第八十五話:新王の凱旋と、五大王国の不穏なる陣形
古代の魔導クリスタル鉱山 の完全掃討を終えた後、俺――ハナシ・リョウガは、そのまま**「数日間 」**採掘坑に留まり、単騎で魔力クリスタルの本格的な試掘と حفاری(掘削)を続けていた。
数日後、俺はようやく暗黒の坑道から脱出し、大地の地平線から昇りゆک美しい**『 陽の出 』**の光を浴びながら、深く (深呼吸)を吸い込んだ 。
アサリス(Asaris)の遺したあの不気味な言葉のせいで、俺の思考 は激しくかき乱されたままだったが、俺は濡れた漆黒の髪を払い、冷酷に己の感情を統治した 。
(……フッ、あの呪われた伝言のことは一度忘れろ。この件はまだ誰にも話さねえ方が賢明 だな。まずはあのアサリスという男が何者で、奴の言っていた主 が一体誰なのか、その正体を徹底的に調査 して突き止めるのが先決だ。死ねというメッセージの真意を考えるのは、それからでも遅くはねえ)
俺は十分な量の最高位の魔力クリスタルを(採掘)し終えると、それらをすべてブロムルの『魔法の鞄 』の異空間へと放り込み、遠征の成果を携えて我が都市へと向かって歩み出した 。
数時間の強行軍を経て、ついに大理石の防壁が見え始めた、まさにその時。
ドゴォォォォォン!!! ドゴォォォォォン!!!
突如として、大気を激しく震わせる不穏な**『 太鼓 』の音と、地鳴りのような『 角笛 』**の轟音が荒野全域に響き渡った 。
(チッ、またあの魔物の残党どもが再集結して襲いかかって きやがったか!?)
俺は瞬時に【最速スキル(レベル73)】を起動し、神速の残像となって要塞都市の城門へと滑り込んだ 。
しかし、中央王宮 の広場へと到達した俺の目に飛び込んできたのは、予想とは全く異なる光景だった 。
広場の周囲には、キングラッドが要塞都市から合法的に募ってきた、何百人もの冒険者 や鉱山の労働者 たちが、不安げな表情で地面に腰を下ろしていたのだ 。彼らは俺の姿を認めるなり、一斉に直立し、歓喜の声を張り上げた 。
「おい、見ろ! 英雄 リョウガ様が戻られたぞ!」「あのお方がいれば、俺たちはこの最悪の状況から確実に 救われる はずだ!」
俺が混乱する広場を割って王宮の内部に入ると、キングラッド(Kingrad)が血相を変えて俺の元へと駆け寄ってきた 。
「リョウガ! 無事だったか! 数日間の間、お前から一切の魔導通信 が途絶えていたから、俺たちはみんな最悪の事態を想定して 猛烈に心配 していたんだぞ!」
「問題ねえ、最高 の状態だ、キングラッド」俺は冷酷に微笑んだ。「それよりも、お前の方こそ冒険者ギルドでの人材集め を完璧にやり遂げてくれたようだな。見事だ」
そこへ、重厚な足音と共にタリンとエナリルがリビングへと合流した 。
「タリン、地下の鍛冶場 の稼働状況はどうだ?」
タリンは自慢の髭を撫でながら、不敵に笑った。「ガハハ! 三百年放置されてたから最初は最悪の錆び付き具合だったが、この俺様のドワーフの技術で完全に立ち上げて やったぜ! 足りねえ特殊な工具は、お前の指示通り商人ヴァリック のオヤジに連絡してすべて手配させといた!」
「よくやった、タリン。お前には確実に計算通りの仕事を任せられる と思っていたぞ」俺は頷き、次にエナリルを見た 。「エナリル、あの重傷だったブロムル の具合はどうだ?」
