第67話から第69話
第六十七話:廃墟の不夜城と、神狼の警告
エルフの不夜都市『ルミナリア(Luminaria )』の巨大な外壁へと馬車 が近づくにつれ、周囲の荒野には鼻を突く猛烈な異臭 が漂い、地面の至る所に数多の魔物の屍骸 が転がっていた。
カゼミ(Kazemi)が険しい表情で周囲を睨みつけた。
「ここで凄まじい激戦 があったようですね……。ですが、まだ都市の防壁からはかなりの距離があります。なぜこれほど外側にまで屍骸の山が広がっているのでしょうか?」
彼女はさらに一本の道を見つめ、「……新鮮な血の匂い がします。まだ息のある負傷者 が近くにいるはずです」と続けた。
エナリルがマントのフードを少し持ち上げ、前方の な壁を見据えた。「都市の壁が見えてきたわ……」
まさにその時、キヤム(Kiyamu)が音もなく俺――ハナシ・リョウガの傍らに身を寄せ、その獣の耳を微かに動かして声を潜めた。
「主上、私たちは完全に『 監視 』されています。木々の隙間に武器を構えた数名のエルフの狙撃兵たちが、不気味な殺気を隠して कमイン しています。……ですが、他の者たちは彼らの気配に全く気づいていません」
俺は冷酷な笑みを浮かべた。レベル5۸へと至った俺の感覚は、すでに彼らのハイドを正確に捉えている。
「……なら、こちらから先手を打つ とするか。キヤム、奴らの位置を暴けるか?」
「御意。今すぐその姿を白日の下に晒しましょう」
キヤムは【瞬間移動 】の秘術を発動し、一瞬にして鬱蒼と茂る樹上へと大跳躍した。
「――『影断の閃 』!!」
彼女の二本の鋼鉄の短剣から、闇のエレメントを孕んだ漆黒の衝撃波が周囲の木々へと放たれた。空間の魔導隠蔽を力任せに打ち砕かれ、姿を隠していたエルフの斥候兵たちが次々と姿を現した。キヤムがそのまま彼らの首を撥ねようと刃を振るった、まさにその刹那――。
「待て、キヤム! 止まれ!」俺の鋭い一喝が響いた。
「あいつらはエルフの正規兵だ。殺すな」
しかし、隠密を暴かれたエルフの兵士たちは激怒し、容赦ない風の矢を番えて俺たちへと一斉に襲いかかってきた。
「やれやれ……少し痛い目を見せる必要があるな」
俺は即座に【最速スキル】を解放した。世界が完全に停止する。
俺は一瞬にして神速の残像となり、襲いかかってきたエルフの兵士たち全員の『肩 』のツボへと、極めて正確に一本ずつの打撃 を叩き込み、次の瞬間には元の馬車の位置へと音もなく戻っていた。
世界が再び動き出す。エルフの兵士たちは、己の肉体に何が起きたのかすら目視できず、あまりの超常的な速度への驚愕 からその全身を氷のように硬直させた。彼らはリョウガの姿を見ることはできなかったが、その圧倒的な死の気配(威圧感)を本能で理解したのだ。
俺は宙に するかのような冷徹な声で告げた。
「お前たちエルフの五感が優れていることは知っている。ならば今の一撃で理解できたはずだ。……もし俺が本当の『敵』であったなら、お前たちの首はすでに地面を転がっている。俺たちは悪魔の手先でもなければ侵略者でもねえ。お前たちの国王との『交渉 』のためにここへ来たんだ」
その時、エナリルが静かに前に歩み出て、マントのフードを完全に払い落とした。
「皆、武器を収めなさい。……私よ、エナリルです」
眩い金髪と気高きエルフの容姿を目にした兵士たちは、驚愕のあまり互いに顔を見合わせた。
