29 まじないとのろい
まじないは呪いと書き、
のろいも呪いと書く。
黒い鉄鋼の精霊王は黒猫になって、今日もル・リゼ校の中庭を彷徨く。
侯爵令嬢ルイが先日、求婚されていた場所なので、きっとまた通るだろう。
そして、黒猫好きの彼女は自分を寮室に連れ帰るに違いない。
問題は、白猫野郎だ。
あ、つい野郎と言ってしまった。
精霊王なのだから、常日頃から言葉遣いには気をつけている。
最近、白樹の精霊王はル・リゼ校を不在にしているようだ。
あの嫌な気配を感じない。
それにしてもここは緑豊かだな。
マリン国北側のブラックウッドは荒涼とした大地が広がる。山は険しい。
ル・リゼ校の1月から3月は、ブラックウッド領内の山あいの冬専用の校舎へ移動する。
高地なため、高山病に罹る人間もいる。
高山病対策として、順応期間を低地でもうけてから来る生徒もいる。
先生方は禁酒。暴飲暴食は高山病が悪化する。
長く息を吐いてから吸うことにより、酸素を吸収。
シャワーを基本とし、入浴しない。血流が良くなると高山病になりやすい。
などなど、慣れない人間には最初は辛い場所がブラックウッド領。
そんな体調不良をのろいと言う者もいる。
いや、単に高い標高に慣れていない人間に起きる高山病だし。
ただ甘く見ると重症化する。
いつもよりゆっくり歩けば大丈夫。
頭が割れるように痛くなったら、深い呼吸と水分補給をして欲しい。
そんなことを考えながら、中庭散歩をしていたら悪寒がびりっと走った。
ルイ嬢の寮室の方角から禍々しい嫌な気が届く。
精霊同士の相性の悪さの嫌な感じよりももっと邪悪。
そう、これはのろいの類。
呪い。
ああ、あの予言か。
深い眠りを誘う呪い。
ホワイトウッドの申し子に掛けられ、世を終焉に導く呪い。
あれ、真実だったんな。。。
黒い鉄鋼の精霊王は、黒猫ペット作戦を諦め、急ぎブラックウッド領に帰ることにした。




