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孤狼の転生~最速スキルでゼ 口から始める〜  作者: Ebi
(第一章:孤狼の覚醒と王の盾要塞 - Daiisshō: Korō no Kakusei to Ō no Tate Yōsai)
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第49話から第51話

第四十九話:神狼の救救と、混沌の魔眼の咆哮



宙を舞い、涙に濡れたエナリルの瞳を見つめた瞬間、俺――ハナシ・リョウガの脳裏に、前の世界(前世)で何度も同じように理不尽な絶望に直面し、誰の助けも得られずに踏みにじられていた己の過去の記憶が鮮烈に蘇った。


リョウガはエナリルの瞳の中に、かつての無力だった自分自身を見たのだ。


「――お前を、あの頃の俺にはさせねえ!!」


俺の胸の奥から狂暴な激昂が沸き上がり、【双焔魔導(レベル4)】を強制展開した。肉体の右半身から紅蓮の爆炎、左半身から凍てつく蒼き氷の炎が噴き出し、二色の業火の渦が天空を裂く。


俺は落下するエナリルを丸呑みにせんとする岩食い蟲(ストーン・イーター)に向かって右腕を突き出し、手のひらを力強く『握りしめる 』と同時に、死の呪言を放った。


「――『消滅(Extinction)』」


ドゴォォォォォン!!!


一百分の数秒の狭間、特大の双焔のマナが岩食い蟲の巨躯の内部で臨界点に達して大爆発を起こし、奴は血飛沫を上げる暇すらなく一瞬にして塵の粒子となって消滅しやがった。


間髪入れず、俺は【最速スキル】を発動して天空を滑るように跳躍し、宙に浮いたエナリルの華奢な身体をその腕でしっかりと抱きとめると、静かに、優しく地上へと降り立った。


リョウガはエナリルを地面に立たせると、冷酷な目を周囲の騎士たちへと向けた。


「キライの一味のクズどもは、王国の法に引き渡す。好きに処分しろ」


領主ガレス様の命令により、王宮騎士団の手でキライと偽証した仲間たちは即座に重い鎖で縛られ、地下牢へと連行されていった。


周囲の混乱が落ち着きを見せる中、キングラッドとタリンの二人が息を切らして俺の元へと駆け寄り、その分厚い手を俺の肩へと置いた。


「無事で本当に良かった、リョウガ。お前という男は、いつも俺たちの想像を遥かに超えていくな」キングラッドが安堵の笑みを浮かべる。


タリンは自慢の髭を震わせ、今にも涙を流しそうな顔で (悔し涙)を堪えながら叫んだ。


「リョウガァァッ! お前が死んじまったかと思って、俺様は本当に肝が冷えたぞ!」


エナリルもまだ瞳に涙を溜めながら、震える声で俺を見つめた。「……ありがとう、リョウガ。私を救ってくれて、本当に……」


「気にするな」俺は短く一蹴した。


その時、広場の反対側から守備兵たちの悲鳴に近い絶گذが響き渡った。


「防衛線を維持しろ! このもう一頭の岩食い蟲を何としてでも討伐するんだ!!」


もう一頭の巨獣が、街の兵士たちを蹂躙せんと牙を剥いて暴れ回っていた。


俺は即座に、覚醒したばかりの第三の魔眼【混沌の魔眼(レベル1)】をその巨獣へと向けた。右目の魔眼が不気味に異軸の輝きを放ち、奴の強固な外骨格を構成する土のエレメントの調和に深刻な精神(ジャミング)を引き起こした。


瞬間、奴の絶対の硬度を誇っていた骨皮の皮膚は、見る見るうちに脆弱でスカスカな構造へと変質していやがった。



「タリン、お前の番だ」俺は冷酷に言い放った。


「ドワーフの戦士の実力を見せてみろ。あの害獣に、宿敵のトドメを刺してやれ」


タリンの目がギラリと狂暴に輝いた。「ガハハ! 待ってましただぜ、大将! 奴の調理は俺様に任せな!!」タリンは全体重を乗せて大跳躍し、大地マナを限界まで込めた大斧を振り下ろした。


「――『大震断』!!」


ズバァァァンッッ!!!


