばらく、第3王子アルのくるくる回る高い高いは続いた。




