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また春日目線に戻ります。

これで初詣は完結します。

「う、宇津井くん、どうして・・」


近所の割と有名な神社の本殿にお参りを済ませた。

重ね重ね神様に宇津井君との恋愛祈願と子孫繁栄を願うため、絵馬コーナーへ行こうとしたらすごい強さで肩をつかまれた。


「どうしてって、それ本気で言ってるの?」


おふざけとかじゃなくて、真剣だと宇津井くんの目が語る。


「お、お願い事するだけだよ?宇津井くんの名前は書かないよ?」


宇津井くんは深いため息を吐いた。

宇津井くんはちょっと私の事を誤解していると思う。

いくら私でも嫌がる宇津井くんを無視して「ずっと一緒にいられますように♥♥♥ 春日 宇津井」みたいなバカップル絵馬は書かないよ。

宇津井くんがシャイなのはわかってるから!

したいけど、したいけど、したいけど。

宇津井くんが嫌ならあきらめる!


「じゃぁ何をお願いするの?」


「子孫繁栄とか、結婚き」


「脚下」


は、はやいよ!宇津井くんはやいよ!

ううーけちんぼ。宇津井くんのけちんぼ!

でも大好きなんだー。大好きだから神様にこれでもかってくらいお願いしたいんだー!


「で、でも折角のチャンスなのに…」


宇津井くんは首を傾げた。


「一体どんなチャンスなの?」


おおお!よくぞ聞いてくれました!


「宇津井くんとのさらなるご縁をお願いするんですよ!」


「脚下。さっき本殿で5分位願掛けして動かなかったでしょ。十分だよね」


え!?なんとそんなに願ってましたか?

でも、お付き合いに対するあれこれへの感謝と今後の豊富とお願いを合わせたら、説明し足りない位だったのにー説明不足による行き違いがあったらどうするんだよー

肉親だってあるんだから、神様なんて価値観のわからん存在なんて懇切丁寧に説明してちょうどいいんじゃないんですかねー。


「あ、でも絵馬は別だし!縁起物だし!」


「脚下」


宇津井くんが私の手をぎゅっとつないだ。

身長は同じぐらいだけど、宇津井くんの手はわたしよりずっとおっきい。あとあったかい。

うう、この手は決して手放したくない!


「わかった!じゃぁ縁結びの


「脚下。もう結ばれてるよね」


ううー確かに。痛いところをつかれたー。

折角のかっぽー新年イベントなのに。

フィーバーなのに。


「でも、でも、将来的なものまで結ばれたい…うおっ」


しょんぽりしてぽそりとつぶやくと、宇津井くんの足が急にピタッと止まった。

ひっぱられてがくっとなる。


「う、宇津井くん!顔真っ赤だよ!風邪?風邪なの?」


宇津井くんは繋いでないほうの手で顔を覆って黙りこんでしまった。

暖冬っていっても寒いもんね。

風邪だってひいちゃうよね。

私のマフラーを貸そう。

赤のチェックだけど、宇津井くんくらいの透明感だと男の子でも似合うだろう。

ついでに私への好感度もあがれ!

邪な気持ちも込めてマフラーをほどこうとした手を、宇津井くんは真っ赤な顔したままそっと止めた。


「違うから」


宇津井くんは周りをきょろきょろ見てからため息をついた。


「何でわかんないの?」


何で?え?風邪じゃないの?

私何かしたのかな?

頭にはてなが増殖していくのを感じる。はてな祭りだ。


宇津井くんは、「将来的とかそんなの…」とか「いや、この顔は深く考えてないのか?」とかぶつぶつ言ってるけど耳まで届かなかった。

ただ、宇津井くんがため息をついてまた歩き出したら我に返った。


「え?宇津井くんおまもりは?」


「またね」


ええーまたっていつ~


「わかった!おみくじ!おみくじは?」


「だめ、凶とか出たら騒いで絶対面倒くさい」


う、それは絶対嘆く。この世の終わりのように嘆く確信がある。

大吉以外受け付けない。

さすが宇津井くん!よくご存知ですね。


「何もしないのは不安だよー」


「さっきお賽銭投げたでしょ」


「だめだめ~お賽銭5円しか投げてないよ!ええーこんなことなら500円くらい投げたのに!」


私はぐずる子供みたいにずるずる引きずられていく。

ううー今年初めてのデートなのに。

でも、ちょうど鳥居をくぐって、人がまばらになったところで宇津井くんは言った。


「手、冷えきってるよ。春日が風邪ひくから温かい所でお茶でものもう」


宇津井くんはやっぱり素敵だ。

大好きだ!!

絵馬が書けなくても、お守りが買えなくても、お賽銭が5円ぽっちでもいいのかもしれない。

だって私のお願い事を叶えられるのは宇津井くんだけなんだから。


でも、やっぱり欲深く念には念をいれて、後日こっそり絵馬を書いてなぜだか宇津井くんにばれて怒られてしまうのは別のお話。







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