第七十九話:破滅の第四魔眼と、鮮血の絶対統治
クランの仲間たちが次々と血の海に沈む地獄絵図の中、俺――ハナシ・リョウガはレベル7۱の全マナ(魔力)を滾らせ、【双焔魔導(レベル6)】を強制起動した。肉体の右半身から紅蓮の爆炎、左半身から凍てつく蒼き氷の炎が噴き出し、俺は【最速スキル】で悪魔ヴェルモロス(Velmeroth)へと音もなく肉薄した 。
シュバババババッ!!!
しかし、奴はその巨躯からは想像もつかない軽快さで、俺の神速の影の剣撃をいとも容易く『 回避(逃げる)』してみせた。奴は下劣な笑みを浮かべ、俺を小馬鹿にするように言い放った。
「クックック……心地よいぞ、人間の小僧! レベル7۱の分際でこの私に挑むか! その足掻き、実にもって快感 だなぁ! ハハハハハッ!!」
奴の嘲笑に、俺の胸の奥から狂暴な 激怒 が沸き上がった。俺は突進の足を止め、両腕をヴェルモロスの胸の前に真っ直ぐに突き出した 。そして、【双焔魔導】の二色の火炎に【消滅(レベル3 】の破壊マナを限界まで上乗せし、極大の複合魔術を至近距離から一気に解き放った 。
「――喰らいやがれッ!!」
ドゴォォォォォォン!!!
紅蓮と蒼氷の(巨龍)の如き爆炎がヴェルモロスの巨体を完全に呑み込み、激しい衝撃波がホールを揺るがした。
激しい直撃。――だが、奴の肉体が灰に還ることはなかった。炎の渦の向こう側で、ヴェルモロスの二つの紅い眼球が、不気味な魔導の輝きを放ちながら不敵に明滅したのだ。奴はただ、俺の技を真っ直ぐに見つめ返していた 。
パリン――ッ!!!
次の瞬間、俺が放った極大の複合魔術が、まるで硝子の細工のように一瞬にして虚空へと『霧散 』し、完全に消え去りやがった。
「な……に……っ!?」
俺は目を見張り、あまりの異常事態に 驚愕 した。奴は自らの瞳の奥から不可視の精神波を放射し、俺の放った全マナの構造そのものを一瞬にして『 解体・中和 』しやがったのだ 。高位の魔族の、異次元の魔導中和能力だった。
俺がその驚愕に 思考(思考)を奪われた、まさにその一百分の数秒の隙だった。
ヴェルモロスはその強固な大蛇の『尾 』を鞭のようにしならせ、俺の無防備な脇腹へと強烈な一撃 を叩き込んできた 。
ドゴォォォォォン!!!
凄まじい衝撃波と共に俺の身体は大理石の壁 へと派手に叩きつけられ、壁が蜘蛛の巣状に激しく割れた。衝撃で頭部と内臓を強打し、俺の頭、そして口 から、ドロドロとした鮮血が激しく流れ落ち、視界が真っ赤に染まった 。
「がはっ……、ハァ、ハァ……っ!!」
レベル7۱の頑強な肉体をもってしても、身体の芯から軋むような激痛が走り、指一本動かすマナ すら一時的に枯渇しかけた。
「クックック……、まずはそこのエルフの女 から料理してやろう。清らかな処女 の生き血ほど、我が魔力を滾らせる極上の栄養 はねえからなぁ……!」
ヴェルモロスは下劣な涎を垂らしながら、壁際で怯えるエナリル(Anaryril)に向かってゆっくりと蛇体をくねらせ、歩みを進めていった 。
「い、嫌……! 来ないで……っ!!」
エナリルは強烈な恐怖 のあまり足の誇りが完全にロックされ、床の上へと無様にへたり込んだ 。彼女は涙に濡れた瞳 で、血の海に沈む俺たちを見つめ、最期の力を振り絞って悲痛な声を張り上げた 。
「助けて……!! お願い、誰か……誰か私を救って……!!」
エナリルの悲鳴が、俺の耳腔の奥底へと届いた瞬間――体内の全マナが、これまでとは比較にならぬほどの残虐な『殺意』となって一気に沸点へと達した。
(クソが……、大人しく見過ごしてやるわけがねえだろ。……システム、レベル7۰の境界で解放された『あの力』を起動しろ!!)
俺は心の中で、咆哮と共に世界システムへ命令を下した 。
その瞬間、俺の脳内に、これまでにないほど神聖で不気味な機械音 が、世界の理を書き換えるように大音響で轟き渡った。
『システム音:固有スキルの発動を確認しました。ハナシ・リョウガの第四の魔眼――【壊滅の魔眼 】が、これより完全アクティブになります』
『システム音:【第四の魔眼:壊滅の魔眼】レベル1。固有権能:視界に捉えたすべての生ける生物の体内に流れる【血液 】の構造を分子レベルで強制的に(崩壊)させ、その絶対的な 流動権を完全に支配・統治する権能を有します』
俺の左目のさらに奥、未知の魔導回路が激しく軋みながら強制開放され、血のように真っ赤な、しかし禍々しい深淵の輝きを放つ第四の瞳孔が開きやがった―― 。




