第七十三話:瘴気獣ミアズモアと、神狼の核壊戦術
半分崩れかけた民家の影に身を潜め، 崩れた壁の隙間から外を覗き込んでいた俺たちの鼻腔に، その生物が近づくにつれて、これまでとは比較にならぬほどの悍ましい と濃密なが流れ込んできた 。
次の瞬間、エナリルの額からどっと冷や汗 が流れ落ち、彼女は恐怖に全身をガタガタと震わせながら、**吃音 でその巨獣の名を口にした 。
「あ、あの化け物は……【ミアズモア(Miasmor the Plagued 】**よ……! 古代の毒気そのものが肉体を得た怪物……! 肉体は硬化し粘液で覆われた腐肉と、超高密度の瘴気ガスが蠢く塊。皮膚は泥緑色、不浄な黄色、そして漆黒が混ざり合い、常に(水疱)が沸き立っているわ。鼻も耳もなく、その大口はまるで多層の呪われた炉……周囲の瘴気を吸い込んでは、さらに凶悪な毒へと増幅して吐き出しているの。目には(瞳孔)がなく、死んだような燐光イエローの眼球が霧の奥から獲物を睨んでいる……。あの巨躯を支える足はまるで (石柱)、歩くたびにその足元から分泌される強酸によって大地がドロドロに(融解)しているわ……!」
エナリルが恐怖に狂いそうになりながらその化け物を定義している のを見て、俺――ハナシ・リョウガは静かにエナリルの肩に手を置いた 。
「落ち着け、エナリル。俺たちがついてる。どんな化け物だろうが、俺たちの敵じゃねえ 」
タリンとブロムルも、不敵な笑みを浮かべてエナリルに声をかけた。「ガハハ! 心配するな、(王女殿下)! 俺たちドワーフ にとって、鉱山(地下)の毒ガスやこんな不浄の化け物なんざ、見慣れた日常茶飯事 だぜ!」
キングラッドも、その二人の言葉がエナリルを安心させる ための優しい嘘であることを即座に察知し、槍を構え直しながら無言で深く首を縦に振った 。
俺は即座に、右目の【分析の魔眼(レベル5)】をその巨獣へと向けた 。
『対象:瘴気獣ミアズモア。ステータス:プラチナ・Bランク。』
『システム音:レベル差の壁(レベル62)により詳細な弱点部位の数値は隠蔽されていますが、対象の体内胸部中央に【硫黄の核心 】を検知。それがこの濃密な毒気と霧の発生源 です』
俺は即座に後ろの仲間に視線を走らせ、冷酷な声で命令を下した 。
「奴をここで確実に 滅ぼす。奴の胸の中央には『硫黄の核心 』がある。それを叩き潰せば勝ちだ。だが、まずは奴の酸の皮膚 の硬度がどれほどのものか、外側から試す必要がある。全員、一斉に飛び出して奴を『包囲 』しろ。いくつかの死角からの奇襲 で、奴の耐久度を測定するぞ!」
「「「了解した、大将!!」」」
次の瞬間、七人の強者たちは同時に廃屋の影から弾け飛ぶように躍り出ると、凄まじい速度でミアズモアの周囲を完璧に 包囲 した 。
「俺様から味見 させて貰うぜぇぇぇっ!!!」
先陣を切ったドワーフのタリンが、大地マナを込めた新しい大斧を全力で振り上げ、雄叫び と共に奴の巨大な(脇腹)へと激しく叩きつけやがった―― 。




