18 モテ期、到来
最近、よく求婚される。
あの迷惑な求婚後、連日、ル・リゼ校に留学中の各国の王子からプロポーズを受けている。
どの王子も面識はなく、突撃求婚的な切迫した雰囲気。
何かの罰ゲーム?
侯爵令嬢ルイは、今日も自室のテラス席でぼっち飯。かと思いきや、なぜか第3王子アルと王族専用個室でランチ中。
気まずい。非常に気まずい。元婚約者だし、王妃教育から脱走したし。
なんで、いまだにアル王子と接点があるのか不明である。
二人だけのランチなんてもってのほか。ありえない。
正しくは、婚約者のアル王子。
今日は久々にルイ嬢に会えてご機嫌。
アルも万能メイドのサラ同様、ルイ嬢が婚約解消したと勘違いしていることを訂正しない。
侯爵令嬢ルイの専属メイドのサラは、今日も絶妙な距離と位置で主人の背後に控える。
サラのメイド服のふんわりとしたスカートの中には短剣が忍ばせてある。
王族専用室入室時のボディチェックを、毎回なぜか潜り抜けている。
気配を消す無表情のサラとにこにこ顔のアルの側近、給仕数名に囲まれて、広い窓のある部屋の中央で、ランチとは気軽に言えないフルコースが進む。
大粒の稀少なキャビアもある。
メインはトリュフ付きの肉。
「お口に合いませんか」
優しく尋ねるアル王子。
「いえ、とても美味しいです。このラディッシュなど、みずみずしくて何個でも頂けます」
最後、余計なことを言ってしまった。でも、さすが王室御用達の野菜は美味しい。菜園の土も良質に違いない。
「お代わりしますか」
アル王子の側近が食いしん坊なルイ嬢に尋ねる。
「十分頂きました」
ルイ嬢は令嬢らしく控えめに返事をした。
「最近、よく求婚されているね」
アル王子は昨今の最大の懸念事項を、優雅なランチの話題にぶっ込んできた。
「ごふっ」
危うくティラミスをアル王子の顔面に飛ばすところだった。
ティラミスを飲み込んだ後、動揺を見せない仕草で紅茶をいただく。
ここも王妃教育&侯爵家の家庭教師のマナー特訓の見せどころ。
「そんなことございませんわ」
根拠もなくさらりと否定する。早く帰りたい。
でも、このティラミス、美味しい。ケーキは好きなだけ取れるように、トレイに並べてある。宝石箱のような箱には、小さな色とりどりの菓子もある。
「心配だな。私のレディは可愛いし、日々美しくなる」
よく真顔で言えるな、この王子。心の中での不敬は許して欲しい。自由である。
早く終わりたいランチともっと食べたいケーキを天秤にかけ、後者がルイの中で勝った。
まあ、たまにはモテ期もいいかと妥協する。美味しいケーキには敵わない。




