16 お嬢様の秘密
私の敬愛するルイお嬢様には秘密がある。
誰にだって秘密はあるが、お嬢様の場合、国家機密級だ。
そんな大事な大事なお嬢様を預かり、守り、育てて13年。
とうとうお嬢様が王宮から脱走した。
レディ・シャルロット・ルイ・マグノリア・マルグレス・ホワイトウッド
長っ。お嬢様のお名前を伺った際の第一印象。
レディは敬称。シャルロットは名前。ルイはミドルネーム。マグノリアはルイお嬢様のお祖母様の名前を受け継ぎ、マルグレスは苗字、ホワイトウッドは領地名。
長い名前にも意味はある。
ホワイトウッド領の全精霊の祝福を誕生と共に受け、13歳にして白樹の精霊王と契約した。
この白樹の精霊王が気に入らない。白い猫の姿でお嬢様にごろごろと懐き、銀髪青年の姿で授業に寄り添う。
私でもあそこまでお嬢様に接触できないのに。
羨ましい。くうっ。ずるい。
お嬢様の秘密の話から、白猫の愚痴になってしまった。
話を戻そう。
国家機密級の秘密と王宮脱走。秘密を知る王家とホワイトウッド侯爵家は焦った。
目の届く範囲で永世中立国マリンの至宝を守りたかったのに。
無理は禁物。多くの精霊の祝福を受けているルイお嬢様の幸福度が国の安寧に関わる。
よく食べてよく寝て幸せな状態を維持するのが、私、万能メイドとしての責務。
自ら万能というのはおこがましいが、ホワイトウッド侯爵令嬢のメイドには、日々のあれやこれやから護衛まで、ありとあらゆる能力が要求される。
まだ詳しくは話せないのだが、お嬢様は王妃になるべく育てられてきた。
相手の王子はどうでもいい。第1王子だろうが第3王子だろうが。
今日のお紅茶も渾身の淹れ方で、厳選茶葉のアールグレーをお出しした。もちろん有機栽培。無農薬が良いが、土からとなると難しい。
また話が逸れてしまった。反省。
秘密の多いお嬢様に、最近、どうももう一つ秘密ができたようだ。
寝言で『おにぎり、食べたい。めんたいこ』とある日、言っていた。
王宮脱走の夜から、毎夜、不思議な言葉を発することがある。
私は意味不明な寝言を発するお嬢様でも、忠実に使え共に歩みたいと思う。
ただ、あの猫をどうにかして欲しい。