「お、王女殿下 ……!? 生きておられたのですか……!?」
「ええ。この人間のリョウガのおかげで、私はこうして生きてここに立っています。あなたたちが人間に強い不信感を抱いているのは知っています。だけど……私を信じることはできないの?」
兵士たちが躊躇していると、馬車に乗っていたあの救われたエルフの農民たちが次々と声を上げた。
「このお方は悪魔なんかじゃない! 我ら家族をオークの群れから救い、 まで分け与えてくれた恩人だぞ!」
農民たちの必死の証言により、エルフの兵士たちはついに武器を収め、俺たちにルミナリアへの入城 を合法的に許可した。
しかし、馬車が『ルミナリア』の城門をくぐり、都市の内部へと入った瞬間、俺たちの目に飛び込んできた光景は、事前に耳にしていた輝かしい「不夜城」の面影など微塵もない惨状だった。
至る所の な建造物は無残に破壊 され、街には深刻な『 飢饉』と飢餓 が蔓延し、広場には傷ついたエルフの 兵士 たちが地面に這いつくばって呻き声を上げていた。都市を護る精霊の木々 すらも、マナの枯渇により無残に して干からびていたのだ。エルフの もまた、滅亡の淵に立たされていた。
俺たちはそのまま近衛兵たちに先導され、中央にそびえるエルフの王宮 へと向かった。
王宮の入り口で、近衛の長が冷酷に応じた。「これより先は、我が国の規則に基づき、すべての武器 をここに提出 してもらわねばならん」
俺はフッと冷酷に笑い、剣を差し出した。(レベル5۸へと至った今の俺の肉体そのものが、世界を消滅させる最大最強の『凶器』だということに、この哀れなエルフどもは気づいていねえらしいな)
カゼミやキヤム、エナリルも武器を預け、俺たちはついに、玉座の奥で待つエルフの最高統治者であり、エナリルの父親でもある『エルフの国王』の御前へと堂々と足を踏み入れるのだった。
第六十八話:双刃の狂王と、神狼の建国宣告
俺――ハナシ・リョウガ、エナリル、そしてカゼミとキヤムの四人がエルフの王宮 へと足を踏み入れた瞬間、カゼミ が鼻を動かし、鋭く声を潜めた 。
「主上、気を付けて……。この広間の奥から、凄まじい敵意と不気味な殺気 が漂ってきます」
俺は前を見据えたまま、二人に短く命じた。「警戒を怠るな。俺たちは今、敵の本陣 のど真ん中にいる。何が起きようが、エナリルの傍を離れず、確実に奴を護り抜け 」
「「御意にございます、主上」」二人は無言で頷き、エナリルの両脇へと音もなく陣取った 。
玉座の前に到達すると、近衛兵の鋭い視線の中、エナリルと二人の姉妹は深く頭を下げて膝をついた。しかし、この場に同行している俺だけは背筋を真っ直ぐに伸ばし、傲然と立ち尽くしたまま玉座の男を睨みつけた 。
「不敬者がッ! 貴様、王の御前であるぞ! 跪け!」近衛兵の長が激昂して剣の柄を叩いたが、俺は冷徹 を保ったまま微動だにしなかった。
玉座に鎮座する男が片手を挙げ、兵を制した。その男こそが、エルフの最高統治者でありエナリルの父親である、**『ウラニウス六世、短剣の王(Uranius VI, The King of Daggers)』**だった 。
王は冷酷な眼差しをエナリルへと向け、低く重々しい声を響かせた。
