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孤狼の転生~最速スキルでゼ 口から始める〜  作者: Ebi
(第一章:孤狼の覚醒と王の盾要塞 - Daiisshō: Korō no Kakusei to Ō no Tate Yōsai)
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第19話から第21話

第十九話:瞬撃の神速と、不穏なる要塞


激昂した冒険者が地響きを立てて迫り来る中、俺――ハナシ・リョウガは微動だにせず、冷徹に彼を見つめていた。右目の【分析の魔眼(レベル5)】が起動する。


視界に映ったのは、【プラチナ・Bランク】の強力なステータス。だが、奴は己の力に溺れ、完全に油断していた。


(チッ……今の俺より格上か。だが、この街で最初から舐められるわけにはいかない。前の世界で痛いほど学んだはずだ。弱者は常に踏みにじられ、理不尽に搾取されると。ここで引く選択肢はねえ)


その時、キングラッドが俺を庇うように前に出ようとした。俺は静かに手を挙げ、彼を制する。キングラッドは不穏な気配を察し、緊張の面持ちで足を止めた。


次の瞬間、俺は【最速スキル】を限界まで駆動させた。


世界が完全に静止する。一瞬の思考、一百分の数秒の狭間。俺は受付のカウンターから酒杯(グラス)をひったくり、神速のステップで男の懐へと潜り込んだ。


そして、その脳天へと全力を込めて酒杯を叩きつける。


パリンッ! とガラスが砕け散るが、これだけではBランクの肉体は沈まないと、俺の眼が瞬時に判断した。間髪入れず、体を反転させ、男の軸足を強烈に蹴り抜く。


すべての連撃が、常人の目には認識不可能な一瞬で繰り出された。


俺が元の位置に寸分違わず戻った瞬間、ギルドの床に凄まじい地響きが轟いた。大柄な冒険者――キライの巨体が、何が起きたかも理解せぬまま白目を剥いて崩れ落ち、意識を失ったのだ。


「……な、何が起きたんだ!?」


「キライが一歩も動かずに倒されたぞ……!?」


周りの冒険者たちが、目玉が飛び出さんばかりに驚愕し、ガタガタと震えながら囁き合う。まるで俺が超自然的な精神攻撃か何かを使ったかのように見えたのだろう。


その喧騒を切り裂くように、タリンが豪快に笑いながら怒鳴り声を上げた。


「ガハハハ! 愚か者どもめ! この俺様、偉大なるドワーفの戦士をあの古の魔沼から救い出したのが誰だと思っていやがる! リョウガは俺より遥かに強い! 今のだって命を奪わねえように手加減してやったんだ、この分からず屋どもが!」


キングラッドも冷徹な視線を周囲に送り、言葉を繋いだ。


「我々は大きな目的のためにここへ来た。誰とも争うつもりはない。リョウガが手を出したのは、そちらが先に仕掛けてきたからだ。これ以上、無用な騒ぎを起こさぬよう、賢明な判断を期待する」


その時、ギルドの奥の扉が荒々しく開かれ、地響きのような大声が響き渡った。


「何事だ! ギルドの中でこれほどの騒ぎを起こしやがって、命が惜しくねえのか!?」


キングラッドは一歩前に出ると、初めて目にするギルドマスターに対し、礼儀正しくも毅然とした態度で説明した。


「ギルドマスター、私たちはヴァリック殿の紹介であなたに会いに来た者です。しかし、そちらの冒険者が突如としてリョウガに襲いかかってきましてね。ご覧の通り、返り討ちに遭ったわけですが」