調和を乱され、脆弱な土塊と化していた岩食い蟲の巨躯は、タリンの一撃によって一瞬にして真っ二つに両断され、地響きを立てて絶命した。


タリンは大斧を肩に担ぎ直し、傲然と胸を叩いた。


「見たか! ここではドワーフの戦士が化け物どもを粉砕するんだ! 誰かさんは少しは見習うんだな!」


タリンの言う「ドワーフの戦士」とは、自身の誇りと、リョウガの圧倒的な根性を指していた。


近くにいたキングラッドが即座に青筋を立てて怒鳴り散らす。「おい、その『誰かさん』ってのは俺のことか、この大馬鹿野郎!!」


周囲の兵士や騎士たちは、畏怖の混じった眼差しで再び俺を見つめていた。誰もが理解していた。目の前にいる少年は、数日前の脆弱に見えたリョウガではない。天災を屠り、聖殿の呪縛すら引き千切った、異次元の強者へ至ったのだと。だが兵士たちの間からは、「英雄万歳!」と歓喜の声が上がった。


領主ガレス様は捕らえた罪人たちを連れ、再び激勢を増す防衛の会議へと向かうため、歩を進めた。彼は去り際に、俺たちのチームへと威厳ある目を向けた。


「我が最愛の市民よ。『神狼の刃(The Blades of Divine Lupus)』の勇者たちよ。これより始まる魔物の第二波の総攻撃から、どうかこの『王の盾』の街を守り抜いてくれ。頼んだぞ」


ガレス様はそう告げると、足早に城へと向かった。


俺は仲間に向き直った。「俺は一度クランハウスに戻る。身体の調整(マナの馴染み)が必要だ」キングラッドが尋ねた。「リョウガ、俺たちはこれからどう動くべきだ?」


俺は冷徹な目を三人に向け、短く命令を下した。「街の全域の被害状況、そして敵の正確な動向の『アマー(統計)』を取れ。何が起きているか正確に把握し、後で俺に報告しろ」


「「「了解した!」」」


三人はそれぞれの持ち場、情報収集のために街の各エリアへと散り、俺は一人、静まり返る新しいクランハウスへと向かって歩き出すのだった。


【ステータ 更新 】


『ゴールド・Bランク「岩食い蟲 」の撃破、および第三の魔眼【混沌の魔眼】の覚醒初発動を検知しました』


『ハナシ・リョウガの能力値がさらに洗練されました』


プレイヤーレベル (Level): 50 (限界突破待機状態)


固有魔法 (Magic):


【影魔法】 ➔ Level 7

【双焔魔導】 ➔ Level 4


保有魔眼 (Magic Eyes):


【第一の魔眼:分析の魔眼】 ➔ Level 5

【第二の魔眼:合成の魔眼】 ➔ Level 4

【第三の魔眼:混沌の魔眼】 ➔ Level 1 (NEW! - 敵勢力の妨害者)


物理ステータス (Physical Status):


筋力 : +160

敏捷 : +250


称号 : 【雷鳴を屠る孤狼】



第五十話:孤狼の冷徹なる決意と、嵐の前の静寂


新居のクランハウスに戻り、広々とした湯船の湯に身体を沈めながら、俺――ハナシ・リョウガはここ数日の激動の事件について静かに思考を巡らせていた。


(……どうやら、この要塞都市に長居はできそうにねえな。軍の上層部には敵がおり、冒険者ギルドにも、さらには聖殿騎士団にまで目をつけられている。このままこの街に留まれば、いずれ暗殺 されるか、再び巧妙な(罠)を仕掛けられて確実に排除されるのがオチだ。だが、本当に理解できねえのは、俺が一度も直接会ったことすらねえ奴らが、なぜそこまで俺の死を望んでいるのかってことだ。……やはり、力なき者はどの世界に行こうが踏みにじられ、利用されるだけ。圧倒的な『力』がなければ生き残れねえ。俺はいずれ、このアラマンドン王国を捨てる)



湯から上がり、俺はこれまでに手に入れた高ランクの魔石たちのことを考えた。シンから貰ったSランクの『雷鳴の魔石』、そして王から与えられたゴールド・Bランクの『岩石トロールの魔核』。これらを【合成の魔眼(レベル4)】によって今すぐ**『(融合)』**させるべきか、それとも単体で使用すべきか。どちらも破格の魔石ゆえに、融合の反動も予想がつかない。



