↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
孤狼の転生~最速スキルでゼ 口から始める〜  作者: Ebi
(第一章:孤狼の覚醒と王の盾要塞 - Daiisshō: Korō no Kakusei to Ō no Tate Yōsai)
13/42

第40話から第42話

第四十話:反撃の魔鏡と、雷鳴の終焉


激しい怒りと焦燥が全身の血を駆け巡る中、俺――ハナシ・リョウガは地面に荒々しく伏しながら、必死に思考を巡らせていた。


「クソッ……何か方法があるはずだ。この理不尽な化け物をブチのめす道が、絶対に……!」


俺は激しい怒りのままに右の拳を地面へと何度も叩きつけた。ガツッ、ガツッ! と鈍い音が響き、拳の皮膚が裂けて血が土の上に滴り落ちる。


「チッ、またこの くそ な身体が動かねえ……。だが、たとえこの肉体の骨がすべて粉々に砕け散ろうとも、俺はまた戦う。あの忌々しい無力な過去にだけは、二度と戻りたくねえ。あの屈辱に支配されるくらいなら、ここで戦って死んだ方がマシだ!!」


己の魂に誓ったその瞬間、漆黒の夜空が激しく明滅し、鼓膜を破らんばかりの凄まじい落雷の音が天を裂いた。


空の支配者『ネブルス・ザ・シャドウ(Nebulus the Shadow)』が、その最大最強の雷撃魔法を収束させ、俺にトドメを刺さんと狙いを定めていたのだ。

俺は牙を剥き、上空の暗雲を睨みつけた。


「ハッ……なぜお前が『雷を醒ます者(The Thunder-Waker)』なんて呼ばれているか、今ようやく理解できたぜ。だがな……俺は絶対に、お前なんかに屈しねえよ!!」


俺は魂を削り、残された全魔力を爆発させて【双焔魔導(レベル3)】を再び強制起動した。


紅蓮と蒼氷の二色の焔を身に纏い、俺は空中のミノタウロス(ネブルス)の放つ特大の 稲妻 に向かって、咆哮を上げながら真っ直ぐに突撃した。ネブルスが放った最大出力の雷撃が、目も眩むような光の激流となって俺の目の前に迫る。あまりの強烈な閃光に、俺の両目は無意識に固く閉じられた。


――終わりか。そう思った、その時だった。


「リョウガアアアアアアッ!!!」


聞き慣れた熱い叫びが戦場に木霊した。キングラッドたちの声だ。

次の瞬間、俺の目の前で凄まじい魔力の衝突音が轟いた。目を開けると、ネブルスの放った特大の雷撃が、突如として目の前に現れた巨大な『魔導の防壁(反転結界)』に衝突し、そのまま奴自身へと向かって猛烈な速度で跳ね返っていったのだ(魔術反射)!


ドガガガガァァァンッッ!!!


己の最大威力の雷撃を直撃されたネブルスは悲鳴を上げ、その強固な漆黒の霧の肉体が一瞬にして霧散し、中央の雲が大きく裂けた。その奥から、眩しく輝く奴の核心――『雷鳴の魔石(サンダーストーン)』が完全に剥き出しになって姿を現した。


「この好機、逃すかよぉっ!!」


俺は【最速スキル】を解放し、神速の弾丸となって剥き出しの魔石へと肉薄した。動かない左腕を無視し、右腕でその巨大な雷鳴の魔石を力任せに抱きかかえる。


そしてその至近距離で、【影魔法(レベル6)】を同時に爆発させた。二つの魔法の臨界突破による、凄まじい衝撃波が天空で炸裂する。


「ガ、ア、ァァァァァッッ!!!」


ネブルスの悍ましく地を這うような断末魔の悲鳴が天を震わせた。奴の身体を構成していた漆黒 of 雲は一瞬にして霧散し、生き残った不気味な煙の群れは、這うようにして【死者の地】の奥へと敗走していった。嵐は去ったのだ。


満身創痍の身体で地上を見下ろしていたシン・カツ(Shin Katsu)は、血に塗れた姿で空を見上げ、呆然と呟いた。


「嘘だろ……俺たちは、あの天災に勝ったのか……? 奇跡か……?」


次の瞬間、彼は「リョウガ!」の名前を叫びながら、防壁の向こうから走ってくるグループの姿を捉えた。引いて彼らの中に、マナを使い果たして杖を突き、今にも倒れそうな一人の高位の魔導士の姿を見つけた。


(なるほど、あの男か……。リョウガに直撃する寸前で、あの超高等な『反射魔術』を展開してみせたのは。マナを完全に使い果たすほどの、相当な使い手だな)


