22/32
22 暗雲の予感
ざわりとした瞬間、白樹の精霊王ホワイトは侯爵令嬢ルイの居る部屋に飛んでいた。
契約した主人の状態は手に取るように感じることができる。
精霊王の加護でも完璧では無い。
ルイの寮室の割れた窓からすっと入り、ガラス破片の散った床にホワイトはゆっくり着地。
ベッドを見ると、主人を護るように覆い被さるサラの下で気を失っている侯爵令嬢ルイを確認する。
ああ、遅かった。
深い眠りについてしまった。
新緑の女神から情報を得て、奔走した甲斐もなく、最も守るべき対象を護ることができなかった。
背後の扉が勢いよく開く。
アル王子が息を切らしてルイに駆け寄る。
ゆっくりと万能メイドだったサラが、珍しく動揺した表情で主人から離れる。
深く息をつくと、ホワイトは手を握りしめて顔を上げた。
ルイの頬にそっと手を添えるアル王子を一瞥して、寮室の窓から外へ消えた。
外は先ほどの嵐が嘘のように穏やかな景色。
対照的にルイの寮室は竜巻の起こった後のような状況。
天蓋は外れ、カーテンは破れ、床は足の踏み場もない有り様。
サラはぎゅっと白いエプロンを握りしめ、一度顔をくしゃりと歪めてからいつものポーカーフェイスに戻った。