現れた巨漢の男は、倒れたキライを一瞥すると、鋭い眼光を俺たちに向けた。

「俺がギルドマスターの『地砕きイーゴリ(Igor)』だ。お前たち、上がれ。俺の部屋で話を聞く」


二階の執務室に入ると、俺はヴァリックからの紹介状をイーゴリに手渡した。自分たちの状況を簡潔に説明する。イーゴリは顎に手を当て、フム、と低く唸った。


「エルフにドワーフ、元騎士、そして最後にお前か、少年。見た目はひどく脆弱に見えるが……ヴァリックとは長い付き合いだ。あの男がただの戦力不足の連中に推薦状を書くはずがねえ。何かを見抜いたんだろうな。いいだろう、登録の手続きは認めてやる。だが、二度とギルド内で揉め事は起こすな。今、この街はそれどころじゃねえんだ」


キングラッドが怪訝そうに尋ねた。


「一階に多くの冒険者がたむろしていましたが、皆、一様に絶望と怒りを孕んだ顔をしていました。本来なら依頼に出ている時間のはず偏。一体、何が起きているのですか?」


イーゴリは深く、重い溜息をついた。


「……危機的状況だ。一般市民には混乱を防ぐために秘匿しているが、お前たちも今日から冒険者だ、話しておこう。ここ数ヶ月、魔物や魔獣の活動が異常なほど活バツ化している。数だけでなく、見たこともない新種の魔物まで現れ始めた。原因は未だ不明だ」


彼の拳が机の上で固く握りしめられる。


「この街は最前線の軍事要塞だ。防衛は俺たちの役目だが、最近は偵察や素材収集に向かった最高峰の熟練パーティーでさえ、誰一人として生きて戻ってこねえ。まさに全滅状態だ。王都へは救援の要請を送ったが、いつ大規模な総攻撃が始まってもおかしくない。現状の戦力では、持ち堪えられるか分からん」


話を聞いていたエナリルが、マントのフードの奥から呟いた。


「でも、この街へ来る時に見た外壁や塔は、とても頑丈で高く見えました。魔物たちが簡単に侵入できるとは思えませんが……」


イーゴリはエナリルを見つめ、静かに首を振った。「表面上はそう見える。だが、圧倒的な数と、未だ見ぬ新種の能力が合わされば、絶対の安全などあり得ん」


タリンが腕を組み、壁についての疑問を口にした。「なぁ、あの外壁がまるで酷い熱で焼かれたように真っ黒だったのはなぜだ? それに、あの巨大なバリスタが設置された二つの塔は?」


イーゴリの眼に、古い歴史の影が宿る。


「あれは塗装ではない。かつて、魔物どもが『竜(ドラゴン)』を率いて襲来した際、激しい火炎によって焼き尽くされた痕跡だ。あの塔のバリスタは、竜を撃ち落とすための専用兵器。数百年前の、死者の地からの最後の大侵攻の時の遺物だ。……二度とあの地獄が繰り返されぬことを願うばかりだ。俺の曾祖父(ひいじいさん)も、あの戦いで命を落としたと我が家の家系図の記録(一族の日記)に読んだことがある」


一瞬の沈黙の後、イーゴリは表情を戻した。


一階に降りると、受付には『リズ(Liz)』という名の美しい少女が待っていた。彼女は愛らしい微笑みを浮かべ、俺たちの前に一つの透明な球体を置いた。


「皆さま、ようこそ! 登録方法についてご説明しますね。冒険者の実力(ランク)は、この『マナの水晶球』によって測定されます。手をかざすと皆さまのマナが刺激され、ギルドから支給される特別な『魔石の指輪』の色が変化する仕組みです」


彼女は指輪を並べながら、ハキハキとした声で説明を続けた。


「指輪の色が『白』のままならマナなしの最低ランク、Fランクです。『黄』に変わればEランク。『緑』ならDランク。そして『青』はCランク、『赤』はBランク、『金』はAランク、最高峰のSランクは漆黒の『黒』へと染まります」


リズは指輪の表面を指差しながら、さらに重要なルールを付け加えた。


「なお、**Cランクから上の全てのランク(C、B、A、S)**は、さらに細かく『ブロンズ』『ゴールド』『プラチナ』の3つの階級に分かれており、指輪に刻まれる星の数で表されます。ブロンズは星1つ、ゴールドは星2つ、プラチナは星3つが指輪に浮かび上がります。ご自身のマナの純度によって星が決まるんですよ。……ふふ、上手く説明できたでしょうか? それでは準備ができましたので、お一人ずつ順番に水晶球へ手をかざしてくださいね。皆さまが素晴らしいランクであることを祈っています!」


