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孤狼の転生~最速スキルでゼ 口から始める〜  作者: Ebi
(第一章:孤狼の覚醒と王の盾要塞 - Daiisshō: Korō no Kakusei to Ō no Tate Yōsai)
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第13話から第15話

第十三話:三日と、三百年の刻流


古の魔の沼を脱出し、数日間の過酷な歩行の末、俺たちはついに一本の古びた街道へと行き着いた。

「この道を進めば、街へ出られるはずだ」


キングラッドの言葉に従い、俺たちは街道に足を踏み入れた。歩きながら、俺は先ほど救出したドワーフの様子を観察する。長年使い込まれつつも手入れの行き届いた鎧と巨大な斧。その佇まいから、彼が歴戦の戦士であることは明白だった。だが、一つの疑問が俺の頭を離れなかった。なぜ彼ほどの者が、あの不気味な魔の沼に一人でいたのか。


俺は歩調を合わせ、彼に問いかけた。「なあ、なぜ一人で旧魔沼にいたんだ? どこへ向かっていた?」

ドワーフは深く、意味ありげな視線を俺に向けると、重い口を開いた。


「俺はドワーフ軍の後方支援と装備管理を任されていた戦士だ。第二皇子であるティラーナ殿下と共に、ある極秘任務のために『竜の山』へ向かっていた。だが、突如として魔獣どもの奇襲を受けたんだ……」


彼の拳が強く握りしめられる。


「近衛隊長と殿下の守護騎士が討ち取られ、我が軍の軍旗が地に落ちた瞬間、軍の統制は崩壊した。敵の数は圧倒的で、多くの戦友たちが目の前で引き裂かれていった。皆、勇敢に戦った。だが、敵の放った強力な黒魔術の直撃を受け、俺は数人の仲間と共に崖から激流の川へと突き落とされたんだ。……そこから先の記憶はねえ。目を覚ましたら、あの沼にいた。仲間を探したが誰も見当たらず、お前たちに救われるまで魔獣どもと死闘を繰り広げていたのさ」


語るドワーフの顔には、深い悲しみと激しい怒りが入り混じっていた。彼は「ティラーナ殿下を見つけ出さねえと……」と何度も低く呟く。

その時、話を聞いていたキングラッドが目を丸くして遮った。


「待て……お前の言う『ティラーナ殿下』とは、ドゥリン六世の息子のことか?」


ドワーフは誇らしげに胸を張った。「そうだ! 知っているのか? さすがは俺たち名高きドワーフの皇子殿下だ、人間にもその名が轟いているようだな!」


しかし、キングラッドとエナリルの顔からは完全に血の気が引いていた。二人は信じられないといった様子で口を開いた。

「お前……その大戦から、どれほどの時が経ったと思っている? 沼にどれくらいいたんだ?」

「……せいぜい3日か4日前のはずだ」とドワーフは答える。


キングラッドの口から、残酷な歴史の真実が告げられた。


「そんな馬鹿な……歴史書によれば、その『竜の山の戦い』が起きたのは300年前だ。ティラーナ殿下はその地で戦死されている。父であるドゥリン王は激怒し、息子の復讐のために何年もの間、死者の地へ遠征を繰り返したが、モリア山脈での最終決戦で敗れ、戦死した。そこからドワーフの多くの都市が邪悪な魔物たちに踏みにじられたんだ」


エナリルも沈痛な面持ちで言葉を繋ぐ。


「だけど、ドワーフたちは第一皇子のダヌス様を中心に決死の抵抗を続け、魔物の侵攻を食い止める『大障壁の壁』を築き上げたの。ダヌス様もまた、数年の防衛戦の末に戦場で命を落とされたけれど……彼らは今も戦い続けているわ。現在の王は、ダヌス様の息子である『トルナ王』よ」


「な……んだと……?」


ドワーフはその場に凍りついた。ほんの数日彷徨っていたつもりが、世界はすでに3۰۰年もの時を刻んでいたのだ。彼の目から、大粒の涙が溢れ出た。


「300年……? 嘘だろ……。俺は、俺は国へどう戻ればいいんだ? 仲間も、王も、みんな戦って死んでいったっていうのに、俺だけが何も知らずに沼で眠っていたのか……!? これは戦士として、最大級の恥辱だ……!」



涙を流し、崩れ落ちそうになるドワーフの肩に、俺――ハナシ・リョウガはそっと手を置いた。


「気の毒に思う。だがな、ここにいる俺たち全員、お前と似たような境遇だ。理不尽に全てを奪われ、それでももう一度立ち上がって、過去を覆そうともがいている。だから、気が済むまで俺たちと一緒に来ればいい」