その時、二つの魔法を同時解放した反動により、俺の意識は限界を迎え、肉体は空中から真っ逆さまに落下し始めた。


「おいおい、最期まで手がかかる少年だ」


シンは残された僅かなマナで【瞬間移動(テレポート)】を発動し、宙を舞う俺の身体を優しく抱きとめると、静かに地面へと降り立った。彼はフッと不敵に笑った。「へっ……大した男だ。お前が、俺たちの命を救ったんだぞ」


そこに、キングラッド、タリン、エナリルの三人が息を切らして駆け寄ってきた。


キングラッドが俺の顔を覗き込み、安堵の声を漏らす。「無事か、リョウガ! またしても、お前はとんでもない偉業を成し遂げたな。見事だ!」


彼はすぐにエナリルを振り返った。「エナリル、早くリョウガに治癒魔法を!」


タリンは大斧を地面に置き、涙目で俺の肩を叩いた。「リョウガ! 次からは俺様を置いて一人で戦いに行くんじゃねえぞ!」


すると、隣のキングラッドがすかさず呆れたようにツッコミを入れた。


「お前が一緒に行ったら、足手まといになって余計に死亡率が上がるだけだろ、この大馬鹿野郎」


タリンは顔を真っ刻にして怒鳴った。「んだとぉ!? 俺は今、最高に感動的なセリフを言ってた最中だぞ! なんで台無しにしやがるんだ!」


その騒がしい様子に、エナリルも周囲の者たちも、思わず緊張が解けて笑ってしまった。


シンは静かに歩を勧め、疲弊したアリスター男爵の前へと進み出た。


「あんたの援護がなければ、今頃俺たちは肉片になっていた。感謝する」


アリスターは杖に体重を預け、荒い息を吐きながら微笑んだ。


「いや、私はただの小さな手助けをしたに過ぎんよ。あの少年が、自らの力で未来を切り開いたのだ。……全員が五体満足で生き残れたことを、神に感謝しよう」


俺たちは息を整え、シンの案内のもと、負傷した身体を癒やすために、岩壁の奥深くに隠された秘密の隠れ家(洞窟)へと向かって歩き出すのだった。


【 /龍牙システムステータスアップデート 】


『天災級魔獣「ネブルス・ザ・シャドウ」の討伐、および「雷鳴の魔石」の完全破壊・吸収を検知しました』


『ハナシ・リョウガのレベルが驚異的な領域へと向上しました』

プレイヤーレベル (Level): 42 ➔ 50 (UP! - レベル昇格境界レベル)

固有魔法 (Magic):

【影魔法】 ➔ Level 7 (UP!)

【双焔魔導】 ➔ Level 4 (UP!)


保有魔眼 (Magic Eyes):

【第一の魔眼:分析の魔眼】 ➔ Level 5

【第二の魔眼:合成の魔眼】 ➔ Level 4 (UP!)



物理ステータス (Physical Status):

筋力 (体力): +150

敏捷 (スピードと敏捷性): +240



称号 (有効なタイトル): 【雷鳴を屠る孤狼 /一匹狼、雷を鎮める者。】


第四十一話:神狼の刃と、王への拝謁


岩壁の隠れ家で一時の休息を取り、傷の応急処置を終えた後、シン・カツ(Shin Katsu)は立ち上がり、静かに俺――ハナシ・リョウガに向き直った。


「俺は任務に戻る。リョウガ、お前は実に勇敢で、戦いにおいて一切の恐怖を知らん。だがな、真の強者とはマナと身体の駆動効率を完璧に統制し、己への反動を最小限に抑える者のことだ。戦いに勝つことだけがすべてではない。……だが、お前のその無謀なまでの大金星に敬意を表して、これをやろう」


シンは俺の手を強引に掴むと、その手のひらの中に、ネブルス・ザ・シャドウの死体から抉り出した眩い魔石を握らせた。


その魔石は未だに不気味な青白い電撃の残光をパチパチと放ち、脈打っている。俺はすかさず右目の【分析の魔眼(レベル5)】でスキャンした。


『対象:ネブルスの雷鳴魔石。属性:極雷。ステータス:ブロンズ・Sランク』


【Sランク】の文字を目にした瞬間、俺の瞳がギラリと輝いた。胸の内で自然と冷酷な笑みが湧き上がる。


(この極上の魔石を吸収するか、あるいは合成すれば、俺はさらに未知の圧倒的な力を手に入れられるはずだ……)