俺が部屋で思案を巡らせていると、邸宅の扉が開き、エナリルが慌ててリビングへと入ってきた。


「リョウガ、大部屋にいるかしら? 戻ったわ」


彼女は俺の姿を見つけると、軍の救護所と中央診療所で集めてきた決定的な情報を口にした。


「リョウガ、大変よ。軍の資材管理と治療部隊の内部を調べてみたら、今の要塞軍は深刻な武具・装備の不足に陥っているわ。おまけに、負傷者を癒す高位の聖修道僧(ヒーラー)の数も絶望的に足りていない……」


エナリルの報告に、俺は細い目をさらに細めた。


(補給も(兵站)もボロボロか……。これでは長期戦(泥沼の戦い)など到底不可能。この次の大侵攻が始まれば、この街の敗北は確実だな)



すると、エナリルがそっと俺に向かって右手を差し出した。彼女の手のひらには、先ほど広場でタリンが両断したあの二頭目の『岩食い蟲(ストーン・イーター)』から抉り出された魔石が輝いていた。


「これ……あなたに受け取ってほしくて。広場の戦いの後、私が軍の回収班から手に入れたの。……それと、さっきは私を救ってくれて、本当にありがとう、リョウガ」


「感謝する」俺はゴールド・Bランクの魔石を受け取り、短く礼を言った。これで手元の高位魔石は三つとなった。


その時、キングラッドとタリンの二人が、重い足取りでクランハウスへと戻ってきた。二人の表情は酷く険しかった。


「リョウガ、戦況は最悪だ」キングラッドが声を潜めて告げた。「軍の士気(精神)は完全に底を突いている。壁の外に集結しつつある魔物の総数は、前回の第一波を遥かに凌駕しているんだ」



タリンも愛斧を床に置き、珍しく怯えたような声で言葉を繋いだ。


「ああ、おかしなことに、奴らはまだ壁に向かって突撃してこねえんだ。大壁の外にただ不気味に整列し、不気味な目でじっとこちらを見つめてやがる……。あの底知れぬ静寂が、兵士たちの恐怖を何倍にも膨らませていやがるんだ。……リョウガ、俺たちはこれからどう動く?」


三人の視線が、一斉に俺へと集まった。


俺は冷淡な表情のまま、一言だけ告げた。


「――何もしない。俺たちはこの家に留まり、大人しく待機( 休む)する」


「え……っ!?」


その想定外の命令に、三人は驚愕のあまり目を丸くした。


「リョウガ、なぜ街の防衛に協力しないんだ?」キングラッドが尋ねる。


俺はフッと冷酷に鼻で笑った。


「勘違いするな。俺はアラマンドン王国の正規兵でもなければ、従順な騎士でもねえ。一人の自由なマジャラジュ(冒険者)だ。王が言った通り、ギルドを通して公式の『依頼(クエスト)』が提出されるまでは、俺が動く義理はねえ。だから全員、今は部屋に戻って身体を休めておけ」


俺はそう告げると、自身のマナの調整と魔石の合成を行うため、二階の自室へと向かって階段を上っていった。


リビングに残されたキングラッドは、階段を見上げながら複雑な面持ちで呟いた。「リョウガの奴……一体、その頭の中で何を企んでいるんだ」


タリンは大斧を担ぎ直し、不敵に笑ってみせた。「ガハハ! 俺様には大将の考えなんてさっぱり分からねえがよ! だが、あいつの決断に間違いはねえ。俺はあいつがどこへ行こうが、どんな悪路を選ぼうが、全力で支持してついて行くだけだぜ!」


三人がそれぞれの決意を胸に抱いた、まさにその瞬間――。


ドン、ドン、ドン!!!


昨日とは異なる、しかし確かに重々しい足音が正面玄関の扉の向こうから響き、激しくノックの音が轟いた。緊迫する要塞都市の混沌が、再び彼らの拠点の扉へと押し寄せていた――。



第五十一話:原子崩壊の権能と、神狼への敬礼


自室の静寂の中、俺――ハナシ・リョウガは右目の【合成の魔眼(レベル4)】を発動させ、手元にある二つのゴールド・Bランクの魔石(岩石トロールの魔核と岩食い蟲の魔石)の (融合)を開始した。


