13 春の予感
3月の学園は浮き足立っている。
教師も生徒も、4月からの本校での生活を楽しみに、移動のための準備を始める。侯爵令嬢ルイも万能メイドのサラと共に、寮室で荷造りをしていた。令嬢はメイドに任せて通常は荷造りをしない。しかしルイの転生前の気質と習慣から、自分のことはなるべく自分自身でやりたい派だ。
給仕は圧倒的にサラの方が、効率よく早くできるので任せている。何よりもサラの淹れる紅茶が美味しい。
「ルイ様、この猫ベッドは捨てますか?」
最近、サラは白ちゃんに冷たい。白猫のもう一つの姿であるホワイトという青年の姿を見てから、特に冷ややかな対応になった気がする。
「ようよう、新しいもっと高級なのを買ってくれるなら、捨ててもいいぞおー」
相変わらずやんちゃな白猫の話し方に、サラは眉をひそめた様な表情を一瞬見せたが、冷たい表情で白ちゃんを見下ろす。いつも白ちゃんの登場は突然である。そして、偉そう。
「お嬢様、猫ベッド、捨てますね」
「おい、無視すんな」
白ちゃん、爪を立てる。
サラの靴を狙ったがかわされる。
サラは猫を一瞥し、猫ベッドを持って、扉から出ていってしまった。
「白ちゃん、ホワイトになって荷造りを手伝ってくれない?」
「俺様は、ご主人様の加護に忙しいので無理」
よくわからない理由を述べて、窓から散歩に出掛けてしまった。
それにしても、勉強そこそこの平穏な学園生活はいいな。
友達はまだできないけれど、アル王子の絡みも最近ほぼなくて気楽。
少々うるさい白猫、寡黙なメイドだけで、厳しい教師も膨大な課題も無い。
睡眠もたっぷり取れる。ご飯も美味しい。
ただし、贅沢な話だが、刺激がないのが物足りない。
恋したいなあ。
窓ガラス越しの透き通った空を見上げて、前世も今世も恋を知らない侯爵令嬢ルイは溜め息をついた。