「……生きて戻ったか、エナリル。だが、我が民が戦火の中で血を流し、私を必要としていた時、お前は一体どこで泥を舐めていたのだ。我が同胞の都市が次々と陥落する中、お前は我が一族の宿敵である人間どもと馴れ合い、民を裏切った。どのような面下げてこの地に舞い戻ってきたのだ、この愚か者 めが」
エナリルは瞳に大粒の涙 を溜め、声を震わせた。「ち、父親 よ、私は……」
「黙れぃっ!!」ウラニウス六世が凄まじいマナを爆発させて咆哮した。
「私はお前の父親ではない! アラマンドンを統べる『ウラニウス六世』だ! 二度とその汚い口で私を父親と呼べば、その舌を根元から切り落としてくれる! ……そして貴様だな、人間のガキ よ。私はお前をよく覚えているぞ。我が国境都市が次々と陥落したあの忌々しい日、捕虜の身でありながら不気味なマナを放っていた呪われた少年だ。貴様のような羽虫 が、一体どのような資格 を以て、我が国と交渉 を交わそうというのだ!」
王は激怒のまま、周囲の近衛兵に冷酷な手を振り下ろした。
「連れて行け! この裏切り者と不浄な人間どもを地下牢 へ叩き込め! 明日の朝、全員まとめて公開処刑 にしてくれる!」
周囲の兵士たちが一斉に俺たちへと迫る中、俺は冷酷かつ怒りを孕んだ 眼差しを王へと向け、静かに吐き捨てた。
「……お前は、俺の想像以上に『大馬鹿野郎 』な王だったようだな、ウラニウス六世」
「何だと……!?」王の目が怒りで引き攣った。
俺は言葉を繋いだ。「お前は一度でも己の頭で考えたことがあるか? かつて奴隷 として虐げていたこの俺が、なぜわざわざ自らの意志で『交渉』の席に現れたのかをな。こちらの話に耳を傾ける最低限の智恵すら持たぬ。その無能さ ゆえに、お前たちエルフの一族は魔物どもに蹴散らされ、この無残な日を 迎えているんだよ」
「無礼者がぁぁぁっ!! 殺せ!」
侮辱されたエルフの近衛兵たちが激昂し、武器を持たぬ俺たちへと一斉に斬りかかってきた。
しかし次の瞬間、カゼミとキヤムの二人の姉妹が、素手 のまま神速の格闘術で数名のエルフ兵の腕をへし折り、床へと叩きつけた。さらに残りの襲い来る兵士たちに対し、俺は【最速スキル(レベル58)】を解放した。
世界が減速する。俺は一瞬にして残像となり、群がる兵士全員の喉元とみぞおちへ一発ずつの打撃を叩き込み、全員を大広間の床へと「叩き伏せ、気絶 」させた。
世界が再び動き出し、全滅した近衛兵たちを見て、ウラニウス六世は驚愕のあまり息を呑んだ。
俺は浮遊するかのような圧倒的な威圧感を放ちながら、王を見下ろした。
「よく聞け、エルフの王よ。俺は近い将来、この世界の絶対の『頂点 』へと登り詰める。お前が俺の友 となるか、あるいは敵 となるか、今ここで選べ。もし敵となるならば、お前だけでなく、お前の愛する民のすべてをこの世から跡形もなく消滅 させてやる。……だが、もし友となるならば、俺の持てるすべての圧倒的な武力を以て、滅びゆくエルフの国を地獄から救い出してやろう」
室内が凄まじい緊張感で凍りついた、まさにその瞬間だった。
ウゥゥゥゥゥォォォォォンッッ!!!
エルフの国境を守る巨大な「防衛の角笛 」の音が、王宮の内部にまで地響きを立てて鳴り響いた。
一人の近衛兵が、全身を恐怖と戦慄 に震わせながら大広間へと転がり込んできた。
「ほ、報告します! 魔物の大軍 が再び出現! 現在、凄まじい物量でこの都市の防壁へと急接近しています! 壁が破られれば、我らは一人残らず皆殺し です! 陛下、防衛の指令を!!」