俺は「感謝する」と短くシンに礼を述べた。


シンはカタナを腰に帯び直し、静かに隠れ家の闇へと歩き出した。


「では、お前たちとはここでお別れだ。任務を続ける。運が良ければ、またどこかの戦場で会おう」彼はそう言い残すと、霧の奥へと煙のように消え去った。


続いて、アリスター男爵(Baron Alistair Fade)が杖を突きながら皆を促した。


「我々も急ぎ街へ戻らねばならん。リョウガ君、君は国王オーレリウス四世陛下より、直々に『王命』を以て召喚されているのだよ」


俺はアリスターを見つめた。「では、あんたが壁の外まで俺を助けにきたのは、王の命令だったのか?」


キングラッドが一歩前に出ると、申し訳なさそうに頭を下げた。「すまない、リョウガ。南門の大外壁の通行許可を得るまでに時間がかかり、君の元へ駆けつけるのが遅れてしまった」


タリンも愛斧を担ぎ直し、「全くだ! 堅物な軍の規則のせいでよ、本当に悪かったな!」と続けた。


「謝る必要はねえ」俺は冷淡に一蹴した。「俺は自分の意志で壁の外へ出たんだ。そこで何が起きようが、死にかけようが、すべては俺自身の責任だ」


俺の言葉に二人は驚いたが، すぐに信頼の笑みを浮かべた。こうして俺たちは、再び軍事要塞『王の盾』へと向かって歩き出した。


街の近郊に近づくと、戦場では数多の兵士たちが、討伐された魔物の死体から魔核(魔石)を手際よく回収し、残った残骸を大量の火炎で焼き払う戦後処理に追われていた。俺たちはその煙の中を静かに通り抜け、重厚な城門へと辿り着いた。


門番の衛兵が「通行証を提示せよ!」と鋭く叫んだが、アリスターが国王直々の王命のスクロールを掲げると、兵士たちは血相を変えて慌てて門を開放し、最敬礼で俺たちを迎え入れた。


入城すると、アリスターが俺たちを振り返った。


「私はこれより陛下へ戦況の最終報告へ向かう。君たちは一度ヴァリックの屋敷へ戻り、身なりを整えて謁見の準備をしておいてくれ。では、また後ほど」


彼はそう言い残し、足早に城へと向かった。


エナリルがマント의フードを少し緩め、ほっとしたように言った。「ひとまずはヴァリックさんの家に戻って、お風呂に入って着替えましょうか」


タリンが大きな声を張り上げる。「ガハハ! リョウガの生還を祝して、まずは最高の酒を一本空けねえとな!」


俺たちは笑いながらヴァリックの邸宅へと戻った。屋敷に着くと、ヴァリックが転がるようにして玄関まで駆けつけてきた。


「リョウガ君! ああ、神に感謝を! 無事で本当に良かった、よく戻ってきてくれました!」


温かい風呂に入り、旅の泥と血を洗い流した後、俺はリビングに集まった仲間に向き直った。


「領主ガレス様から、ヴァリックを救い山賊を壊滅させた褒賞として【金貨500۰枚】を受け取っている。これを使って、冒険者ギルドの近くの街の一等地に、クラン(拠点)用の大きな邸宅を購入しようと思う。ヴァリックにはすでに話を通してあり、費用は金貨2۰۰۰枚だ。異論はないか?」


「異論なんてあるわけねえだろ! クランハウスなんて最高じゃねえか!」「これで俺たちの本格的な冒険者生活が始まるな!」


タリンとキングラッドが狂喜して叫ぶ。エナリルも嬉そうに頷き、身を乗り出した。


「それならリョウガ、私たちのチーム(パーティー)に名前をつけない? ギルドで依頼を報告する時も、名前があった方が絶対に便利よ」


俺は手を顎の下に当て、少し考え込んだ。「確かに、名前は必要だな。何か良い案はあるか?」


タリンが自慢の髭を撫でながら豪快に笑った。「ガハハ! 『ドワーフの猛将戦士団』ってのはどうだ! 格好いいだろ!」


キングラッドが即座に呆れたようにツッコミを入れる。「おいおい……お前以外にここにドワーフがどこにいるんだ、この大馬鹿野郎」


「あぁん!? リョウガの根性はドワーフの戦士そのものだろ! 味方だ!」

キングラッドは溜息をつき、頭を振った。「却下だ。もっと全員を象徴する、ふさわしい名前を選ぶべきだ」


すると、エナリルが目を輝かせながら、静かに提案した。


「……なら、**『神狼の刃(The Blades of Divine Lupus)』**というのはどうかしら? ルプスの言葉は、私たちの古の言語で『狼』を意味するの。一頭の気高き神狼(リョウガ)の意志の元で戦う刃(私たち)……。どう思う?」


