↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
孤狼の転生~最速スキルでゼ 口から始める〜  作者: Ebi
(第二章:エルドリア遠征と独立王国の建国 - Dainishō: Erudoria Ensei to Dokuritsu Ōkoku no Kenkoku)
29/42

第七十六話:大理石王宮の死寂と、貪欲なる牙の急襲

キヤム(Kiyamu)の鋭い警告が響いた瞬間、俺たち『神狼の刃(The Blades of Divine Lupus)』の全員が即座に武器を構え、戦闘態勢へと入った。一体何がこの暗黒の下水道の奥から迫っているのか。俺――ハナシ・リョウガは、完全なる暗黒をも見通す第三の魔眼【混沌の魔眼(レベル3)】を起動し、周囲の闇へと視線を走らせた。


右目の黄金の輝きが闇を裂く。そこに見えたのは、下水道の天井、壁、そして古びた石柱を無数に埋め尽くし、悍ましい速度で這い寄ってくる怪物の群れだった。それは、血のように真っ赤な眼球と、口の両脇から野猪(カニ)のように突き出た巨大な二本の牙を持った、不浄なる**『魔生鼠(マモ・ネズミ)』**の大群だった。


「チッ、不浄な羽虫の次はネズミか……。一瞬で焼き尽くしてやる」


俺は右腕を突き出し、【双焔魔導(レベル6)】と【消滅(レベル3)】の複合魔術を解放した。手のひらから放たれた極大の『凍てつく爆炎の龍 』が、円形 の軌跡を描きながら下水道の細い一本道を猛烈な勢いで吹き抜けていった。

ゴォォォォォォォォッ!!!


一瞬だった。通路を埋め尽くしていた数千匹の魔生鼠どもは、悲鳴を上げる暇すら与えられず、一瞬にして光の粒子となって完全に『消滅 』し、ドロドロとした下水ごと道が『 (清浄)』に削り取られた。


「主上、周囲の邪悪なマナ(マナ)が完全に消滅しました。行きましょう」カゼミが双剣を収めて静かに告げ、俺たちは再び地下の暗国通路を進み始めた。


さらに地下の隠し通路を奥へと進む中、またしても無数の人間の『 屍骸 』が俺たちの行く手を阻んだ。そこには、女、子供 、そして王国の兵士たちの骸が重なり合っていた。三百年前、街の住民たちがどのルート を使って逃げ延びようとも、この地下で容赦なく惨殺 されたことがその惨状から見て取れた。


それからしばらく進むと、俺たちはあらかじめブロムルの地図に刻まれていた、中央王宮の真下へと繋がる隠し通路へと辿り着いた。そこから上方の王宮 へと向かって静かに階段を上っていく。敵に俺たちのハイド(気配)を察知されぬよう、一切の火 は灯さず、ブロムルが今回の遠征のために鋳造した、マナの残光を完全に遮断する特殊な『隠密魔導灯 』の淡い光だけを頼りに、音もなく前進を続けた。


数分後、俺たちは王宮の最深部にある一枚の重厚な隠し扉 へと到達した。俺は隣のカゼミに向かって低く命じた。


「カゼミ、扉の向こうの気配をスキャンしろ。安全を確認でき次第、内部へ突入する」


「御意に、主上」カゼミは鋭い五感を研ぎ澄まし、数秒後に頷いた。「……部屋の中には、生きている生物の気配はありません。来てください」

俺たちは静かに扉を抉じ開け、一斉に内部へと這い上がった。


入った場所は、かつてこの街を統治していたハカム とその妻が使用していたであろう、豪華絢爛ながらも退廃した最高級の『主寝室 』だった。


「よし、ここで一旦小休止をとる。各自、二回目の『 治癒の魔導液体 』を交換しろ」


俺の命令で、全員がマスクの下のフィルターボトルを迅速に新しいものへと換装し、二日間の稼働限界 に備えた。短い(休息)の間、各自の武器や遠征装備を完璧にコントロール した後、俺たちは主寝室の扉を開け、広大なホール へと静かに足を踏み入れた。


そこは、壁一面に古い肖像画 が飾られ、重厚な高級 z が並び、美しい大理石 の柱がそびえ立つ王宮の主名誉の間だった。驚くべきことに、床の上には無数の金貨や金銀財宝 が、まるでゴミのように無造作に散らばっていた。


さらにホールの中心には、大きな贅沢な食事机 が置かれており、そこには三百年前の料理や銀の食器 が、当時のままの形で不気味に残されていたのだ。


(なるほどな……。この王宮の陥落は、住人たちにとって完全に『 予期せぬ奇襲 』だったわけだ。魔物どもが突入してくるその一瞬まで、奴らは呑気にここで飯を食っていたらしいな)


その墓場のような絶対の沈黙 が空間を支配する中、事件が起きた。


退屈そうに周囲を見渡していたドワーフのタリンが、机の上に置かれていた美しい『黄金の杯 』に、何気なく太い手を伸ばしたのだ。しかし次の瞬間、手のひらの強酸の粘液で手が滑り、杯が手元から滑り落ちた。


カーーーーーンッッ!!!!


黄金の杯が大理石の床に激突し、その高い金属音が、静まり返った王宮の全域へと地響きのように轟き、 (響き渡った)。


隣にいたキングラッドが、青筋を立てて激昂し、声を潜めながら怒鳴り散らした。「おい、一体何をしやがるんだ、タリン!! この大馬鹿野郎がっ!!」

タリンは顔を引き攣らせて手を振った。「わ、悪りぃ! 手がリズ(滑って)っちまって、つい落としちまったんだよ!」


俺は漆黒の剣の柄を握り締め、冷酷な目を二人に向けた。「終わったことは気にするな。……だが、この音であの化け物ども に俺たちのハイド が察知されていなければ良いがな」


俺の言葉が完全に終わる、まさにその刹那だった。


「「「キ、キ

シャァァァァァァァァッッ!!!!」」」


王宮のあらゆる通路、廊下、そして上下の階層から、空間をへし折るような凄まじい魔物の地鳴りのような『悲鳴と咆哮 』が一斉に沸き起こり、こちらに向かって急接近し始めた。その足音の質量からして、数頭どころではない、少なくとも『数百頭の魔物の軍勢 』がこのホールを目指して猛進してきているのは確実だった。


新入りのブロムル(Bromur)が血相を変えて叫んだ。「大将、まずいぞ! 奴ら、完全にこの場所に気づきやがった! 即座にこのホールの巨大な扉 を閉めろ! 周りの重い机や(椅子)をすべて扉の裏に積み上げて、バリケード を築くんだ!」


全員が即座に動き、巨大な大理石の扉を閉じ、周囲の家具を力任せに叩きつけて補強した。しかし数秒後、扉の向こう側に到達した無数の魔物どもが、手にした錆びた大斧 や重厚な鉄の棍棒 を狂暴に叩きつけ始めた。


ドガァァァン! バキィィィン!!


凄まじい衝撃波が走り、頑強な扉が徐々にへこみ、激しい打撃によって『小さな穴 』が開き始めた。敵の刃が隙間から覗く。


防衛線が突破される直前、後方に控えていたエナリル(Anaryril)が、その美麗な瞳に覚悟の焔を宿し、魔導の弓を引き絞って――。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。