ウラニウス六世は、目の前にいる俺たちへの怒りを一時的に抑え込み、冷酷な目で立ち上がった。
「戦える者をすべて集めよ! たとえ全滅しようとも、我が一族は戦場で誇り高く死ぬのみだ!」
王は俺たちを一度冷たく見下ろすと、低い声で吐き捨てた。「人間の小僧よ……私が生きてこの戦場から戻ったならば、その時に我が答え を教えてやろう」
王は外套を翻し、自ら前線へと赴くため、足早に大広間を立ち去った。
それを見送ったキヤムが、驚いたように呟いた。「……主上、あの男、高慢な大馬鹿 ですが、戦士としての覚悟 だけは本物のようですね」
エナリルは未だに床に膝をつى、涙を流していた。俺は彼女の前に立ち、その肩を静かに叩いた 。
「安心しろ、エナリル。お前の父親のあの頑固な性格は、最初から織り込み済みだ 。だからこそ、この作戦 が必要だったんだよ。……これより、俺たちの力であの魔物の軍勢を徹底的に蹂躙し、お前の父親の目の前で圧倒的な実力を見せつける。奴の信頼と妥協を力ずくで勝ち取ってやる。 culinary 泣くのは終わりだ、武器を構えろ。敵を惨殺しに 行くぞ」
「……ええ、分かったわ、リョウガ!」エナリルは涙を拭い、力強く頷いた 。
俺たち四人は王宮の武器庫から一時的に武器を取り戻すと、要塞の防壁の外へと向かった。
そこには、エルフの全正規軍が陣形を組んで待ち構えていたが、その視線の先――遥か彼方の荒野の地平線から、真昼の太陽の光を遮るほどの漆黒の『魔物の大軍勢 』が、津波の如き圧倒的な質量となって、地響きを立てながらこちらに向かって押し寄せてくるのが見えた―― 。
第六十九話:双焔崩壊の神話と、平伏する狂王
空 و 大地 の両方から押し寄せる魔物の大軍勢を前に، エルフの正規軍は魔導障壁 を失った状態で、要塞の外に防衛陣形を敷くことを余의なくされていた 。俺――ハナシ・リョウガ、エナリル、カゼミ、キヤムの四人は、そのエルフ軍の最後尾 に静かに身を潜めていた 。
最前線では、槍兵たちが巨大な盾を並べて強固な防壁 を築き、その直後に弓兵隊、最後列に魔導士部隊が整列していた 。しかし、俺が右目の魔眼で兵士たちの顔を凝視すると、そこにあるのは絶望と強烈な「(恐怖)」だけだった。誰もが恐怖の汗 を流し、大気には死の予感が漂っている 。
その時、最前線に立つエルフの国王ウラニウス六世(King Uranius VI)が、二本の短剣を掲げて魂の底から咆哮した 。
「誇り高きエルフの戦士たちよ! 我らが祖先が常に魔物どもを凌駕し、この聖なる地を護り抜いてきた歴史を思い出すのだ! 今こそ我らもその血脈の証を立てる時! 我らの名を歴史に永遠に刻み込むのだ! 怯むな、 (不屈の精神で立て)、そして戦え!!」
「「「おおおおおっ!!!」」」
兵士たちが王の鼓舞に応えて絶叫する中、怒号を上げる魔物の群れが目と鼻の先まで迫り来る。まさにその刹那、俺は背後の二人に静かに命じた。
「カゼミ、キヤム。あのエルフの王 を護れ。絶対に死なせるなよ」
「「御意」」
次の瞬間、ウラニウス六世の直背後の「影 」から、空間を切り裂いて一頭の暗殺型の魔獣が突如として出現した。奴の毒爪が王の喉元 を完全に引き裂こうとした、まさにその一瞬――。
シュッ!!!