第二十話:瞬撃の神速と、不穏なる英雄の影



受付のリズによる説明が終わると、ギルド内にいた冒険者たちのほとんどが、怒りと好奇の視線をこちらに注ぎながら、俺たちのマナの測定を今か今かと待ち構えていた。


最初に動いたのはキングラッドだった。彼はニヤリと不敵な笑みを浮かべ、特別に用意された白い指輪を手に取った。


「よし、まずは俺から始めさせてもらう。この重装の元騎士の腕前が、今でも現役のままで通じるかどうか、確かめてみようじゃないか」


彼は指輪を人差し指にはめ、透明なマナの水晶球へと静かに手を置いた。


その瞬間、水晶球が眩い青色の光を放ち、同時に彼の指輪が鮮やかな青色へと染まった。そして指輪の表面に3つの星がくっきりと浮かび上がる。彼が**【Cランク・プラチナ】**の凄腕冒険者であることを示す証だ。


キングラッドは嬉しそうに声を弾ませた。「ふっ、どうやら俺はまだまだ戦える男のようだな!」


「ハッ、見事だ。だがな、歴戦のドワーフ戦士であるこの俺様を超えることはできねえよ!」


タリンは豪快に笑いながら前に出ると、別の指輪を指にはめ、水晶球に力強く手をかざした。


刹那、水晶球から烈火のような赤い光が放たれ、指輪は見事な『赤色』へと変貌を遂げた。さらにその表面に、1つの星がくっきりと浮かび上がる。すなわち、**【Bランク・ブロンズ】**の領域。


タリンは狂喜の声を張り上げた。「見たか、キングラッド! お前より上のBランクだ! 年長者であるこの俺様に、今夜は酒を奢ってもらうぜ!」


俺様に、今夜は酒を奢ってもらうぜ!」キングラッドは悔しそうに鼻を鳴らす。「ふん、戦いで俺を打ち負かしたら、お前を兄記分と認めてやるさ」


続いてエナリルが静かに歩み寄り、指輪をはめて水晶球に手を触れた。すると指輪は青色に染まり、2つの星が浮かび上がった。**【Cランク・ゴールド】**だ。キングラッドとタリンが顔を見合わせ、満足そうに頷く。「素晴らしい。俺たちは全員、バランスの良い高い実力を持っているな」


そしてタリンが、ニヤニヤとした笑みを浮かべて俺を振り返った。「さあ、次はリョウガ、お前の番だ。どんな力を見せてくれるか楽しみにしてるぜ」


俺――ハナシ・リョウガは、自分のマナの実力が他人に誇れるようなものではないことを、内心で自覚していた。だが、覚悟を決めて前に進み、指輪をはめて水晶球へと手を置いた。


その瞬間、異変が起きた。


水晶球の中で、ありとあらゆる色が濁流のように渦巻き始めたのだ。そして数秒の後、俺の指輪の表面に、まるで虹そのもののような複雑な色のグラデーション(色彩の波)が定着した。


「な……何ですか、これは……!?」


リズをはじめ、周囲のスタッフや冒険者たちが言葉を失って凝視する。指輪がすべての色を内包する虹色に輝くなど、ギルドの歴史上、聞いたこともなかった。


(……おい、どういうことだ?)


俺の脳内にあるシステム画面には、はっきりと『マナレベル:Eランク』と表示されている。それなのに、なぜ指輪はこんな異常な変化を起こしているんだ?