キングラッドの目が輝いた。「素晴らしいな。リョウガは戦場で、まるで飢えた魔狼の如く敵を切り刻む。俺たちのクランにこれ以上ふさわしい名は他にない」タリンも「おう、その響き、悪くねえな!」と同意した。


俺は全員の顔を見渡し、薄く冷酷な笑みを浮かべて頷いた。


「お前たちが気に入ったなら、その名にしよう。俺たちのパーティー名は『神狼の刃』だ」


拠点の確保とパーティー名の決定を終え、俺たちは仕立ての良い衣服を身に纏い、国王オーレリウス四世が待つ、要塞都市の中央にそびえる王の城へと向かって堂々と歩みを進めるのだった。



第四十二話:神狼の意思と、動き出す陰謀の影



リョウガ、エナリル、タリン、キングラッドの四人は、要塞都市の中央にそびえる王の城へと到着した。国王直々の王命のスクロールを近衛兵たちに提示すると、重厚な扉が開かれ、一行は壮麗な大広間へと足を踏み入れだ。そこには、領主ガレス様をはじめとする軍の高官や将軍たちが厳格な姿勢で列をなしていた。


広間の最奥に鎮座する王の御前へと進み、四人は一斉に膝をついて深く一礼した。


まずキングラッドが一歩前に出て、毅然とした声で名乗った。「我がクラン『神狼の刃(The Blades of Divine Lupus)』が重装騎士、キングラッドにございます」


続いてタリンが大斧を背負ったまま声を響かせる。「同じく『神狼の刃』が戦士、ドワーフのタリンだ!」


エナリルもマントのフードを静かに払い、凛とした美しさで頭を下げた。「『神狼の刃』の弓兵、エナリルにございます」


そして最後に、俺――ハナシ・リョウガが一歩前に進み出、澄んだ、しかし圧倒的な威圧感を孕んだ声で告げた。「『神狼の刃』のリーダー、リョウガ・ハナシです」


アラマンドン王国の統治者、オーレリウス四世(King Aurelius IV)は、その威厳ある瞳で俺たちを見つめ、低く重厚な声で応じた。


「よくぞ参った、若き戦士たちよ。お前たちが防壁の危機を救い、外壁の向こう側で天災級の魔獣をも打ち破った勇敢なる戦いぶりは、指揮官たちからすべて聞いている。我がアラマンドン王国は、お前たちのその大金星に心からの感謝と敬意を表する」


王が手を挙げると、近衛兵たちが目も眩むような褒賞を運んできた。


クラン『神狼の刃』に対して**【金貨20۰۰枚】**の山。 shadow そして別の銀のトレイの上には、あの岩石トロール(ストーン・トロール)の死体から抉り出された、禍々しく輝く魔石が据えられていた。


右目の【分析の魔眼】が瞬時に文字を弾き出す。

『対象:岩石トロールの魔核。ステータス:ゴールド・Bランク』


(最高だ。これで俺の手元には、シンから貰ったSランクの石と、このBランクのゴールドの石の二つが揃った。この二つを【合成 of 魔眼(レベル4)】で融合させれば、次こそ未知の圧倒的な魔法が手に入るはずだ……)


俺が胸の内で冷酷な笑みを浮かべていると、国王はさらに言葉を続けた。


「戦場で回収された残りの魔物どもの魔石は、すべて冒険者ギルドへ引き渡すよう命じてある。それらの買い取り報酬もすべて、お前に渡されるように手配した」


俺が横にいる領主ガレス様に視線を送ると、彼は満足そうに頷き、静かに微笑んでみせた。


しかし、広間の反対側に立っていた**『ルシアン・ヴェイル公爵(Duke Lucian Vale)』**だけは、一人の脆弱に見える少年にこれほどの至れり尽くせりの恩賞が与えられることが許せないのか、狂暴な憎悪と嫉妬の眼差しを俺に突き刺していた。


恩賞の授与が終わると、国王オーレリウス四世は表情を引き締め、本題を切り出した。


「リョウガ・ハナシよ。私が直々にお前をここに召喚したのは、他でもない。その規格外の武勲を称え、お前に『貴族』の爵位を授けたいのだ。そして我がアラマンドン王国の直属の近衛騎士団へと迎え入れたい。……どうだ、我が提案を受けるか?」


その破格の提案に、後ろにいたキングラッド、エナリル、タリンの三人は驚愕のあまり開いた口が塞がらなかった。平民の若者が一瞬にして王国の最高幹部へと登り詰めるチャンスだ。誰もが即座に平伏して受諾すると思った。