誰の目にも留まらぬ神速で、キヤムが【瞬間移動 】を発動して王の背後へと肉薄した 。彼女の逆手に握られた二本の鋼鉄の短剣が虚空で交差し、コンマ数秒で魔獣の首を完全に切断しやがった。
「なっ……!?」
突然の至近距離での死の気配に、ウラニウス六世は強烈な「(驚愕)」に目を見開いた 。王の豪奢な法衣に魔獣の黒い血 が派手に飛び散る。王の直属の近衛兵 すら、今の不意打ちに全く反応できていなかった。ただキヤムだけが、平然と王の傍らに立ち尽くしていた 。
俺は眼下の凄惨な戦場を見下ろし、冷酷に呟いた。
「……チッ。こんな雑魚ども相手に、これ以上無駄な『 時間(時間)』を浪費するわけにはいかねえな。一瞬で終わらせる」
俺は一歩前へと踏み出し、冷徹な声で告げた。
「――浮遊せよ」
次の瞬間、俺の身体は重力を完全に無視して真昼の空へとゆっくりと昇り、天空へと**「 (浮遊)」**した [INDEX]。エルフの全軍、そしてウラニウス六世までもが、突如として天に浮かんだ人間の少年の姿を、驚愕のあまり仰ぎ見た 。
俺は天空から眼下の魔導士部隊に向かって、絶対の命令を下した。
「おい、エルフの魔導士ども! 今すぐ全魔力を絞り出し、味方の軍勢を覆う最大出力の『防御結界 』を展開しろ。――これから、特大の爆発 が起きる」
ウラニウス六世は一瞬その威圧感に気圧されたが、直ちに指揮下の魔導士たちに鋭く手信号を送った。「命じられた通りにせよ! 結界を張れ!」
エルフの魔導士たちが一斉に呪文を詠唱し、エルフ軍の頭上に巨大なマナの障壁が展開される。
天空の特等席で、俺の唇は自然と、残虐な『にしゃあ(悪魔の笑み)』の形へと歪んでいった。
「レベル5۸……そして新覚醒した混沌の眼。今日こそ、俺の進化した『複合魔法』の真の威力を実験 させて貰うぜ」
俺は全身の全マナを臨界点まで爆発させ、【双焔魔導(レベル5)】と【混沌の魔眼(レベル2)】を同時強制起動した。
瞬間、俺の全身の皮膚に、漆黒の影と黄金の光 の魔導回路が血管のように鮮烈に浮かび上がった 。右の瞳は紅蓮の爆炎と凍てつく蒼き氷の炎 の二色に激しく燃え上がり、俺の身体の周囲には、巨大な炎の龍と氷の龍 のハレ(オーラ)がトグロを巻いて狂い咲く 。
俺は右腕を真っ直ぐに伸ばし、眼下の広大な大地の魔物の軍勢へ向けて、手のひらを突き出した。
「――『原子崩壊(Atom Crush)』」
ドバァァァァァァンッッ!!!
その瞬間、俺の右拳から放たれた巨龍の如き紅蓮の双焔が、津波となって大地の魔物どもを直撃した。
次の瞬間、【混沌の魔眼】によって構成エレメントの調和を完全に破壊された数万頭の魔物どもの肉体が、一瞬にして分子・原子レベルで激しく『超圧縮』され、直後に大爆発を起こした。真昼の戦場は一瞬にして生きた「 (地獄)」と化し、盲目 にするほどの絶大な閃光が空間を支配した。大地には底知れぬ巨大なクレーターが抉り取られる。
エルフたちがその光に目を細めた、まさにその刹那。俺は伸ばした右手を、力強く握りしめた 。
「――『消滅(Extinction)』」
ヒュン――ッ。
轟々と燃え盛っていたすべての爆炎と地獄の業火が、この世の物理法則を無視して空間ごと一瞬にして「消滅 」し、跡形もなく消え去ったのだ 。
後に残されたのは、ただ広大な大地に刻まれた不気味な巨大なクレーターと、魔物どもが跡形もなく消滅したという絶対の事実だけ。死体 すら残らず、そこにはただ数万個のまばゆい『魔石 』だけが、地面を埋め尽くしていた 。
数万の軍勢が一撃で消滅した。
エルフの全軍、将軍たち、そして先ほどまで傲然と言い放っていた王ウラニウス六世までもが、あまりの恐怖と驚愕に「大口を開けたまま 」、一本の木石のように完全に硬直していた 。
ガサリ……。
ウラニウス六世は手にした二本の短剣を地面へと落とし、その場に力なく「両膝をついて 」平伏した 。王の全身はガタガタと激しく震え、その乾いた唇から、掠れた絶望の声が漏れ出た。
「ば、馬鹿な……。これが……これが、あの時奴隷として虐げていた、あの人間の少年の力 だというのか……!? 神の領域だ……!」
かつてエルフの国を滅ぼしかけた絶望の軍勢は、一人の孤高なる魔狼の気迫によって、一瞬にして虚空へと消し飛ばされたのだった。