俺の言葉に、キングラッドもエナリルも深く頷いた。


数秒の沈黙の後、ドワーフは涙を拭い、顔を上げた。


「……感謝する。あの呪われた沼から救ってくれただけでなく、行き場のない俺を拾ってくれるとはな。お前たちと共に行こう」


エナリルが優しく微笑み、自己紹介を促した。「私はエナリル。あなたのお名前は?」


ドワーフは愛用の斧を背負い直すと、力強く答えた。「俺の名はタリン。タリンと呼んでくれ」


新たな仲間、三百年の時を超えたドワーフの戦士『タリン』を加え、俺たちは再び街へと向かって歩みを進めた。


第十四話:隠された洞窟と、眼裏のステータス


数日間の歩行を経て、俺たちは今も街へと続く街道を進んでいた。空が茜色に染まり始めた頃、俺は足を止めた。


「もうすぐ日が暮れる。街道の脇に川があるし、今夜はここで夜を明かそう」


俺はエナリルを振り返った。「エナリル、ちょっと川へ行こう。キングラッドとタリンは薪集めを頼む」


川辺に到着すると、俺はエナリルに向き直った。


「今のうちに『コントロールの魔法』を練習しておくんだ。これから先、どんな敵が待ち受けているか分からない。落ち着いている今のうちに、感覚を掴んでおいた方がいい」


エナリルは小さく頷くと、深く呼吸をして集中した。目を閉じ、両手をゆっくりと掲げながら、静かに詠唱を始める。


「――月と大地の間に慈悲を紡ぐ女神よ、我が導きに従い、魚たちを我が路へ集めたまえ」


その瞬間、川の表面が真珠のように美しく輝きだした。そして、水底から無数の魚たちが次々と姿を現したのだ。エナリルが手を動かすと、その動きに合わせるように魚の群れが右へ左へと泳ぎ回る。信じられない光景だった。彼女の手の一振りで、数百匹の魚が完璧に操られている。


「おいおいおい! メシだ! メシが泳いでるぞぉ!!」


その凄まじい魔法を前に、薪を抱えたタリンとキングラッドが口をあんぐりと開けて叫んだ。目の前にごちそうが並んでいるかのような、飢えた顔をしていた。無理もない。ここ数日、まともな食事を摂っていなかった。俺だって、香ばしい焼き魚が恋しくてたまらなかった。


エナリルの特訓が終わり、俺たちは何匹かの魚を仕留めて最高の夕食を楽しんだ。その後、焚き火の傍らに横になり、深い眠りへと落ちていった。


――だが。


「いやぁぁぁっ!」


突然、夜の静寂を切り裂く悲鳴が響き渡り、俺たちは一斉に跳び起きた。


「何事だ!?」


エナリルが息を切らしながら指を差す。「街道の方から声がしたわ!」


俺は右目の魔眼を凝らし、暗闇の先にある街道を見つめた。そこには、一台の馬車がぽつんと取り残されていた。


「様子を見てこよう。全員、警戒を怠るな」


俺たちは足音を殺し、数百メートル離れた馬車へと近づいた。しかし、そこには誰の姿もなかった。周囲を調べていたタリンが、地面の痕跡を見つけて低く唸った。


「人間の足跡だ。こっちに向かって歩いてやがる」


俺たちは互いに目配せをし、無言の合図で足跡を追うことに決めた。


追跡の果てにたどり着いたのは、巨大な岩壁の裏にひっそりと隠された洞窟の入り口だった。


キングラッドは拳を強く握りしめながら提案する。「タリンが先頭、リョウガが殿(しんがり)を務めてくれ。私とエナリルは中央に入る。お前たちの方が近接戦闘に長けているからな」