するとその瞬間、奥の部屋の隠し扉が開き、分厚い z を纏ったブロムルが豪快に笑いながら姿を現した 。
「ガハハ! 大将、俺たちドワーフ(ドワーフ)の頑強な生命力を舐めるんじゃねえぜ! エルフのお嬢ちゃんの極大治癒魔術のおかげで、ご覧の通りすでに ぴんぴん してらぁ!」
続いて、都市全域の調査を終えたカゼミとキヤムの二人の姉妹が俺の御前に平伏し、一枚の羊皮紙 を差し出した 。
「主上、お帰りなさいませ。この街の地下宝物庫、および既存の防衛設備から回収したすべての残存財産 を、ここに完璧に 記録 いたしました」
俺は内容に目を落とし、冷酷な笑みを深めて全員の職務を称賛した。「全員、完璧な仕事だ。感謝する」
だが次の瞬間、俺は彼らの表情が、奇跡の大勝利の後だというのに妙に暗く沈んで いることに気づいた 。
「おい……建国の歯車は完璧に回っているはずだ。なぜそんな『 (浮かない顔)』をしていやがる?」
キングラッドが拳を限界まで握り締め、険しい表情で外の荒野を指し示した 。
「リョウガ、お前は入城する際、あの外の地鳴り を聞かなかったのか?」
「ああ、聞いた。一体何が起きていやがる?」俺は魔眼を鋭く光らせた 。
キングラッドは苦渋に満ちた声で吐き捨てた 。
「……魔物どもが引いた途端、あの外の荒野に、この地域を分割統治する周辺の**『5つの独立王国 』**の正規軍の軍勢が、すでに防壁を取り囲むように(布陣)を敷きやがったんだ。奴らは皆、この街の『 領有権 』は自国にあると身勝手な主張 を並べ立て、今にも不可視の侵攻を開始する構えを見せている!」
「何だと……?」
俺の右目の魔眼が、激しい(獰猛な怒り)の波動を孕んでギラリと輝いた 。
「この街は、俺たち『神狼の刃』が命を懸けて魔物の地獄から直接『 解放 』した、俺たちの絶対の領土だ。どこの馬の骨とも知れぬクズどもが、今更どの面下げて俺の主権を侵そうというのだ」
エナリルが俺の前に歩み出て、緊張を和らげるように手を置いた。「落ち着いて、リョウガ。私たちが包囲された直後、アラマンドン王国 から極秘の魔導書簡 が届いたわ。国王オーレリウス四世陛下が、我が名誉騎士を援護するため、彼らの正規軍 を直ちに派遣してくれたの。あと丸一日もすれば、王国の軍勢が俺たちの加勢にここに到着する手はずになっているわ」
「……チッ。アラマンドンが動いたところで、あの外のハイエナどもは何のためにここで騒ぎ立てていやがる?」俺は低く冷酷な声で問いかけた 。
タリンが顔を引き攣らせ、大斧の柄を床に叩きつけた。「大将、理由なんて一つしかねえよ。奴らの真の狙いは……お前が今行ってきた、あの地下の『 魔法クリスタル鉱山 』の莫大な利権さ! 奴らはあの鉱山の富を我が物にするため、この街を奪おうとしていやがるんだ!」
レベル7۳へと至り、真紅と黄金の深淵の魔眼を持つ俺の唇が、自然と他者を圧倒するような、底知れぬ冷酷な笑み の形へと歪んでいった 。
新たな建国の夜明けに群がる、欲深き人間のゴミども。俺は漆黒の剣の柄に手をかけ、全空間を凍りつかせる声で言い放った 。
「なるほどな……。魔物を片付けたら、今度は人間の強欲なクズどもが俺の獲物を奪いに来やがったか。……良いだろう、タリン、キングラッド。野郎ども、武器を構えろ。我が主権を侵す愚か者どもには、魔物だろうが人間だろうが関係ねえ。……どちらがこの世界の真の支配者か、身の程を徹底的に『 教育 』してやろうじゃねえか」