しかし、俺は僅かな沈黙の後、淡々と言い放った。


「お言葉ですが陛下、謹んで辞退させていただきます。俺は一人の自由なマジャラジュ(冒険者)として世界を旅し、多くの国を見て回りたいのです。……ですが、もしこの国が再び未曾有の危機に陥り、俺たちの力を必要とするならば、いつでも手を貸しましょう。ただしその時は、王命としてではなく、冒険者ギルドへ公式の『依頼(クエスト)』として要請を提出してください」


「貴様ぁぁぁっ!!!」


広間にルシアン公爵の怒号が響き渡った。彼は激昂し、腰の剣を引き抜いて俺に向けた。


「どこの馬の骨とも知れんガキが、国王陛下からの至高の提案を拒絶するとは何事だ! 陛下への侮辱、その首を撥ねて贖わせるぞ!」


「控えよ、ルシアン」王が静かに手を挙げると、ルシアン公爵は忌々しげに剣を収めた。オーレリウス四世は怒るどころか、面白そうにフッと笑みを浮かべた。


「ふっ……面白い男だ。私の提案を真正面から断るとはな。そして、アラマンドン王国の王を前に、これほど堂々と己の意志を貫くとは、実に勇敢な少年だ。ガレスの言っていた通り、風変わりで、そして恐ろしく正直な奴だな。……良いだろう、お前の生き方を尊重する。国が窮した際は、ギルドを通して正式に依頼を出そう」


「感謝いたします、陛下」


俺たちは一礼し、謁見の間を退出した。


城を出て、俺たちはヴァリックが事前に購入してくれていたクラン用の新しい邸宅(クランハウス)へと向かった。


歩きながら、タリンが豪快に笑って俺の背中を叩いた。


「ガハハ! おいリョウガ、お前最高にイカしてるぜ! 王様にあんな口を利くなんて、お前は中身は本物のドワーフの戦士だな! 今夜は美味い酒をガブ飲みしねえとな!」


キングラッドは少し冷や汗を拭いながら苦笑いした。「一時はそのまま地下牢に投獄されるんじゃないかとヒヤヒヤしたよ。……だがリョウガ、俺たちはあの『ルシアン公爵』を警戒しておくべきだ。大広間に入った時から、奴の俺たちに向ける目は完全に敵そのものだった」


エナリルもマントのフードを少し緩めながら同意した。「ええ、あの人のマナ(魔力)からは、凄まじい『敵意』を感じたわ。どうやら、この街に新しい人間の敵を作ってしまったみたいね」


そんな会話を交わしているうちに、一行は新居となる邸宅の前に到着した。


扉を開けて中に入ると、その広大さと豪華さにタリンが目を丸くした。


「うぉぉぉっ!? すげえな、まるで本物の宮殿じゃねえか! よし、俺は二階の通りに面した一番いい部屋を貰うぜ! あそこから街の往来を** 中くらい **するんだ!」



キングラッドが即座に荷物を抱えて言った。「ならば俺は、タリンの部屋から一番遠い反対側の部屋を貰うことにする」


タリンが怪訝そうに眉をひそめる。「あぁん!? なんでだよ!」



「お前の夜間の『ひそ(いびき)』のせいだ。まるで天が轟く雷鳴のような爆音だからな。近くの部屋じゃ一晩中一睡もできん」


「なんだとぉ!? 俺のいびきは兄弟たちの中でも一番静かで優雅なはずだぞ! お前が不眠症なだけだろ!」

「どこが優雅なものか、この筋肉だるま!」


二人のいつもの掛け合いを見ながら、俺は「好きな部屋を選べばいい」と言い、エナリルを振り返った。「エナリル、お前も気に入った部屋を選べ」


エナリルは少し頬を染めながら、微笑んだ。「私は、台所(キッチン)に近い一階の部屋にするわ。みんなに美味しい料理を作るのに、そこが一番都合がいいもの」


タリンがそれを聞いて手を叩いた。「ガハハ! そいつは最高だ! 俺は夜中にお腹が減るからな、お嬢ちゃんは本当に頭がいいぜ!」


エナリルの優しさに、全員の間に温かい笑い声が広がった。これからは、ここが俺たちの本当のホーム(拠点)になるのだ。


――しかし、まさにその笑い声が響いた、その瞬間 。


ドン、ドン、ドン!!!


邸宅の頑丈な正面玄関の扉が、何者かによって壊れんばかりに激しく、粗暴に叩きつけられた。突如として静寂を破るその音に、リビングの空気は一瞬にして凍りついた――。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。