その作戦に従い、俺たちは静かに洞窟の奥へと足を踏み込んだ。すると再び、助けを求める悲鳴が奥から木霊した。俺たちは歩を速め、暗い洞窟を数百メートルほど進んだ。


やがて前方に揺らめく、焚き火の明かりが見えてきた。その周囲には数人の男たちがおり、奥にはいくつかのおり(檻)が設置され、囚われた人々が閉じ込められていた。


俺は右目の【分析の魔眼】を起動し、敵の情報を視界に捉える。

システム画面が、彼らのステータスを弾き出した。


『対象:山賊。大半はDランク。しかし、中央の一人のみブロンズ・Cランク』

おそらく、あいつが頭目(ボス)だ。

俺は小声で皆に情報を共有した。「敵のランクが分かった。どうする?」


タリンが怒りに震える拳を握りしめ、強く主張した。「決まってんだろ! 囚われてる奴らを助け出す! ドワーフの誇りにかけて、見過ごせねえ!」


タリンの強い意志に押され、全員が襲撃を決意した。……もっとも、俺個人の本音としては、奴らを倒せば衣服や使えそうな武器を剥ぎ取れるという計算もあったのだが。


「よし、戦闘準備だ。一気に仕掛けるぞ」俺たちは闇に紛れ、武器に手をかけながら、山賊の陣営へと一歩を踏み出した。


第十五話:神速の裁きと、破滅の咆哮


全員が戦闘態勢に入ったその瞬間、タリンが咆哮とともに巨大な斧を振り上げ、山賊たちへと突撃した。


ドガァッ! という衝撃音とともに、一撃で数人の山賊が吹き飛ぶ。さらにタリンは地面に力強く拳を叩きつけた。


「砕けよ大地、その咆哮を轟かせ!」


地響きとともに洞窟の床がひび割れ、周囲に猛烈な土煙と砂埃が舞い上がった。あまりの暴挙に、キングラッドが激しく咳き込みながら怒鳴り散らす。

「ゲホッ、ゲホッ! どこのどいつが洞窟の中で『土と大地の割断魔法』なんて使いやがるんだ、この大馬鹿野郎!」


その混乱に乗じ、山賊の頭目(ブロンズ・Cランク)が数人の囚人を引きずり出し、その首元に大剣を突きつけた。


「動くな! 一歩でも動けば、こいつらの命はねえ!」


人質となった人々が恐怖で涙を流す。その卑劣な罠に、タリンもエナリルもキングラッドも動きを止め、どうすべきか立ち尽くした。

しかし、俺――ハナシ・リョウガは、冷酷かつ冷徹な表情で頭目を見つめていた。


「お前がその人質をどう扱おうが、俺の知ったことじゃない。だがな……俺はお前の両腕を切り落とし、次に両足を削ぎ落とし、最後にその首を撥ねる。降伏するか、ここで肉片になるか。選べ」


頭目は歪んだ笑みを浮かべ、俺をあざ笑った。「ガキが、ハッタリを抜かすな! ならば、まずはこの女の手首を切り落として、俺がどれほど危険な男か教えてやる!」


冷酷な笑い声を上げながら、頭目が人質の少女に向けて大剣を振り下ろした。


「やめろ――!」「危ない!」


エナリルたちの悲鳴が洞窟に響く。


だが、その瞬間。俺の【影の魔法】と【最速スキル】が同時に駆動した。

世界が完全に静止する。頭目の振り下ろした刃が少女の髪に触れるよりも早く、俺は闇を駆け抜けた。


一閃。そして、もう一閃。


「……が、あ……?」


頭目は自分が何を起こされたのか、まだ理解していなかった。振り下ろしたはずの剣は手ごと宙を舞い、彼の両足は膝から下が消えていた。


las 素晴らしい血飛沫が噴き出し、頭目は床へと転がり落ちて、遅れてやってきた激痛に絶叫した。


「ぎゃああああああっ!? なんだ、何が起きたぁぁぁっ!?」


残された山賊たちは、その圧倒的な惨劇を前に恐怖で言葉を失った。彼らは武器を捨て、一斉に逃げ出し始めた。だが、俺がそれを許すはずがない。


神速のステップで背後から肉肉しく切り裂いていく。


「化け物だ……こいつは人間じゃねえ、化け物だァァァッ!」


悲鳴を上げながら逃げ惑う山賊たちは、一人残らず俺の刃の錆びとなった。ただ一人、遠くからその光景を見て、腰を抜かしながら逃げ延びた一人の山賊を除いて。


俺は血に塗れた姿のまま、檻の中の囚人たちへと歩み寄った。人々は俺の姿に怯え、ガタガタと震えながら命乞いをした。


俺は小さく微笑み、声をかけた。「安心しろ。お前たちはもう自由だ」


囚人たちの中から、一人の男が恐る恐る俺の前に進み出て、深く頭を下げた。


「命を救っていただき、本当にありがとうございます。私はヴァリック・ラドス。アラマンドン王国の商人です。この御恩は必ずお返しします。ですがその前に、どうか私たちを街まで護衛していただけないでしょうか? あなた方のような優れた戦士たちが同行してくだされば、安心して旅ができます」


俺が背後の仲間に視線を送ると、皆も同意の笑みを浮かべて頷いた。


その時、洞窟の奥を調べていたタリンが声を張り上げた。


「おい、リョウガ! 見ろ、ここにあるのは全部、高価な品物や金貨の山だぞ!」


ヴァリックはすぐに俺の目を見て、まっすぐに告げた。


「それらは元々略奪された物。それを奪い返したのはあなた方です。したがって、それらの所有権はすべてあなた方にあります」


俺たちは山積みの財宝の中から、まずは全員分の仕立ての良い衣服を見つけ出した。エナリルには街へ入るための美しい外套(マント)を。そして武器の山からは、**キングラッドのために槍と斧、エナリルのために弓、そして俺自身のために新しい「剣(つるぎ)」**を選び抜いた。


装備を整えた俺たちは、外に置かれていたヴァリックの馬車へと戻り、街へと向かって出発した。その時、俺の脳内に、あの冷徹なシステムの音が再び響き渡った。


【ステータス更新 】


『山賊の頭目(ブロンズ・Cランク)および配下の討伐を完了。経験値を大量に獲得しました』『ハナシ・リョウガのレベルが向上しました』


プレイヤーレベル (Level): 21 ➔ 25 (UP!)


固有魔法 : 【影魔法 】 ➔ Level 4 (UP!)


物理ステータス :

筋力 : +35

敏捷 : +55

称号 : 【孤独な魔狼 】

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