魔眼が怪しく輝くと、二つの魔石は互いに溶け合い、やがて鈍く輝く強固な灰褐色の『合成魔石』へと姿を変えた。


『システム音:魔石の合成に成功しました。ゴールド・Bランク複合魔石が生成されました』


俺はその強力な合成魔石を見つめ、続けてシンから貰ったブロンズ のSランク『雷鳴の魔石』も同時に融合させようと魔眼を向けた。だが――。


『システム音:警告。魔石のランク差(レベル差)が大きすぎるため、これ以上の同時合成は不可能です』


(やはり、ランクの壁は超えられねえか……。レベル5۰に達したとはいえ、Sランクの力を取り込むにはまだ段階が必要らしいな)


俺は思考を切り替え、まずはこのBランクの合成魔石を先に吸収し、肉体をさらに進化させてからSランクに挑むべきだと判断した。俺は合成魔石を右の魔眼へと近づけた。魔石は純粋なエネルギーの光となって、俺の瞳の中へと吸い込まれていく。


『システム音:合成魔石の吸収を検知。新覚醒・固有魔法【原子崩壊(Atom Crush )】レベル1が解放されました。対象の物質およびマナを分子・原子レベルで超圧縮し、内部から完全に崩壊・霧散させる権能を有します』


その瞬間、体内の全細胞が激しく軋み、強烈な痛みが全身を襲った。しかし、レベル5۰へと至り、【混沌の魔眼】をも目覚めさせた今の俺の肉体にとって、この程度の激痛は十分に耐えうるものだった。意識を失う ことなく、俺は静かにその絶大な破壊の権能を体内に馴染ませていった。



その時、一階の玄関の扉が激しく叩かれた。リビングにいたエナリルが扉を開けると、そこに立っていたのは冒険者ギルドの使者だった。


「ギルドマスター・イーゴリ様からの緊急の招集だ! ハナシ・リョウガとそのパーティーの全員、ただちにギルドへ出頭せよ!」使者はそう告げると、急ぎ足で去っていった。


二階へ上がってきたキングラッドからその報告を受けた俺は、静かに立ち上がった。「いいだろう。全員、支度をしろ。ギルドへ向かうぞ」


俺たち『神狼の刃(The Blades of Divine Lupus)』の四人は、活気に満ちた冒険者ギルドの本部へと足を踏み入れた。


広大なホールに入った瞬間、それまで大声で騒ぎ立てていた何百人ものマジャラジュ(冒険者)たちが、一斉に静まり返った。不気味なほどの静寂の中、周囲から無数の囁き声が波のように押し寄せる。


「おい……あいつらだ。昨日、聖殿の異端審問から無罪で生還したクランだぞ……」


「聞いたか? あのリーダーの少年、最初の防衛戦でBランクの巨獣をたった一人で瞬殺したらしいぜ」


「まじかよ……俺もあのパーティー(チーム)に入りたかったな……」


俺はいつもの冷徹な表情のまま、受付のカウンターへと歩みを進めたが、内心では冷ややかに毒づいていた。


(相変わらず胸糞の悪い(空気)だ。今度はどこの馬の骨が、俺に突っかかってきやがる……?)


――だが、次の瞬間。


ホールにいたすべての冒険者たちが一斉に直立し、持ち武器を掲げ、あるいは右手を胸に当てて、俺たちに向かって深く頭を下げたのだ。


「「「君たちは我ら冒険者ギルドの誇りだ! 街を救ってくれて感謝する、英雄たちよ!!」」」


割れんばかりの称賛の怒号。


俺たちがいつの間にか、この街で最も支持される最高峰のクランになっていたことに、キングラッドもエナリルも驚きを隠せなかった。


そんな中、ドワーフのタリンだけは満面の笑みを浮かべ、我が物顔で群衆に向かって偉そうに手を振り続けていた。


隣のキングラッドが青筋を立てて声を潜める。「おい、筋肉だるま。なぜお前がそんなに得意げに手を振り返しているんだ? 敵を殲滅したのはリョウガ一人だろ。お前が傲慢になる理由がどこにある!」


タリンはガハハと豪快に笑い飛ばした。「関係ねえだろ、キングラッド! 俺たちは全員で一つのクラン(チーム)なんだぜ! お前も恥ずかしがらずに手を振りなよ!」


その騒がしいやり取りを見ながら、俺たちは受付のリズの元へと辿り着いた。リズは深い敬意の笑みを浮かべ、俺たちを奥にあるギルドマスターの執務室へと案内するのだった。






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