第八十三話:孤高なる王の朝路と、動き出す建国の歯車
夜明けの凍てつく冷気が王宮に満ちる中、俺――ハナシ・リョウガは誰よりも早く目を覚ました 。足音を消して静かに廊下を進み、クランの全メンバーの様子を見て回る 。特に、あの激戦で胸を深く抉られたブロムル(Bromur)の部屋に立ち入ると、彼はエルフの治癒魔術のおかげで、今は深く穏やかな眠り に就いていた 。
俺はリビングへと向かい、ブロムルが作った『魔法の鞄 』から、事前に要塞都市で完璧に調達しておいた食材 を取り出した 。そして、王宮の古い厨房 に立ち、手際よく温かい朝食 を作り上げた 。己의分を軽く平らげた後、残りの料理を大理石の円卓の上へと綺麗に並べる 。その横に、*「朝食を楽しんでくれ、そして十分に休息しろ」*と短く書き添えたメモ を置いた 。
さらに俺は、まだ眠りの中にいる一人一人のベッドの傍らに、今後の具体的な指示を詳細に刻んだ『個別の命令書 』を静かに置いていった 。すべての手配を終えると、俺は必要最低限の軽量の戦闘装備といくつかの空の魔導袋 を背負い、誰にも告げることなく、単騎でクランハウスを立ち去った 。
目指すは、かつてエナリルが文献で調査し、この失われた都市の最大の財源となる、街から西へ十キロメートル ほど離れた場所に眠る『古代魔導クリスタル鉱山 』だった 。
現在、ルミナリアの高位エルフ魔導士たちの強力な大気純化結界により、都市を中心に**「半径五十キロメートル 」**の領域まで、猛毒の魔霧は完全に中和され、清浄な空気が保たれていた 。
そのため、鉱山へ向かう荒野の道中も視界は極めて良好だった 。数時間の強行軍を経て、俺は西の山脈の麓 に口を開く、巨大なクリスタル鉱山の入り口へと辿り着いた 。俺は静かに漆黒の影の剣 を引き抜き、不気味な暗黒が渦巻く鉱山の内部へと足を踏み入れた 。
――その頃、王宮の主寝室でクランのメンバーたちが次々と目を覚ました 。
一同はリビングの机の上に用意された素晴らしい朝食とメモを見つけ、さらに各自の枕元に置かれたリョウガからの命令書 を読み、驚愕と感嘆の声を上げた 。大将がどこへ向かったのか、その正確な居場所 は誰にも分からなかったが、彼らは己に与えられた建国のための絶対の任務 を果たすため、即座に動き出した 。
タリン(Talin):王宮の地下にある巨大な古代の鍛冶場 を最速で再起動させる 。もし特殊な鋳造設備や工具が不足している場合は、遠征前に提携した要塞都市の有力商人ヴァリック に魔導通信で連絡し、必要な物資を合法的に大量購入 する 。
キングラッド(Kingrad):要塞都市の冒険者ギルドへと密かに戻り、ギルドマスターのイーゴリ に「大理石の墓標」の完全掃討を報告 。同時に、この鉱山から大量の魔力クリスタルを採掘・(採掘)するための大量の労働者 や、採掘防衛の専属マジャラジュの『公式クラン依頼』を発注し、人材を囲い込む 。
エナリル(Anaryril):未だに肉体の深いマナの損傷が癒えきっていないブロムル の傍らに残り、彼の完全な快復 のためにエルフの高位治癒魔術を集中して注ぎ続ける 。
カゼミとキヤム(Kazemi & Kiyamu):二人の驚異的な隠密能力と五感を使い、三百年間占領されていた都市全域の損壊状況 を徹底的に調査 。さらに、かつてのハカムの地下金庫や領主の館 に眠っているはずの、金銀財宝や価値あるマジックアイテム を残さず回収し、中央王宮へと一括で集積・保管する 。
クランの全員が己の職務を全وすべく獅子奮迅の動きを見せる中、俺は冷気と暗黒が支配するクリスタル鉱山の最深部へと独りで突き進んでいた 。
通路の影から不意打ちを仕掛けてくる、鉱山に巣食う魔物の生き残り どもに対し、俺は【影魔法(レベル8)】の漆黒の刃を一閃させ、歩みを止めることすらなく次々と虚空へと『消滅 』させていく 。レベル71へと至った俺の破壊力は、すでに下級の魔物どもにとっては天災そのものであり、立ちはだかる敵を容赦なく切り伏せて前進を続けた 。
そうして、眩い魔力クリスタルの原石が壁一面に群生する、鉱山の核心部へと足を踏み入れた、まさにその瞬間 。
暗黒の坑道の奥深く、人間や通常の魔物のものではない、不気味で重々しい「何かの音 」が、地響きのように静かに響き渡った―― 。