一瞬、ギルド全体が墓場のように静まり返った。しかし、すぐに不穏な囁き声が波のように広がっていく。「おい、あのガキ……呪われているんじゃないか?」

「死者の地から来た邪悪な魔術師か何かか?」


「ああ、間違いない。だから一歩も動かずにキライをぶっ倒せたんだ。あいつは化け物だ……!」


冒険者たちの疑念と恐怖が最高潮に達しようとしたその時、背後からギルドマスター・イーゴリの重厚な声が響き渡った。


「黙れ! くだらん妄想を口にするな!」


イーゴリの眼光が、俺の虹色の指輪に釘付けになっていた。


「……その『虹色の指輪』の現象は、歴史上、何百年も前に一度だけ観測されている。我が家の家系図に記録が残されている伝説だ」



冒険者の一人が声を裏返して尋ねた。「そ、そんな……! 一体、その人物は誰だったんですか!?」


イーゴリは一言一言を噛み締めるように言った。



「その者の名は、『英雄カイレオン(Kaireon)』。この世界に訪れた最後の英雄であり、かつて死者の地から押し寄せた大侵攻から、この『王の盾』の街を死守した伝説の存在だ。アラマンドン国王陛下が、彼の栄誉を称えて中央広場に建てさせた彫像を、お前たちも見たことがあるだろう」



ギルド内は、再び唖然とした静寂に包まれた。この一見、脆弱で貧相に見える少年が、あの伝説の英雄と同じ『英雄の資格(あるいは光)』を持っているという事実に、誰もが脳の理解を拒んでいた。


「ガハハハ! 最高の栄誉じゃないか! おい、この偉大な奇跡を祝して、今夜は全員で大酒を飲むぞ! リョウガに乾杯だ!」タリンが狂ったように喜びの声を上げる。


キングラッドも珍しく苦笑いしながら頷いた。「ドワーフよ、今この瞬間だけは、お前の意見に全面的に同意する」


しかし、俺は虹色に輝く指輪を見つめながら、冷ややかに独白していた。


(英雄、か。反吐が出る。俺は世界を救う救世主になるためにここへ来たんじゃない。俺を裏切り、見捨てた者たちを踏みにじるための『圧倒的な力』、そしてあの暗闇への『 revenge(復讐)』のために生きているんだ)


その時、エナリルがそっと俺に寄り添い、マントの奥から心配そうに顔を覗かせた。「大丈夫、リョウガ……?」


「ああ、問題ない」


俺が短く答えると、...彼女は安心したように微笑んだ。

「それじゃあ、私たちも一緒にお祝いの席へ行きましょう?」


タリンやキングラッドたちの笑い声が響く中、俺たちは酒場へと向かった。しかし、ギルドの暗い隅からは、俺を憎悪の目で見つめる者たちがいた。――先ほど惨めな醜態を晒して気絶した、キライの仲間たちだ。彼らの眼には、確かな殺意が宿っていた。


第二十一話:領主の抱爵と、歪んだ空からの襲撃


ギルドの酒場で祝杯を挙げる中、俺――ハナシ・リョウガは全員に向き直った。


「ヴァリックが言っていた通り、そろそろ領主様への謁見の時間だ。行こう」


しかし、キングラッドとタリンは完全に泥酔しており、まともに歩くことすらままならない状態だった。俺は呆れながら二人に告げた。


「お前たちはここで大人しく休んでいろ。俺とエナリルで領主様に会ってくる。その後、ちゃんと屋敷に戻るんだぞ」


俺はエナリルを見つめた。「行こう。ヴァリックのところへ」


ヴァリックの元へたどり着くと、彼はすでに移動用の豪華な馬車を手配していた。俺とエナリルは彼と共に馬車に乗り込み、領主の城へと向かった。


壮麗な宮殿に到着し、豪華な応接室で待つこと数分。この街の最高権力者である『ガレス・ウェルガード(Lord Gareth Wellgard)』様が姿を現した。俺たち三人はすぐに立ち上がり、胸に手を当てて深く一礼する。


ガレス様は温和な微笑みで俺たちを歓迎し、すぐに極上の茶ともてなしを命じた。そして、まっすぐに俺とエナリルを見つめて口を開いた。


「ヴァリックから山賊の件、そして囚われていた民を救い出してくれた一件はすべて報告を受けている。この危急の時代に、これほど勇敢な者たちが我が領内にいてくれたことを、心から嬉しく思う」


