11 王子の焦りと悩み
アル王子には常に浮かべる爽やかな笑顔の裏に、焦りと苦悩が日々付き纏っている。
予期せぬ次期王太子候補の座が転がり込んだ時からそれは始まった。
自由奔放な兄2人の尻拭い、母の期待、唯一確実だと思っていた婚約者の逃亡。
そして、婚約者である侯爵令嬢ルイを追いかけてル・リゼ校に編入した矢先、恋敵が現れる。(と思い込んでいる)
あの銀髪は誰だ?ルイ嬢の護衛騎士だろうか。
いや、下手な騎士よりも優秀な護衛兼メイドがいるではないか。いつも気配を消して、絶妙な距離に立つあの無表情メイド。王宮では男女問わず隠れファンがいる。遠巻きに『氷の君』などと呼ばれているのを聞いたことがある。名前は確か、サラ。
銀髪の青年の名は、ホワイトというらしい。目が合うと、にやりと笑う表情がアル王子の焦りを増長させる。
学園の王族専用室で、執務をこなしながら、ルイに会う隙間時間をどうしたら作れるか模索する。
ルイと会う時間の長さは、ホワイトに圧倒的に負けている。
「はあ」と溜め息が漏れる。
幼馴染の側近しか今は部屋に居ないので、気が緩む。
「お疲れのようなので、一息つきませんか?」
押し付ける感じのない、柔らかい物言いで側近はアルに休憩を提案する。
窓の外は吹雪いている。2月なので、あと数ヶ月したら春になる。
4月には南のホワイトウッドの本校に、学校機能が移動する。全寮制なので、生徒も一斉に移動。教師も一緒に本校の教師寮に移る。
父上を説得して、今はルイの近くに居ることができるが、あと何ヶ月、あと何年、学園生活をルイと送れるか分からない。第一王位継承者という立場上、いつ何があるか予測できない。何も確約できない。
今日も側近とお茶を飲みながら遠くを見る。解決しない悩みに想いを馳せて。