エナリルはマントの奥で、ガレス様の気品と温厚な態度に深く驚いていた。人間の高貴な権力者が、自分がエルフであると知りながらも、これほど傲慢にならず優しく接してくれるとは思っていなかったのだ。


すると、ガレス様はエナリルに向けて沈痛な面持ちで言葉を繋いだ。


「エルフの都市がいくつか陥落したと聞き、本当に胸を痛めている。……私の言葉に驚くかもしれないが、確かに我ら人間とエルフは長年敵対してきた。しかし、迫り来る魔物の大軍を前に、私たちは再び『同盟』を結ぶべきなのだ。さもなければ、両種族ともに今度こそ滅び去るだろう」


エナリルは思わず聞き返した。「……お言葉ですが、理解できません。再び同盟、とは? 私たちにそんな過去があったのですか?」


ガレス様は深く頷いた。


「そうだ。数百年前、死者の地からあの未曾有の大侵攻があった時、我らは種族の垣根を越えて共闘し、勝利を掴み取った。だが、大戦が終わると、当時の王たちは国境の争いや資源の利権を巡って再び反目し合い、それが今に至るまで続いてしまっているのだ……実に愚かなことだ」


エナリルは悲しげに視線を落とし、「そんな……もったいないことです……」と呟いた。


しばらくの後、ガレス様は表情を切り替えた。


「さて、お前たちを呼んだのは、我が街の市民、そして親愛なる友であるヴァリックを救ってくれたことへの褒賞を渡すためだ。これを受け取るがいい」


彼の合図とともに運ばれてきたのは、目も眩むような**【金貨50۰۰枚】**の山だった。


エナリルは信じられないといった様子で、口をあんぐりと開けた。「ご、500۰枚……!?」


この世界の金銭感覚を完全には把握していなかった俺が、「それって、そんなに凄まじい大金なのか?」と尋ねると、横からヴァリックが興奮気味に説明を補足してくれた。


「リョウガ、金貨2۰۰۰枚もあれば、冒険者ギルドのすぐ近く、街の一等地にある大きな邸宅を一つ丸ごと買い取れるレベルですよ! そこをあなたたちのクラン(拠点)ハウスにすれば、全員で暮らせますしギルドへのアクセスも最高です! 素晴らしいと思いませんか?」


「なるほど、ようやくこの国の貨幣価値が理解できた。感謝する」俺はガレス様に礼を述べた。


ガレス様は「これから軍事会議がある」と言い、俺たちとの再会を願いながら、颯爽と部屋を後にした。


宮殿を出た俺たちは、再びヴァリックの馬車に乗り込み、一度彼の屋敷へと戻ることにした。


だが、その帰路の途中――。


キシャァァァァァッ!!!


突如として、歪んだ空から凄まじい咆哮が轟いた。見上げると、二つの巨大な翼と、長く鋭い肉食獣のような牙を持つ**『有翼の魔猿(ウイング・エイプ)』**どもが、群れを成して街の空を埋め尽くしていた。


そして、激しい衝撃とともに、俺たちの馬車目掛けて上空から急降下してきたのだ!


同時に、街の塔の鐘が鳴り響いた。


平穏だった街は一瞬にして地獄のようなどん底の混乱へと陥る。


「避難所へ走れ!」「南門だ! 敵の本隊は南門から来ているぞ!!」


兵士たちの怒号が飛び交い、民衆は悲鳴を上げて逃げ惑う。武装した兵士たちは一斉に戦火の渦巻く南門へと走り出していた。


ガガガガッ! と馬車が激しく揺れる。上空から襲いかかる魔猿たちの爪を凌ぎながら、俺とエナリルは必死に応戦するが、恐怖に駆られた馬たちが完全に暴走(リム)し、猛烈な速度で暴走し始めた――。





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